中国では特撮技術やCGを多用した映画やTVドラマの制作が盛んです。特に中国古代神話に登場する仙人や天界の人物の特殊能力の表現にそれらの技術が応用されています。
今回は歴史喜劇としても楽しめる「宝莲灯」をご紹介しましょう。
宝蓮灯で学ぶ中国古代神話の親孝行物語
テーマは親孝行
「宝莲灯」(bǎoliándēng 宝蓮灯)は「沉香劈山救母」(Chénxiāngpīshānjiùmǔ「沉香、山を劈(開)いて、母を救う」)という神話がモチーフの作品です。
主人公である「刘沉香」(LiúChénxiāng)の少年時代を扱っており、子が親を慕う気持ちと子を思う親の気持ちを扱っているので、同名の児童書も数多く出版されています。
おそらくこの話を知らない中国人はいないといってもいいほど有名です。
Bǎoliándēngshìyīgeyùyìměihǎo de gùshi,chúleyǐnfātóngnián de huíyìlàngcháo,
宝莲灯是一个寓意美好的故事,除了引发童年的回忆浪潮,
gèngshìchéngzàizhehóngyángZhōngguóchuántǒngxiàodàowénhuà de zhòngyàozhínéng。
更是承载着弘扬中国传统孝道文化的重要职能。
宝莲灯はよい教訓を含んだ美しい物語です。幼い頃の記憶を思い出させるだけでなく、中国の伝統でもある親孝行の精神文化を高揚する役割を担う重要な働きがあります。
原作はまるで中国版の「母をたずねて三千里」
「王母娘娘」(Wángmǔniángniang 西王母とも呼ばれる仙女の長)のいいつけで中国五山の一つ「华山」(huàshān 華山)に来ていた「三圣母」(sānshèngmǔ 三聖母)は、偶然人間の書生「刘彦昌」(LiúYànchāng)と出会い、愛し合うようになります。
そして「天条」(tiāntiáo 天が定めた戒律)を犯すことになると知りながらも刘彦昌と結婚し、二人の間には一人息子の「沉香」(Chénxiāng)が生まれます。
それを知った三圣母の兄「二郎神」(èrlángshén 二郎神)は三圣母が持っていた無敵の「法宝」(fǎbǎo 法力アイテム)である宝莲灯を取り上げ、彼女を華山の下の洞窟に閉じ込めてしまいます。
やがて大きくなった沉香は、母を探す旅に出ます。それはまるで中国版の「母をたずねて三千里」のように長く苦しい旅です。しかも三圣母が天条を犯しているため、手を差し伸べて助けてくれる者もなかなかいません。
そのうえ本来は実の伯父であるはずの二郎神が繰り返し沉香の邪魔をしてきます。宝莲灯は沉香が母を助ける幾多の困難に遭いながらも、さまざまな人たちから助けを得て、最後には母を救い出し再開を遂げるまでの物語なのです。
現代の技術でリメーク
宝莲灯は映画やドラマの分類では「古装神话剧」(gǔzhuāngshénhuàjù 時代神話劇)のジャンルに属します。また沉香の成長や彼を取り巻く孫悟空や猪八戒などのユニークな登場人物たちの言動が喜劇の色彩を強めています。
子供だけでなく家族でも楽しめるため1990年代後半から現在に至るまで幾度となく「翻拍」(fānpāi リメーク)されています。一覧を挙げてみましょう。
- 「宝莲灯」(bǎoliándēng 宝蓮灯)
1999年制作 中国国産アニメ映画(84分) - 「天地传说之宝莲灯」(tiāndì chuánshuōzhībǎoliándēng 天地伝説の宝蓮灯)
2001年制作 TVドラマ 全20話 - 「宝莲灯」(bǎoliándēng 宝蓮灯)
2005年制作 TVドラマ 全35話 - 「宝莲灯前传」(bǎoliándēngqiánzhuàn 宝蓮灯前伝)
2009年制作 TVドラマ 全46話 - 「宝莲灯浮仙幻境」(bǎoliándēngfú xiānhuànjìng 宝蓮灯浮仙幻境) 2019年制作 映画(110分)
- 「新版宝莲灯」(xīnbǎnbǎoliándēng 新版宝蓮灯)
2018年制作開始 TVドラマ 全60話(2020年も制作中) - 「新编宝莲灯」(xīnbiānbǎoliándēng 新編宝蓮灯)
2020年制作 映画(93分)
特に近年の制作作品にはかなりの費用をかけて「电脑三维动画特技」(diànnǎosānwéidònghuàtèjì デジタル3D動画特撮技術)が応用されています。
それぞれの作品の愛されキャラクター
数ある同名作品の中でも人気が高いのが2005年版の「宝莲灯」で「焦恩俊」(JiāoĒnjùn)が演じた二郎神です。リメーク作品で二郎神を演じる役者は今でも必ず焦恩俊と比較されます。
それで2009年にはほぼ同じ配役でもう一つの中国古代神話「杨戬劈山救母」(YángJiǎnpīshānjiùmǔ「杨戬、山を劈(開)いて、母を救う」)を基に「宝莲灯前传」が制作されました。
これも捕らわれた母を探したずねる内容なのですが、その主人公「杨戬」(YángJiǎn)は実は二郎神の別名です。彼の母もまた仙女でありながら人間と結婚していたのです。
それで二郎神の若かりし頃のエピソードから始まり、なぜ2005年版の「宝莲灯」で沉香を妨げながら助けるかのような行動をとったのかという解釈で物語を進めています。
また2020年制作の映画「新编宝莲灯」では、母を助けるための修業を積むために沉香が師匠と仰ぐ「齐天大圣」(qítiāndàshèng 仏になって500年経つ孫悟空)が登場します。
それを演じるのが「邓紫飞」(DèngZǐfēi)ですが、こんなかわいい孫悟空はこれまで見たことがないといわれるほどの高評価を得ています。
まとめ
モチーフは古代神話ですが、内容は喜劇ですから中国の笑いも楽しめます。本編だけでなく大団円のその後を扱った作品なども含めて視聴すると面白いですよ。