ここ数回中国政府が実施した教育改革について紹介しています。宿題が減り学生の負担が減りましたが、同時に高校・大学に行ける門は狭められました。
今回は双减政策の最後の狙いに注目したいと思います。この教育改革は国民の思想を守るためであるのです。
中国教育改革の裏側:双減政策と国民思想の保護
目次
教育改革に隠された別の狙い
双减政策(shuāngjiǎnzhèngcè)で学生たちの負担を減らし、同時に親たちの教育費の負担を減らそう。そうすれば教育費軽減によってもっと国民は子どもを産むようになり、少子化対策になるだろう。
これが主な教育改革の目的でしょう。
しかし先を見通す中国政府にとってこの度の教育改革は、国民の思想を守るという狙いもあるのです。以前の記事でこの政策の3つの影響について述べました。3つ目にこうあります。
bùshǎorénbùnéngdānglǎoshī
不少人不能当老师
多くの人が先生になれなくなった
どういう影響なのか、その狙いを見ていきましょう。
誰が先生になれなくなったのか?
中国政府の改革により、中国国内で先生という立場でお金をもらえるのは4年大学を卒業した人、教師としての資格を有している人という線引きをしっかり行うこととなりました。
当然今までも小学~大学で教師になるにはそうした資格が必要だったのですが、补习班(bǔxíbān)と言われる私塾においては、特にそのような資格が求められることはありませんでした。
しかしこの度の改革以降、私塾も政府に登録しなくては営業できず、厳格に先生の資格と学歴の提出が求められるようになりました。
つまり今までは現役大学生が中学生を教えたりできたのですが、そのようなことをアルバイトで行うことができなくなったのです。
中国人で教師能力があっても資格がない人が教えられなくなっただけではありません。
外国人による教育の制限
言語関連の塾の場合、いままでは外国語の生の発音を覚えさせるためにネイティブの先生に来てもらうことは当たり前でした。
音楽や美術など芸術関連の塾においても、世界観を身に着けてもらうためには外国人教師は大いに人寄せで必要でした。
しかし今回の教育政策において次のような法令が織り込まれているのです。
yánjīnpìnqǐngzàijìngwài de wàijírényuánkāizhǎnpéixùnhuódòng
严禁聘请在境外的外籍人员开展培训活动
中国国外の外国人を雇って教育活動をさせることを厳しく禁じる
いままで人寄せマスコットとなっていた外国人の招聘がそれら私塾においても禁止されたのです。
もちろん中国国内に以前から留まっていて、教師資格を正式に有している外国人はこれまで通り働くことができるのですが、新たに国外から雇ったり、オンライン授業を実施したりしてもらうなどができなくなりました。
狙いは何でしょうか?
国民思想の保護
これは教育に関する改革ですから、単に少子化対策や子供の自殺減少を狙いとするものだけではありません。中国人の思想教育のためでもあるのです。
中国共産党政府が最も懸念しているのは外国思想の影響です。
そのためにネット警察はいつもインターネット上で繰り広げられているチャット内容を検閲し、各国民の考えや思想もチェックしていますし、国家転覆の大きな要因となりかねない宗教に対する管理も強めています。
この政策では私塾という教育機関で、外国人が教育することにもメスが入れられることになったということでしょう。
生徒は先生の言うことの影響を容易に受けますから、管理の行き届きにくかった私塾での外国思想拡大をシャットアウトしたというわけです。
強固な中国の管理体制
中国政府は先を見越して暴動のタネを無くすために、あらゆる面で早め早めに手を打っています。
上記のような教育管理や香港や台湾の問題を外国から見る私たちは、中国政府の強い干渉を受けてかわいそうと感じるかもしれませんが、意外なことに中国国民はすぐに改革を受け入れ、台湾も早く中国の一部になれば幸せなのに…と思っているのです。
中国で加速する宗教弾圧
最近中国で宗教活動をしていた人が拘束されたというニュースが相次いでいます。近年、中国政府が宗教への弾圧を強めるのにはどんな背景があるのでしょうか?
