中国語学習者の皆さんは中国語で作文を書くのはお好きですか?中国への語学留学中に大学の授業で作文を書くことになった私は、日本との違いに戸惑った覚えがあります。
というのも作文は資格試験や入試の項目でもあり、中国ならではの書き方があるのです。
中国人の作文術:名言を引用して自分の考えを明確に伝える
目次
中国人にとっての作文とは?
「作文を書く」は中国語で「写作文」(xiě zuòwén)ですね。お気づきの方も多いでしょうが、中国人の多くは自分の「想法」(xiǎngfa 考え方)や「主张」(zhǔzhāng 見解や主張)を人前ではっきりと表現します。
これは子供の頃から「语文课」(yǔwénkè 日本の国語の授業に相当)の作文の授業で論議や主張の展開方法を繰り返し学んでいるからかもしれません。
HSKの「写作考试」(xiězuòkǎoshì 作文テスト)では制限時間内に作文を書き上げなくてはならず、語学留学生にとっても他人ごとではありません。
ではどういう作文を書けば高評価を得られるのでしょうか?そのコツを教えてくれる中国の作文指南から三つの要素を見てみましょう。
立意(lìyì 着想)
出題者の意図をくみ取る?
テーマが最初から決められている場合は比較的簡単かもしれません。
例えば「美好的回忆」(měihǎo de huíyì 素晴らしい思い出)のような具体的なテーマが既に決められているなら、直接そのテーマに関係する言葉を文章内のキーセンテンスにして文章を書いていきます。
書くのがより難しいのは「材料作文」(cáiliàozuòwén 資料作文)でしょう。材料作文はいくつかの資料を用意しているだけでテーマの設定はありません。
学生はその資料を概観し、自身で作文のテーマと方向性を決めなければならないのです。
Zàilìyìfāngmiàn,rúguǒshìcáiliàozuòwén,kěyǐ duōjiǎodùjiědúmìngtízhě de chūtíyìtú,
在立意方面,如果是材料作文,可以多角度解读命题者的出题意图,
ránhòucóngzhōngxuǎnzéyīgezuìwéimíngxiǎn de jiǎodùqùlìyì,
然后从中选择一个最为明显的角度去立意,
búyàozuānniújiǎojiān,yěbúyàoměigejiǎodùdōuyǒusuǒshèliè,
不要钻牛角尖,也不要每个角度都有所涉猎,
zhǐ yòngyījùhuàqùlìyìjíkě。
只用一句话去立意即可。
着想面では、もし資料作文の場合、多角的に出題者の出題意図を読み解くとよいでしょう。その後、その中から最もはっきりとした観点を選択し着想します。
一つの意見や考えに固執する必要はなく、またすべての観点をみないくらかでも関係させなければならないわけでもありません。一言でまとめられる簡単な言葉から着想していけばいいのです。
框架(kuàngjià 構成)
全体の構成・筋書きを組み立てる
文章を書き始める前に、文章全体をどういう構成にするか、ある程度の筋書きを決めて列挙しておくとよいでしょう。
何段落くらいにまとめるのか、それぞれの段落はどのくらいの長さにするのか、各段落では何を書くのかを前もって整理しておくのです。
议论文(yìlùnwén 論説文)を書く場合
- 論点を提起します。
- 現代の事例を挙げて論議に根拠があることを示します。
- さらにそれを裏付ける古代の事例を取り上げます。
- 可能なら国外の事例も挙げて論拠とします。
- 最後に結論を述べて全体をまとめます。
记叙文(jìxùwén 叙述文)を書く場合
- 時間の流れに沿って、または出来事の起きた順に書いていきます。
素材(sùcái 素材)
作文に使う素材を暗記しておく
上記の2~4を可能にするのが素材です。例証する事例を挙げるためには、古代から現代までの著名人の名前と名言をいつでも臨機応変に引用できるよう準備しておく必要があります。
それで普段からよく読書をして、古今東西の著名人のが、どんな名言を、いつ、どこで語ったのかを暗記しておくよう提案されています。
中国小学生の作文術!名言引用でレベルアップする方法
授業で気軽に書ける作文ならまだしも、受験や就職の合格を左右する試験で作文を書かなくてはならない場合、失敗は禁物です。ほかの人が書いた高評価の作文を手本にし、その構成や表現力を真似るよう勧める先生もいます。
ではどうすれば最短で作文を書く能力を向上させられるのでしょうか?
