日本は敬語の国です。目上の人に話すときは必ず敬語を話すことが礼儀とみられています。
日本人は中国語の敬語も大切だと感じ「あなた」を意味する「你」(nǐ)の敬語「您」(nín)を使いたがるのですが、当の中国人は違和感を感じるのです。
中国人に敬語の「您」を使った時の感じ方
日本と中国の敬語の違い
日本人と中国人では敬語を使うケースが若干違います。
日本人が敬語を使うのは、目上の人と話すときと、知らない人と話すときです。しかし中国人が敬語を使うのは、自分よりかなり立場が上の人と話すときに限られます。
上司であってもいつも仕事をしている仲間であれば敬語は使いませんし、知らない人と話すときでも「您」(nín)を使うのはかなりご年配の方と話す時だけです。
こうした敬語を使うケースの違いゆえに、中国人に安易に「您」(nín)を多用すると変な顔をされるのです。
中国人にとって敬語は礼儀ではなく本当の心の態度
日本人は主に礼儀として敬語を使います。例えばお客様に対しては、お金をもらう相手だから礼儀を示すべきだという理由で敬語を使うでしょう。つまり社会規範として敬語を使うのです。
しかし中国人は全く知らない店のお客に尊敬の念などわくはずもありません。よって外資系大企業の教育(培训:péixùn)を受けているのでない限り、お客には敬語など使わないのが普通です。
中国人が敬語を使うのは、こんな時です。
xīnlǐyǒngqǐzūnzhòngzhīxīnshí
心里涌起尊重之心时
心に敬意の気持ちが湧きおこったとき
これは日本人には理解しにくいのですが、正直な中国人は本当に心に敬意の念が湧きおこらないと敬語を使わないのです。では敬語を使わないということは敬意を抱いてないのでしょうか?
敬意を抱いていても敬語は使わない理由
中国人は単に礼儀としての「您」を使うことはないのですが、「您」を使っていないからといって相手に敬意を抱いていないというわけではないのです。
例えばいつも仕事している上司や先輩を尊敬しているとします。公私とも仲良くしてもらい、いつも食事をしながらいろいろと相談に乗ってもらいます。こんな時に「您」を使うことはないでしょう。
なぜでしょうか?なぜなら「您」を使うと次のような逆効果があるからです。
gǎndàoshūyuǎn
感到疏远
遠い存在と感じる
中国語において「您」を使うと、相手はそれを言った人と遠い存在であると認識されます。
近しくない遠い存在だと感じているので、この人は自分に「您」を使うのだと感じるというわけです。つまり親しく感じているのであれば你(nǐ)が正解です
「親しき中にも礼儀あり」で日本人が敬意を表そうと思い「您」を使うと、「なんで“您”なんか使うんだ!」と悲しむ中国人さえいることでしょう。
日本人より「您」が大好き韓国人
これは余談ですが、韓国人は日本人以上に「您」を使います。
韓国文化において一歳の違いは大きな違いで、30歳の人が31歳の人と話すとき、決して敬語を欠かすことはありません。
日本では1,2歳の差はあまり気にされないでしょう。よって中国において、いつも「您」を使うことで問題となっているのは、日本人よりも実は韓国人なのです。
韓国人はこの敬語文化の違いで中国の中で大変苦労します。
敬語はまず文化を理解してから
日本人が相手を敬おうと使った敬語でも、中国人が「敬ってくれた」と感じなければ意味がありません。距離を置かれたと思われることさえあるのです。
中国でも相手を敬うことはとても価値があることは変わりないのですが、それは中国文化を理解したうえで行わなければ何の意味もないということですね。