中国のお餅「年糕」(niángāo)は白色だけでなく赤色や黄色などもあり、とてもカラフルです。
鍋料理やスープ料理、炒め物に使いますが、日本のお餅とは違い、もちもち感と粘りが少ないため、新しい食感だと感じるかもしれません。
中国のお餅-年糕を食べよう
目次
年糕-言葉の由来は?
「糕」(gāo)は米粉や小麦粉にほかの材料を混ぜ、蒸したり火で炙ったり焼いたりして作った食品を指します。
「羔」(gāo)には本来「温かい食品」や「柔らかい食品」の意味があり、偏の「米」(mǐ)と組み合わせた「糕」は「米を原料にした温かく柔らかい食品」を表すようになりました。
年糕は一年を通じて販売されていますが、とりわけ「过年」(guònián 年越し)の「应时食品」(yìngshíshípǐn 時節商品)として欠かせない一品です。
Niángāoyǒuhóng、huáng、báisānsè,xiàngzhēngjīnyín,
年糕有红、黄、白三色,象征金银,
niángāoyòuchēng“niánniángāo”,yǔ“niánniángāo”xiéyīn,
年糕又称“年年糕”,与“年年高”谐音,
yùyì zherénmen de gōngzuòhéshēnghuóyīniánbǐyīniántígāo。
寓意着人们的工作和生活一年比一年提高。
年糕には赤、黄、白の三色があり、金銀を表します。また年糕は「年年糕」とも言い、「年年高」と発音が同じなので、人々の仕事や生活が前の年より更に向上するようにとの願いが込められています。
年糕の作り方
広い中国のことですから、地域ごとに様々な種類の年糕があり、こだわりの製法があります。
市販されている一般的な年糕は、「糯米粉」(nuòmǐfěn もち米粉)に水、「白糖」(báitáng 白砂糖)もしくは「红糖」(hóngtáng 黒砂糖)を加えてしっかりこねたものを成形し、せいろで蒸して作ります。
糯米粉をこねる時や蒸すために成形する時に油を使うのですが、これは日本の餅との大きな違いです。
市販されている年糕は、糯米粉と「大米粉」(dàmǐfěn 米粉)が6:4の割合で混合されたものが多く、日本の餅のように伸びることはありません。
自家製の年糕は完成した後、薄く切って炒め物にしたり、スープに入れたり、油で揚げたりして調理します。
Niángāoyǒunánběifēngwèizhībié,
年糕有南北风味之别,
běifāngniángāoyǒuzhēng、zháliǎngzhǒng,jūnwéitiánwèi;
北方年糕有蒸、炸两种,均为甜味;
nánfāngniángāochúlezhēng、zhá yǐwài,háiyǒupiànchǎohétāngzhǔděngzhūfǎ,
南方年糕除了蒸、炸以外,还有片炒和汤煮等诸法,
wèidaotiánxiánjiēyǒu。
味道甜咸皆有。
年糕は南北で異なる特色があります。北方では蒸す、油で揚げる、の二つの方法があり、いずれも甘い味です。南方は蒸す、油で揚げる以外に、薄く切ったものを炒める、スープに入れて煮るなど、色々な方法があり、味も甘い場合と塩辛い場合のいずれもあります。
年糕料理を食べてみよう
市販されている主流の年糕は、真空パックの「年糕条」(niángāotiáo 棒状の年糕)や「年糕片」(niángāopiàn 厚さ約4mmにスライスした年糕)などです。年糕が手に入ったら中国式で調理してみましょう。
「汤年糕」(tāngniángāo)は日本のお雑煮のようなもので、各家庭によってどんな風にもアレンジできる万能料理です。また「炒年糕」(chǎoniángāo)も甘口、辛口、ピリ辛味とどんな味にも合わせやすいので、ぜひチャレンジしてみてください。
青菜蘑菇汤年糕
qīngcàimógutāngniángāo チンゲン菜とキノコの雑煮
油をひいて熱したフライパンに好みのキノコとスライスしたウインナーを入れて炒め、酒、醤油、オイスターソースで味をつける。
しっかり火が通ったら別鍋に用意した湯を加え、スライスした年糕を入れる。
強火のまま2分ほど煮込み、年糕が柔らかくなったら塩少々で味を調え、チンゲン菜を加える。
最後に卵を溶き入れて出来上がり。
猪肉白菜炒年糕
zhūròubáicàichǎoniángāo 豚肉と白菜と年糕の炒め物
豚肉は細切りにし、酒と醤油で下味をつけておく。市販のスライスされた年糕はばらして水につけておく。
油をひいて熱したフライパンで年糕を炒め、柔らかくなり始めたくらいでいったん皿に取り出しておく。
フライパンに再度油をひき、豚肉を炒め、肉に火が入ったら、白菜、ニラ、キクラゲ、ニンニク、ショウガを入れて炒める。
全体に火が入ったら年糕を再度投入し、野菜から出た汁で柔らかくなるまで炒める。仕上げに胡麻油を振り入れて出来上がり。
中国の農村が伝統的な餅で地域活性?