日本の国語科に相当する中国の科目が「语文课」(yǔwénkè)です。その授業の一環で子供たちは小学生の頃から作文の書き方を段階的に教わります。
今回は中国の小学生たちが学校で教わる驚きの作文テクニックをご紹介しましょう。
学年毎に設定されている作文の目標
「写作文」(xiě zuòwén)つまり作文では、学年ごとに設けられた課題があります。
1年生は自分の好きな人や物、生活にかかわる字や言葉をたくさん覚え、語彙を増やすよう求められています。
2年生になるとそれを文章にし、3年生では幾つかの文を段落にまとめていきます。4年生になると複数の段落で構成される長い文章にまとめるようになります。
そして5年生と6年生では使う言葉の正確性や文章全体の完成度を高め、さらなるレベルアップを図ります。
また文章として書くにとどまらず、表現力を磨き、人前でそれを話せるような練習も行います。
子供同士が作文を互いに批評?
書いた作文に点数をつけるのは教師ですが、高学年になるとグループに分かれてお互いの作文を評価し合う「互评互改」(hùpínghùgǎi)が効果的だとされています。
グループ内の子供同士で、まずほかの人の作文の良い点を褒めます。次に良くないと思える部分をどう変えたらいいかを子供たちに考えさせ、お互いに提案し合うのです。そのうえで改めてもう一度作文を書きなおします。
これは子供自身が自分の書いた文章を客観的に批評し、推敲する力を身につけるのに役立つようです。
作文の中で名言を引用に親も協力?
競争相手の多い中国では子供同士でも何とかして人に抜きん出よう(出人头地 chū réntóudì)とする意識が働き、それは作文の授業でも同じです。
ともすれば他の作文の中に埋もれかねない自分の作文を、どうすれば先生の目を引き、高い評価を得られるものにできるのでしょうか?
それには内容を裏付ける名言を引用するのが良いとされています。子供のためにそうした名言集を買おうと書店にやって来る親も少なくありません。
Guónèi de héguówài de jīngdiǎnmíngyán,ràngháizizàirìchángxuéxízhōngduōjìyìxiē,
国内的和国外的经典名言,让孩子在日常学习中多记一些,
xiě zuòwén de shíhouzuòdàolínghuóyùnyòng,huìràngzuòwéngèngjiāchūcǎi。
写作文的时候做到灵活运用,会让作文更加出彩。
国内外の権威ある名言を普段の勉強の中で子供に少しでもたくさん覚えさせましょう。作文を書く際にそれを効果的に活用するなら、作文はより一層生き生きとしたものになります。
Hěnduōguónèihéguówài de míngrényǔlùdōushìháizimenzàixuéxízhōngjīngchángpèngdào de。
很多国内和国外的名人语录都是孩子们在学习中经常碰到的。
Hěnduōháizibùxǐhuansǐjìyìngbèi,dànqíshízhèxiēmíngrényǔlùbùxūyàosǐjìyìngbèi,
很多孩子不喜欢死记硬背,但其实这些名人语录不需要死记硬背,
jiāzhǎngmenkěyǐlìyòngsuìpiànshíjian,
家长们可以利用碎片时间,
gěiháizijiǎngjiang zhèxiēyǔlù de shídàibèijǐnghédiǎngù,
给孩子讲讲这些语录的时代背景和典故,
ràngháizixiānlǐjiězàijìyì,zhèyàngjìbìmiǎn le sǐjìyìngbèi de kūzào,
让孩子先理解再记忆,这样既避免了死记硬背的枯燥,
yě néngràngháiziduìmíngrényǔlùyǒugèngshēnrù de lǐjiě,
也能让孩子对名人语录有更深入的理解,
zàizuòwénzhōngyǐnyòng de shíhouyěhuìdéxīnyìngshǒu。
在作文中引用的时候也会得心应手。
ほとんどの国内外の著名人語録は子供たちが学習中によく出会うものです。多くの子供たちは意味も考えずに丸暗記するのを嫌いますが、実のところこれらの著名人の語録は機械的に丸暗記する必要はありません。
親の皆さんはちょっとした手空きの時間を利用して、これらの語録の時代背景や故事を子供に話して聞かせてあげてください。子供にまず理解させてから記憶させるのです。
こうすれば機械的に丸暗記する味気なさを回避できるだけでなく、著名人が語った言葉に対する理解をさらに深めさせることができ、作文内に引用するときに思い通りの結果を得られるでしょう。
中国の小学生が覚える著名人の名言とは?
「中国の小学生・驚きの作文テクニック」でも紹介しましたが、中国では小学生の頃から、作文に引用するために国内外の著名人の名言を暗記するよう教育されます。
では子供たちはどんな名言を覚えて使っているのでしょうか?
作文に引用するのはどんな名言?
