日本の要人が靖国神社に参拝すると、中国でトップニュースで流れます。単に政府として抗議するだけでなく国民も一丸となって猛批判です。
なぜあそこまで過敏に反応するのかと思いませんか?それは中国人は日本人とは違った捉え方をしているからなのです。
靖国参拝・中国人の本音を知ってる?
目次
靖国神社を嫌うのはA級戦犯が合祀されてるからなのか
日本人的には中国人が靖国神社(jìngguó shénshè)参拝をあれだけ嫌うのはA級戦犯(甲级战犯:jiǎjí zhànfàn)が祀られているからなのだろうと考えるでしょう。
確かにA級戦犯の方が祀られているからという理由で靖国神社参拝を特別に注目しているのですが、戦争で戦った人をたたえていることだけが靖国神社参拝を嫌う理由ではないようです。
なぜなら戦争で戦った人をたたえる習慣は中国にもあるからです。
中国にも存在する戦争で戦った人をたたえる習慣
靖国神社参拝を抗議する中国ですが、実は国のために戦った人を称えるという行為を戦争が終わって何十年もたった今も日本以上に行っています。
中国には各地に烈士墓(lièshì mù)とか烈士陵园(lièshì língyuán)と呼ばれる、戦争のために戦った人が埋葬されているお墓の隣に建てられた博物館が存在します。
入場無料で入れるその博物館では、太平洋戦争の時に中国国家のために戦った人がご丁寧に一人ひとり写真と紹介文付きで説明されています。
日本軍と戦い、どんな成果を上げたのか、どんな経験をし、国のためにどのように命をささげたのかを中国人たちは学びます。
その博物館の出口では「戦争は本当によくない」「日本人がしたことは本当に悪いことだと思う」など博物館で見た感想を書いて提出するようになっています。
このように中国では、強い愛国心と日本人が戦争で行ったことを語り継ぐ教育文化があるからこそ、それが靖国神社参拝への日本への抗議につながっているわけです。
中国の公式見解
愛国心に満ちた中国では靖国神社参拝がどのように映っているのでしょうか?
中国の公式百科事典百度百科(bǎidù bǎikē)の「靖国神社」の項目から中国人の公式見解を見てみましょう。
予想できると思いますが「靖国神社」の項目の説明文はとてもは長いので要点と思われる言葉を3文だけ紹介します。
jìngguó shénshè céngjīng zuòwéi shénfēngtègōngduì de chūfā yíshì jǔbàndì
靖国神社曾经作为神风特攻队的出发仪式举办地
靖国神社はかつて神風特攻隊の出撃式典で使われたのだ
よって日本の要人が参拝するのは中国からすると…
bùnéng duì rìběn de qīnlüè lìshǐ jìnxíng fǎnxǐng
不能对日本的侵略历史进行反省
日本は侵略の歴史に対して反省していないことを意味するのだ
kě néng huì dǎo zhì rì běn zài cì fā dòng qīnlüè zhàn zhēng
可能会导致日本再次发动侵略战争
きっと日本がまた侵略戦争を引き起こすことにつながりかねない
という結論になっていました。
中国人にとって靖国神社参拝とは
つまり中国人にとって靖国神社参拝はこのように映っています。
cānbài jìngguó shénshè = zhùzhǎng le jūnguó zhǔyì
参拜靖国神社=助长了军国主义
靖国神社参拝=軍国主義の助長
政府要人が靖国神社を参拝すると「日本がまた右翼的な考え方を持ち始めた!これは注意しておかなければ」という感覚で強く抗議しているというわけです。
日本人からすると靖国神社参拝への抗議が起こると「中国はいつまで過去の戦争のことを掘り返そうとするのだ。自分たちの国の英雄を称えたり、自分たちの国の宗教を実践するのは自由じゃないか」という感覚かもしれません。
しかし中国は過去のことを抗議しているというよりかは、「今後の日本の態度に対する抗議をしたい」というわけなのです。
外国人の思考過程は日本人感覚ではわからない
今回は靖国神社参拝というものの日本人と中国人の捉え方の違いを考察しました。
日本人からするとちょっと飛躍しすぎているような中国人の捉え方ではありますが、中国文化で生活しているときわめて正当な捉え方なのです。
外国人がなんでこんな反応するのだろうと感じるときは、相手の国の文化や背景を理解するといいというわけですね。
靖国神社が大っ嫌いな中国人ではありますが、なぜか伊勢神宮には喜んで参拝するのです。この矛盾については次回考察しましょう。
靖国神社は嫌いだが伊勢神宮に観光で参拝する中国人
中国人が靖国神社参拝に対して強く抗議する理由を考えました。
ところが中国人は、あれほど天皇をトップとする神道が中心に行われた太平洋戦争を嫌っているのに、神道の総本山伊勢神宮には喜んで参拝するのです。この矛盾はなぜでしょうか?
