自分の国では当たり前と思っていたことでも、一歩外国に出ればそれは常識ではなかったということも少なくありません。
各国の対応の違いが如実に出るのが出産後の過ごし方でしょう。
中国の出産後の驚くべき習慣: 坐月子とは?
出産後の休養期間
中国文化では、女性が子供を出産した後に坐月子(zuòyuèzi)といって一か月間の休養が必要だとみなされています。
中国だけでなく、中華圏の台湾でも同じ産後の習慣があるため、台湾人と結婚した福原愛さんも旦那さんの文化に合わせて坐月子(zuòyuèzi)を行ないました。日本人女性としては異国のよく分からない文化に合わせるのは、きっと大変だったことでしょう。
さてこの出産後の一か月間、どのように過ごさなくてはいけないのでしょうか?
坐月子の過ごし方
この期間は夫婦それぞれの親も総出で、子どもを産んだ母親の世話をします。実は世話をするだけでなく「こうしなさい、あーしなさい」と指導を始めるのです。お母さんに自由はありません。
どのように過ごせと指導されるのでしょうか?4つほど取り上げましょう。
bùnéngchūmén
1、不能出门
家を出てはいけない
bùnéngxǐzǎo
2、不能洗澡
お風呂に入ってはいけない
bùnéngchīliánghēliángde
3、不能吃凉喝凉的
冷たいものを食べたり飲んだりしてはいけない
hējītāng
4、喝鸡汤
鳥スープを飲め
上記のことをきちんと守っているのか、子どもを産んだ母親は親から厳しく監視されるのです。詳しく見ていきましょう。
家を出てはいけない
これは基本的なことですが、出産後一か月は家を出ることを禁止されます。体力が落ちているから危ないというのもありますが、むしろ中国人は体調が落ちているときに外で病気にかかることを気にしているようです。
イギリスの王女などは出産の一週間後に外に出てメディアインタビューに応じているだけでなく、素敵なドレスにハイヒールまで穿いています。中国人からするとあまりにも常識はずれで、開いた口がふさがらないようです。
だからといってイギリスの王女が病気になるわけでもないので、中国医学の医者たちは「アジア人と欧米人は体質が違うからなのだ」と説明しています。
でも同じアジアの日本でもこのような過度の休養は必要なく、出産後数日たち体力がついて買い物したからといって問題になることはありません。
風呂に入ってはいけない
日本人は一か月もお風呂に入らないと気が狂いそうです。さぞかし福原愛さんは大変だったことでしょう。風呂桶に入るのがダメだけでなく、シャワーを浴びることもNGです。
ですがもともと冬場などは、お湯で濡らしたタオルを絞って体をふくだけを習慣にしている中国人にとってはさほど大変なことではありません。
身体が洗えないだけではなく坐月子(zuòyuèzi)の期間は、忌刷牙(jìshuāyá)といって、歯を磨くことも身体によくないとされています。
体や口の中を清潔にしないのは衛生面で問題がありそうですが、それを中国の中医(zhōngyī)、つまり中国医学の医者たちが口をそろえて勧めるのですから、しょうがありません。
中国5000年の歴史はそうそう簡単には変わらないのです。
冷たいものを食べたり飲んだりしない
中国人は冷たいものを身体に入れることに極めて敏感です。夏場に子どもを産んだお母さんにアイスクリームを買って行こうものなら、殺人容疑で通報される勢いです。
妊娠時でなくても、女性は月経時などホルモンバランスが変わるときは冷たいものを口にしてはいけないといわれていますので、出産後の大きく体調が変わるときなどは冷たいものはご法度なのです。
鳥スープを飲まされる
冷たいものを食べずに何を食べるかというと、ひたすら鳥スープです。大きな鍋に大量の鶏肉を入れてスープにし、それをひたすら食べ続けなければなりません。確かに栄養もあるでしょうが、そればかりなら栄養バランスは崩れます。
筆者の知り合いに大学の生物栄養学の先生がいました。たしかに鳥スープだけ飲むのは栄養バランスは良くないと思う生物栄養学の観点から述べていましたが、実際に自分が子どもを産んだ後は自分と旦那の両親安心させるためだけに、鳥スープを飲み続けていました。
そうです。坐月子(zuòyuèzi)の習慣は、現代知識を持った中国人の中でもおかしいと感じている人もいるのですが、「親に敬意を払う」(孝敬父母:xiàojìngfùmǔ)という別の文化が存在するゆえに、今もその習慣は続いているのです。
中国医学の奥深さ
坐月子(zuòyuèzi)の習慣はこれからも続くでしょう。
これは日本人が中国人と国際結婚して子どもができたときに生じる大きな問題です。中国人側の年配の両親は心からこの習慣が正しいと信じていますから、必ず衝突することとなるでしょう。