テーマと内容にふさわしい名言を文中に引用するのは至難の業です。誰の、どんな言葉があるか、それはどういう状況で語られたのか、どの文献に載っているのかも知っている必要があります。
また、なぜここでその名言を引用するのか明確な理由があり、構成が論理的でなければなりません。
ここでは小学生向けの名言語録からいくつか例を挙げてみます。もしかしたら聞いたことのある一文があるかもしれませんね。
雨果(yǔguǒ)
ユーゴー(フランスの小説家・政治家)
Nǎli yǒuyīnyǐng,nǎlijiùyǒuguāng。
哪里有阴影,哪里就有光。
どこでも陰のあるところには光があるのだ。
海明威(hǎimíngwēi)
ヘミングウェイ(アメリカ合衆国の小説家・詩人)
Yōuyú biérén,bìngbùgāoguì,zhēnzhèng de gāoguìyīnggāishìyōuyúguòqù de zìjǐ。
优于别人,并不高贵, 真正的高贵应该是优于过去的自己。
仲間より秀でることは、崇高なことではない。真の崇高さとは、過去の自分よりも優れた人間になることである。
莎士比亚(shāshìbǐyà)麦克白(màikèbái)
シェイクスピア(イングランドの劇作家・詩人-「マクベス」より)
Hēiyè wúlùnzěnyàngyōucháng,báizhòuzǒnghuìdàolái。
黑夜无论怎样悠长,白昼总会到来。
明けない夜はない。
歌德(gēdé)少年维特之烦恼(shàoniánwéitèzhīfánnǎo)
ゲーテ(ドイツの詩人・政治家-「若きウェルテルの悩み」)
Fánshìràngrénxìngfú de dōngxi,wǎngwǎngyòuhuìchéngwéitābúxìng de yuánquán。
凡是让人幸福的东西,往往又会成为他不幸的源泉。
およそ人を幸福にする物の多くは、往々にしてまたのその人を不幸にする源になる。
爱因斯坦(àiyīnsītǎn)
アインシュタイン(理論物理学者)
Jiàoyù jiùshìdāngyīgerénbǎzàixuéxiàosuǒxuéquánbùwàngguāngzhīhòushèngxià de dōngxi。
教育就是当一个人把在学校所学全部忘光之后剩下的东西。
教育とは、学校で習ったことをすべて忘れた後に残っているものである。
名言を引用した作文の実例
ではこれらの名言を作文にどう引用するのでしょうか?引用方法は様々ですが、ここでは作文全体の半ばあたりで引用した例を挙げてみます。
ドイツの哲学者「尼采」(nícǎi フリードリヒ・ニーチェ)の名言を引用しています。
Zàizhèjǐgeyuèzhīnèifāshēngzàiwǒmenyījiārén de yīliánchuàn de shìqíng,
在这几个月之内发生在我们一家人的一连串的事情,
shǐ wǒnánguò le hěnduō,yīnwèifěibàngwǒjiā de búshìwàirén,
使我难过了很多,因为诽谤我家的不是外人,
érshì wǒmendōuhǎoshúxī de rén,wǒ zǒngjuédetāshìwǒ de zhījǐ,
而是我们都好熟悉的人,我总觉得他是我的知己,
dàntāqíshí shìyìzhízàibèihòushuō le xǔduōwǒjiā de huàihuà。
但他其实是一直在背后说了许多我家的坏话。
Yǒujùhuàshuō de méicuò,
有句话说得没错,
“wǒ gǎndàonánguò,bú shìyīnwèinǐqīpiàn le wǒ,
“我感到难过,不是因为你欺骗了我,
érshìyīnwèiwǒzàiyěbùnéngxiāngxìnnǐ le。”
而是因为我再也不能相信你了。”
Dànshì yǒuxiērénnǎpàràngnǐshāngxīnnánguò,nǐháishiméibànfǎqiēduànliánxì,
但是有些人哪怕让你伤心难过,你还是没办法切断联系,
rényǔrénzhījiān de yīnyuánduōmeqímiào,
人与人之间的因缘多么奇妙,
zhè zhǒngjīnglìhuòxǔjiàozuòchéngzhǎng。
这种经历或许叫做成长。
この数か月の間に私たち一家に降りかかった一連の出来事は、私を大いに苦しめました。なぜなら私たちを誹謗したのが外部の人ではなく、私たちがよく知っていた人だったからです。
私はずっとその人を知己だと思っていました。でも実のところ背後で私たちの悪い話をたくさんしていたのです。ある言葉が言っているのは真実です。「私が苦しいのはあなたが私を騙したせいではなく、私が二度とあなたを信じられなくなるからだ。」
でもたとえ誰かがあなたの心をひどく傷つけたとしても、あなたにはその人との関係を断ち切る方法がありません。人と人の因縁はなんと不思議なのでしょう。この経験はあるいは成長と呼ぶのかもしれません。
まとめ
HSKなどの中国語試験で作文を書く場合や中国の大学に語学留学するのであれば、こうした名言を覚えておくと役立つかもしれません。
とはいえ、名言語録100選などの書物が出回るくらいですから、それらを覚えて作文に引用する中国の小学生の能力にはさすがにびっくりですね。