中国と日本の学校にはいくつかの違いがあります。今回は学校教育の基礎となる小学校に注目しましょう。
日本との違いを考察すると、中国ならではの特殊な状況が見えてきます。
ここが違う!中国と日本の小学校
目次
中国の小学校日本と違うところ
中国の小学校も日本の小学校も授業スタイルは、ほとんど違いがありません。30~40人規模のクラス制に分かれており、担任の先生がいます。
しかし以下のような点で日本の小学校と明らかな違いがあります。
xuéyīngyǔ
1、学英语
英語を勉強する
zàijiāchīwǔfàn
2、在家吃午饭
昼ご飯を家で食べる
yàojiēsòngháizi
3、要接送孩子
子どもを送り迎えする
lǎoshīhěnyǒuquánwēi
4、老师很有权威
先生に権威がある
一つ一つ違いを考察していきましょう
英語を勉強
中国人の英語レベルは明らかに日本人より上です。会話力においても発音においても日本人は中国人より上手とは言えません。
中国語には外来語がないことや積極的に話す国民性もありますが、英語能力が高い主な要因は小学校の時にすでに英語の授業が始まっていることです。
さらに中国では子供に学校以外の場所でも5つほどの習い事をさせるのが当たり前です。小学生の子供は学校で英語を勉強するうえ、週末に塾で、しかも高いお金を払って外教(wàijiào)と呼ばれる外国人の先生から良い発音を習います。
カタカナ英語で教える日本人の先生と比べると、当然英語の発音が上手になるでしょう。
お昼ご飯はお家で
中国の学校は勉強するだけの場所なので給食などは出されません。昼休みは1時間半~2時間くらいあるので大半の生徒たちは家に帰って食べます。おじいちゃんやおばあちゃんたちと一緒にできたてのご飯を食べて、また午後の授業に行くのです。
給食がないのであれば、お弁当やパンを持って行けばわざわざ家に帰らなくてもいいのにと日本人は感じますが、ご飯は常にでき立てでないといけないという中国人のポリシーがあるので家で食べるのです。
送り迎え制度
中国の小学生は登下校の際に親やおじいちゃんおばあちゃんが必ず付き添います。理由は中国にも変質者が多いからなのでしょうか?
いいえ。変質者ではなく「人贩子」(rénfànzi)と呼ばれる、子どもをさらって業者に売り飛ばす「人さらい」が多いので、子どもを誘拐されないように必ず送り迎えするのです。
小学生はとりわけ誘拐されやすいようです。ある程度労働力にもなりますし、ちょっと怖い話ですが内臓が新鮮ですので中国闇社会では高い価格で売買されます。日本のように子どもが性的いたずらされるのも怖いですが、もっと怖いですね。
世界的に見ても小学生の送り迎えは特殊ですが、こうした問題を考えると必ず大人が送り迎えするのも当然です。
先生の権威
最後に考えるのは先生の権威です。悪いことをした子供をしっかりと叱ることができる先生の権威が中国にはあるのです。
これは民主主義の日本と違って上位の権威が絶対である中国だからなのかもしれません。先生の権威は学校に秩序をもたらしています。親たちも国家公務員である先生たちの言うことはしっかり聞くようにと教育しています。
日本のようなモンスターペアレントとなるような親はあまりいません。
違った環境と違った成長
日本と違って、週日も週末も勉強漬けで、道を歩くときは人さらいに警戒しながら歩き、お父さんもお母さんもいない家の中で、いつもおじいちゃんおばあちゃんとご飯を食べる日々を過ごしている子どもたちは、どんな大人に成長すると思いますか?