中国各地の伝統的な餅の中でも希少価値が高く有名なのが江西省の特産品「弋阳年糕」(yìyángniángāo)です。
小さな村でひっそり作られていた希少な餅が今では地域活性化の柱にもなっています。弋阳年糕とはいったいどんなお餅なのでしょうか?
時間と手間がかかる希少な米-弋阳大禾谷
弋阳年糕は江西省上饒市弋陽県で栽培された「弋阳大禾谷」(yìyángdàhégǔ 弋陽大禾谷)という米を原料に作ります。
「弋阳县」(Yìyángxiàn 弋陽県)は山に囲まれた盆地で、標高400-700メートル、年間の平均気温が18度前後の大変涼しい高地に位置しています。
弋阳大禾谷は春(5月中旬から下旬)に種をまき、夏に苗を植え、秋に生育させ、冬にようやく収穫できるようになります。
それは山麓から湧き出る比較的冷たい水を利用した水田で、日照時間が短く湿度が高い環境の下、じっくりと時間をかけて育てるからです。
収穫期になると稲穂の高さは、何と人の背丈より高い180cmほどにもなります。米の粒は通常のうるち米より大きく、背は短く、形は丸く、ぷっくらとしています。
「年糕」(niángāo 餅)にするのに適しているため近隣の県でも栽培を試みましたが、不思議なことにいずれも成功しませんでした。
この土地の、この水でないと生育せず、手間暇かけても通常の米の半分ほどの生産量しかないため、弋阳大禾谷は江西省の四大品種米と称される希少価値の高い品種になったのです。
三回蒸して杵で200回つく
弋阳年糕は原料の米の名にちなみ「弋阳大禾米粿」(yìyángdàhémǐguǒ 弋陽大禾米粿)とも呼ばれます。「粿」(guǒ)とは「米の粉などで作った食品」の意味です。
Zhīsuǒyǐyìyángniángāoyǐ“sānzhēngèrbáichuí”wénmíng,
之所以弋阳年糕以“三蒸二百捶”闻名,
shì yīnwèiYìyángrénbǎzhēngshú de mǐfàntóurùgānjìng de shíjiùzhōng,
是因为弋阳人把蒸熟的米饭投入干净的石臼中,
yòngmùgùnfǎnfùchuídǎ,chuí hòuzàizhēngfǎnfùsāncì,
用木棍反复捶打,捶后再蒸反复三次,
chuídǎ qǐmǎliǎngbǎicìcáixíng。
捶打起码200次才行。
弋阳年糕が『三回蒸して二百回つく』として知られているのは、弋陽の人々が蒸しあがったもち米をきれいな石臼に入れて木の杵で繰り返しつき、ついたらまた蒸しを三度繰り返すからです。また少なくとも二百回はついてようやく出来上がります。
もち米をまず粉にしてから水と混ぜ、手でよく捏ねてから成形して蒸す製法の中国の一般的な餅と異なり、蒸したもち米を臼と杵でついて作るのは日本の製法に似ていますね。
つきたての餅はその場で村人にふるまわれます。残りは平たい小円形に形を整えてから吉祥の印を押して出来上がりです。
手作りゆえの課題
弋阳大禾谷のもつ粘り気は「糯米」(nuòmǐ もち米)と「籼米」(xiānmǐ うるち米)の中間位です。それで一度目に蒸した米にはあまり粘り気を感じません。
蒸した約50kgの米をいったん石臼に入れて細めの杵でつき、米の形をつぶしてから再び蒸籠に入れて蒸します。これを繰り返してようやく三度目に本格的な餅つきが始まります。
餅つきに使う杵は10kg以上の重さがあり、男性が三人がかりで協力して持ち上げなければ首尾よくつけません。時にはさらに二人の男性が両横から手を貸して、杵の頭を持ち上げる手助けをします。
しかも200回から300回ついてようやく餅は完成します。「加水」(jiāshuǐ 手水)のタイミングと水の量の加減も長年の経験が欠かせません。
限られた地域の人々だけで作るため高齢化の影響も伴って、餅つきの技術を持つ人材の減少がこれまでの課題でした。
弋阳年糕が地域の活性化のキーコンテンツに
以前は、この地域の小さな店が年に2-3か月間だけ弋阳年糕を加工・販売していました。ところが受注してから製造・発送する方法でネット販売したところ、中国全土から注文が入るようになりました。
また原材料と餅の両方を長期保存できないネックも解消されました。16度以下で弋阳大禾谷を保存できる冷蔵施設と弋阳年糕の製造ラインを地域の企業が完成させたので、年間を通して弋阳年糕を生産できるようになったのです。
今では長期保存が可能な真空パック包装で販売しています。さらに弋阳年糕の人気に併せて他の特産物や農産物も売れ行きが伸びました。加えて、弋阳年糕の伝統民俗餅つき技能コンテストを開催して観光客を呼び込んでいます。
こうして経済的な安定が見込めるようになったため、村に戻って弋阳大禾谷の栽培に従事するようになった若い世代も少なくありません。
まとめ
弋阳年糕が手に入ったらぜひ色々な料理に活用してみてください。「長く煮てもとろけてしまわず、甘口辛口どちらにも合い、蒸す、炒める、焼く、煮る、いずれにも適している」と評判ですよ。