宗教の自由
中国政府はこれまで他の国際社会の流れに沿って、中国国民の宗教の自由を認めていました。表向きは今でも宗教は自由となっているので、国民は個人として自分は仏教徒、イスラム教、キリスト教と公言することが許されています。
とくに胡錦涛(胡锦涛:hújǐntāo)国家主席時代は、宗教に対して寛容でした。宗教には道徳的な生き方をするよう促す良い効果もあるため、外国の宗教思想なども比較的自由に取り入れようという考え方でした。
しかし習近平(习近平:xíjìnpíng)の時代に代わってから近年急に中国国内の宗教団体が弾圧を受けるようになったのです。どんな原因があるのでしょうか?
近年宗教弾圧が進む3つの原因
習近平体制になり、宗教が厳しく弾圧されるようになった原因は3つほどあると言われています。
zuìjìnzōngjiàoyǒuguān de shìjiànbǐjiàoduō
1,最近宗教有关的事件比较多
近年宗教関係の事件が増えていた
xìnyǎng de duìxiàngxiàndìngzhǐyǒuyíge
2,信仰的对象限定只有一个
信仰の対象を一つに絞った
shòuÉluósī de yǐngxiǎng
3,受俄罗斯的影响
ロシアの影響を受けている
一つ一つ見ていきましょう。
宗教がらみの事件
中国国家が宗教への警戒を強めている理由の一つは近年宗教がらみの事件が増えているからのようです。一例を上げましょう。
例えば2014年に山東省(山东省:shāndōngshěng)のマクドナルド(麦当劳:màidāngláo)でキリスト教系の全能神(quánnéngshén)という宗教グループが自分たちの宗教勧誘に応じないという理由で、客を撲殺しました。
しかもこの全能神という宗教は中国内で100万の信者数に迫っています。国家転覆(颠覆国家:diānfù)をもっとも恐れる中国が弾圧するのも理解できます。
ほかにも日本でもよく見かける法輪功も声高に共産党への抗議をしているので、中国政府はこれらの宗教を邪教(邪教:xiéjiào)に指定し、表立った弾圧を行なっています。
信仰の対象は共産党
しかし、弾圧は中国政府が邪教に指定している宗教だけではなくなりました。なぜなら近年中国政府は方向転換を図り、中国国民が未来への希望として信仰を抱いていいのは共産党のみとしたからです。
もちろん個人としてはキリスト教でもイスラム教でも信じることができるのですが、組織としては宗教が許されない方針となりました。
以前は許されていた国家公認の教会(教堂:jiàotáng)までもが閉鎖されています。とくに共産党員への要求は厳しくなっています。
以前は前首相の温家宝(温家宝:wēnjiābǎo)さえも「自分はキリスト教徒だ」と公言できましたが、いまでは「共産党員は個人としての宗教を持ってはいけない」と明確に党則に記されてしまいました。
共産党員は宗教を選べるの?
では以前から自分はキリスト教で、なおかつ共産党員だった人は「では私は引き続きキリスト教を行ないたいので、共産党を脱党します」と言えるのでしょうか?
言えないようです。宗教を持っていた共産党員は「自分の宗教を捨てる」の一択です。もしも「宗教を選ぶので共産党を退団したい」と表明するとどうなるでしょうか?
今まで得ていた党員としての特権をすべて失うのみならず、その人とその親族は今後、国家暴動の種として監視下に置かれることになり、自分のネット上での発言や行動のすべてを見張られます。
ロシアの影響
専門家の中にはこうした宗教への弾圧を強める背景に、同じマルクス共産主義を国家として採用するロシア(俄罗斯:Éluósī)の影響があるとする人もいるようです。
近年ロシアは一部のキリスト教徒への圧力を強めました。同時にロシア政府は中国政府にも圧力を強めるように要請しているようです。
中国に行く際の注意点
2017年に「宗教事务条例(zōngjiàoshìwùtiáolì)」という新たな法律を発足させました。特に宗教を持つ外国人を取り締まる条例です。
外国人が中国国内で仕事したり、中国語を勉強したりするときはこうした宗教への中国政府の最近の考え方をよく理解する必要があるでしょう。
すべてのネットのやり取りを掴んでいる中国で、不用意にビジネス仲間や友人と宗教の会話をしていると、危険組織の一味として国外追放にもなりかねません。