ちょっとかわいそうですが、一番甘えたい時期に甘えることができず、一人で強く生きていくことを学びます。
結果、中国にはニートのような若者はあまりいません。これも小学生の時からこうした活動的な生活スタイルをしているからなのでしょう。
中国と日本の良い先生・教え方の違い
良い先生とはどんな先生か?これは国によって見方が全然違います。
言語を学習する身としては、教え方が上手で優しい先生が良いと思うかもしれません。しかし、お隣の国中国ではよい先生の定義が全く違うのです。
中国での学歴の重要性
どんな教師が良い教師と言われているでしょうか?
もちろんしかるべき学校を卒業し、ふさわしい教師の資格を身に着けていることが先生の必須条件であることはどの国でも共通することです。
日本でも学歴がある程度重要視されますが、いったん教員免許をとってしまえば、どの大学で免許を取得したかはさほど重視されないものです。
もちろん校長や教頭になるなら良い学歴があったほうがいいでしょうが、日本ではよい教師というのは「生徒の身になって教えることができるか、教え方が分かりやすいか」などが重要視されています。
教育現場でも学歴重視
しかし、中国で重視されているのはとにかく「学歴」(学历:xuélì)です。中国の大学は基本的に、どの大学を卒業したか、博士号を持っているかなどの学歴だけで教師を選びます。
それは親たちが、子供には有名大学を出た学歴が高い人からの教育を受けさせたいと強く願っているからです。
田舎の大学を卒業した人は、大学の教員免許を持っていても、中学校や小学校の教師としての就職口しか見つからないという事はよくあることなのです。
でも学生時代のテストの成績が良い人が、教師になった後に上手に教えられるとは限りませんよね。
中国の学歴さえよければいいという考え方は裏を返すと、教え方(教导方法:jiàodǎo fāngfǎ)がほとんど重要視されない文化であるともいえます。
各国の良い教え方
各国の良い教え方の定義はそれぞれ違います。
例えば、アメリカ・ヨーロッパでは楽しく教えることが重要です。ダンスをしながら歌に乗って単語を覚えたりするのが良い教え方とされています。
日本では落ち着いた雰囲気で、生徒への質問を交えながら論理的に説明するのが良い教え方とされています。
アメリカ式の教え方を日本人の先生が実践すると、仮に生徒受けは良くても、父兄から落ち着きがない先生と判断されてしまいます。
中国でのよい教え方
では中国ではどんな教え方が良いとされているのでしょうか?
tāotāobùjué shuō chūlái
滔滔不绝说出来。
絶え間なくまくし立てる
どうしてこれがよい教え方なのでしょうか?
滔滔不绝(tāotāobùjué)というのは「絶え間なく話しまくる」様子を表わす四文字熟語(成语:chéngyǔ)です。中国の先生は全く質問などしません。とにかく自分が話し続け生徒はただ延々とそれを聞くだけです。
書店などに行くと名师(míngshī)と呼ばれる大学の著名な教授が「これが良い教え方だ」と言わんばかりに教えている様子が動画で流されていますが、すべて「上からまくしたてる」教え方です。
なぜこのような生徒の思考が止まってしまうような教え方、外国諸国ではもっともやってはいけないとされる教え方が中国では良い教え方とされているのでしょうか?
それは「それが中国文化」だからです。毛沢東の教え方も一方的に教えるものでしたし、一党支配の現在の中国国家も下から疑問点など吸い上げる必要はなく、一方的に上から下へと教育が与えられるものです。
反対意見を言わせる余地なく一方的に聞かせるのが中国文化なわけです。中国人の生徒もその教え方しか知らないために、何の疑問も感じていません。
中国の教え方の影響
中国人のこの教育方法は、人への接し方にも影響します。
日本にいる中国人はしばしば、何かを教える際に自己主張するためにまくし立てることがあります。日本人がするように相手に丁寧に質問しながら、考えてもらうという事はあまりありません。
日本人からするとマナーがないように感じる自己主張も、元を正せば中国の学校教育の影響なのです。
中国人があることを滔滔不绝(tāotāobùjué)主張するときは、嫌がるのではなく、中国の育った環境による影響なので、受け入れてあげるようにしたいですね。