2020年、はやぶさ2の帰還と成功が日本で報じられていたのと同時期に、中国では無人月面探査機「嫦娥五号」が月からのサンプルリターンに成功していたのをご存知でしたか?
今回はその無人月面探査機「嫦娥号」に注目してみましょう。
中国の嫦娥号が月サンプル回収に成功!その意義と今後の展望
嫦娥工程とは?
嫦娥工程 (cháng’égōngchéng 嫦娥計画)
中国では「中国国家航天局」(Zhōngguóguójiāhángtiānjú 中国国家航天局)によって、人工衛星や宇宙探査にかかわる数多くの計画が進行中です。嫦娥工程はそうした計画のうちの一つです。
「嫦娥」(cháng’é)と聞くと中国人はすぐに「月球」(yuèqiú 月)を思い浮かべるかもしれません。というのも嫦娥は月にいるとされる中国古代神話の仙女だからです。
また道教では嫦娥を「月神」(yuèshén 月の神)とみなしています。それで2004年に中国月面探査計画が始まった時、この計画には「嫦娥工程」、月面探査機には「嫦娥号」(cháng’éhào)という名が付けられたのです。
その念頭にあったのは冷戦時代のアメリカとソ連による宇宙開発競争だったようです。
Shìjiègèguóduìyuèqiú de jìngzhúzǎoyǐkāishǐ,
世界各国对月球的竞逐早已开始,
yǔ yǒuxiēguójiāshìtúqiǎngzhànjǐnkěnéngduō de yuèqiúlǐngtǔbùtóng,
与有些国家试图抢占尽可能多的月球领土不同,
Zhōngguó de cháng’ébúshìzhànshén,érshìhépíngnǚshén,
中国的嫦娥不是战神,而是和平女神,
zhōngguórén de tànyuègōngchéng,
中国人的探月工程,
shì zàiwèirénlèihépíngshǐyòngyuèqiúmàichū le xīn de yíbù。
是在为人类和平使用月球迈出了新的一步。
月に対する世界各国のしのぎ合いは早くから既に始まっていた。先を争って月の領土をできるだけ多く占領しようと企むある国々とは異なり、中国の嫦娥は戦いの神ではない。むしろ平和の女神なのだ。中国人の月探査計画は、まさに人類が平和裏に月を使うために踏み出した新しい一歩なのだ。
月を探査するのはなぜ?
嫦娥工程は「無人月面探査」「有人月面着陸」「月面基地建設」の三段階から成っています。これまで嫦娥一号から嫦娥五号までが携わったのは三段階ある計画のうち、まだ第一段階に過ぎません。
すべての計画が実現するまでには20年以上かかると言われています。なぜそこまでして月を調べるのでしょうか?
Yuèqiújùyǒukěgōngrénlèikāifāhélìyòng de gèzhǒngdútèzīyuán,
月球具有可供人类开发和利用的各种独特资源,
yuèqiú shàngtèyǒudekuàngchǎnhénéngyuán,shì duìdìqiúzīyuán de zhòngyàobǔchōnghéchǔbèi,
月球上特有的矿产和能源,是对地球资源的重要补充和储备,
jiāngduìrénlèishèhuì de kěchíxùfāzhǎnchǎnshēngshēnyuányǐngxiǎng。
将对人类社会的可持续发展产生深远影响。
月は人類が開発し利用できるあらゆる種類の独特な資源を十分に備えている。月特有の鉱産物やエネルギー源は地球資源の重要な補充と備蓄になり、人類社会の継続的な発展に深い影響を与えるだろう。
これまでの成果
2007年10月24日に月周回衛星として発射された嫦娥一号は、月の3D映像の撮影、月の表面の元素分布調査、環境調査、土壌の特性調査などをして役目を果たします。
その約1年半後に「丰富海区域」(fēngfùhǎiqūyù 月面の豊かの海)に落下しました。
改良されたカメラを搭載した嫦娥二号(2010年10月1日発射)もほぼ同様の調査を行いました。
2013年12月2日に発射された嫦娥三号は月面への軟着陸を成功させ、月の兎を基に名付けられた「玉兔号月球车」(yùtùhàoyuèqiúchē 月面探査車玉兎号)による探査を行いました。
2016年8月になるまで玉兎号は故障しながらも探査を続けました。
また月面探査車「玉兔二号」(yùtùèrhào 玉兎2号)を載せた嫦娥四号(2018年12月8日発射)は「鹊桥中继星」(quèqiáozhōngjìxīng 中継衛星「鵲橋」)を利用して電波通信を可能にし、月の裏側への着陸に成功しました。
嫦娥五号の成功から次なるステージへ
軌道周回、着陸の二つのミッションを成功させた嫦娥工程が次に挑んだのが、月面で採取したサンプルを地球に持ち帰るサンプルリターンです。
2020年11月24日に発射された嫦娥五号はこのミッションで「月球表面自动采样」(yuèqiúbiǎomiànzìdòngcǎiyàng 月面自動サンプリング)をはじめとする新たな挑戦に取り組み、1731グラムのサンプルを無事持ち帰りました。
将来的に嫦娥六号には嫦娥五号と同様にサンプルリターンを、嫦娥七号は月の南極に着陸させる予定のようです。
まとめ
もちろん中国の宇宙開発計画には火星探査、宇宙ステーション建設など、ほかにもいろいろなミッションがあります。それらについては「中国の宇宙開発計画」もご覧ください。