中国人が神社に行く矛盾
中国人だけでなく、だれがどの宗教を奉じるのも自由です。しかし中国人が伊勢神宮にお参りするのはいろいろ矛盾があるでしょう。
靖国神社も伊勢神宮も同じ神道の建物です。神道は日本の神様が祀られている日本の宗教とされており、日本の神様が日本という国を守るという考え方で成り立っています。
仮にもし日本を守ろうと考える天照大神のような日本の神様が存在していたとして、自分のところに日本人がお願いごとをしてくるなら、それを聞く道理があるというものでしょう。
しかし日本を守ろうと思っている神様のもとに外国人が、しかも太平洋戦争でアメリカと一緒に日本と戦っていた中国人がやってきたとしたら、願い事を聞いてあげようと思うでしょうか。矛盾です。
太平洋戦争であれだけ天皇を中心とした軍国主義を批判している中国人なのに、天皇家の祖先とされており、神道の宗門、つまり神社の最高神天照大御神を奉っているとされる伊勢神宮にお参りするのは道理にかなうでしょうか?矛盾です。
矛盾だらけの中国人の伊勢神宮参拝ですが、彼らはなぜ靖国神社参拝にはあれだけ反対しているのに、なぜ伊勢神宮には自ら赴き、お賽銭を入れてお願い事するのでしょうか?
中国人が伊勢神宮は問題にしない理由
中国人が伊勢神宮はまったく問題視していない理由を2つほど挙げてみましょう。
zhōngguó zhèngfǔ méi zhìyí cānbài yīshì shénshè
1,中国政府没质疑参拜伊势神社
中国政府が伊勢神宮参拝を問題視していない
rìběn dòngmàn dàilái de hǎo yìnxiàng
2,日本动漫带来的好印象
日本アニメがもたらした良いイメージ
それぞれ考察していきましょう。
中国政府は問題視していない
中国政府としては中国国民と共通の敵を定めることが目的です。よってA級戦犯が祀られている靖国神社という象徴に参拝することを批判すれば目的は達成されています。
靖国神社参拝を国民と一緒になって批判しさえすれば、戦争時の日本の悪事を思い起こさせることにも成功し、国民の矛先を日本に向けることができるので、同じ目的であれこれ行なう必要はないというわけです。
中国の公式百科事典百度百科(bǎidù bǎikē)の「伊勢神宮」の項目にも、批判的な言葉は一言も載せられていません。単なる神社の一つなのです。
神社そのものはよい印象
ご存じの通り中国では日本のアニメは大人気です。「君の名は」(你的名字:nǐ de míngzì)などでは、神社で楽しそうに時間を過ごす様子が描かれ、日本の夏祭りと同時に良いイメージで描かれています。
いろんな日本のアニメを目にし「日本に行ったら私も神社に行ってみたい!」と感じる中国人が多いのもわかるでしょう。
伊勢神宮に対しても日本の宗教というイメージは全くなく、中国にもあるお寺の参拝と同じような感覚というわけです。
社会問題はグローバルな観点で
中国人は、靖国神社と軍国主義を嫌っているのであって、天皇も、神道も、神社もまったく嫌ってはいません。
日本人からすると、靖国神社はあれほど嫌い、伊勢神宮にはお参りする中国人の感覚が理解できません。しかし中国人には中国人の理屈があって、この矛盾が成り立っているというわけです。
難しい社会問題も両サイドからグローバルな観点で考察すると全体像が見えてくるというものですね。