ここ数十年で中国の結婚観はかつてないほど大きく変化してきました。
今回は1950年代から現在までの結婚事情の変遷を知るのに役立つ2本のTVドラマをご紹介しましょう。2007年発表の「金婚」と、2020年発表の「谁说我结不了婚」です。
中国の結婚事情の変化を描いた2つのテレビドラマ
結婚の現実を描写した「金婚」
「金婚」(jīnhūn)
放送開始前から繰り返し番宣が流れ、放送後には数々の賞を総なめにしたのが「金婚」です。全50話のドラマで、できるだけ忠実に当時を再現しようと衣装や小道具、町の背景など細部にまでこだわって制作されています。
内容は小学校で数学を担当する若い女性教師「文丽」(WénLì)と、重機機械工場の技術労働者「佟志」(TóngZhì)が出会い、結婚して夫婦になってからの50年に及ぶホームドラマです。
結婚するのが当たり前だった1956年から物語は始まり、二人の恋愛、新婚生活、親との関係、出産、子育て、子供たちの成長と問題、子供たちの結婚、文丽と佟志の熟年冷戦や高齢に伴う悲哀、病気など現実的な数々の問題を扱っています。
祖父母や親の結婚を見て…
文丽と佟志は結婚当初から数々の相違を抱えていて、決していつでも仲睦まじいわけではありません。考え方も感覚も異なるため金婚式を迎えるころになっても、意見が合わないことがまだまだあります。
Niánqīngshí,tāmencóngxìnggédàoshēnghuóxíguàngégébúrù,
年轻 时,他们 从 性格 到 生活 习惯 格格不入,
hūnyīnshēnghuózhōngcóngyīshízhùxíngdàozǐnǚjiàoyùdàopóxíguānxi,chùchù máodùn。
婚姻 生活 中 从 衣食 住 行 到子女 教育 到 婆媳 关系,处处 矛盾。
Zhōngniánshí,fūqī zhījiānyuèláiyuèshǎogōutōng,
中年 时,夫妻 之 间 越 来 越 少 沟通,
fūqī guānxicónglěngmòdàolěngzhàndàodàdǎchūshǒu,hūnyīnsìhūzǒudàojìntóu。
夫妻 关系 从 冷漠 到 冷战 到大打 出 手,婚姻 似乎 走 到 尽头。
Lǎoniánshí,tāmenbǐcǐguān’àifúzhù,
老年 时,他们彼此 关爱 扶助,
xiānghùzhīchengzhedùguòrénshēngzuìhēi’àn de suìyuè。
相互 支撑 着 度过 人生 最 黑暗 的 岁月。
若い時、二人は性格から生活習慣まで全く相いれなかった。結婚生活では衣食住から子供の教育、嫁姑の関係、何もかもが対立していた。
30代から40代後半になると夫婦間のコミュケーションはどんどん少なくなり、夫婦関係は冷ややかな状態から相手に手を挙げるほどの冷戦にまで至り、結婚生活もこれまでかと思われた。
60代以降になると互いに関心を払って相手を大切にするようになり、人生の最もつらい年月を相互に支え合いながら過ごすようになった。
文丽と佟志の子供たちも次々結婚しますが、それぞれが問題に直面し、結婚生活は長続きしません。ドラマで描かれているのはあくまでフィクションですが、身近な家族や親族でよく見かける現実的な問題を扱っています。
こうした祖父母、親世代の結婚生活を見て結婚自体に不安を抱くようになった次の世代、いわゆる「80后」(bālínghòu 1980年代生まれ)や「90后」(jiǔlínghòu 1990年代生まれ)に広まりつつあるのが「不婚族」(bùhūnzú)や「恐婚族」(kǒnghūnzú)です。
30代女性が抱える結婚観を描く「谁说我结不了婚」
「谁说我结不了婚」(shéishuōWǒjiébuliǎohūn)
TVドラマの美人脚本家「程璐」(ChéngLù)、高収入の美人弁護士「田蕾」(TiánLěi)、エステサロンの美人経営者「丁诗雅」(DīngShīyǎ)は、互いに何でも話し合える親友です。
社会的に成功しているこの三人の30代女性主人公を中心に、現代の結婚観を描写しているのが「谁说我结不了婚」です。タイトルを直訳すれば「私が結婚できないって誰が言うの?」となります。
つまり彼女たちは「催婚大军」(cuīhūndàjūn)とも称される家族・親戚などの周囲から「結婚できない女性だとみなされている」わけです。主人公の程璐が口にする台詞、
ShéishuōWǒjiébuliǎohūn,Wǒ zhǐshìbùxiǎngjiāngjiuguòyìshēng……
谁 说 我 结不 了 婚,我 只是 不 想 将就 过 一生……
私が結婚できないって誰が言うの?私は我慢しながら一生を送るなんて嫌なだけよ。
は、まさに不婚族の気持ちを代弁していると言えるでしょう。
結婚できないのではなく自分を失いたくないだけ
三人が直面するのは「もう適齢期も過ぎたのだから、とにかく早く結婚すべきだ」という周囲の圧力です。彼女たちほどの社会的地位や収入があったとしても、これまで続いてきた一般的な結婚観に立ち向かうには勇気が要ります。
Gāijùzhōng,tāmenbúshìjiébuliǎohūn,érshìbùxiǎngjiéhūn,
该 剧 中,她们不 是 结不 了 婚,而 是不 想 结 婚,
tāmendōuyàoyǒnggǎn de jiānchízìjǐ,bú yàobèiwàijièsuǒqūfú,
她们 都 要 勇敢 地 坚持 自己,不要 被 外界 所屈服,
xīwànghūnyīnshìtāmenzìránérrán de yùjian,érbúshìwěiquhébèipò de jiāngjiu,
希望 婚姻 是 她们自 然而 然的 遇见,而不是 委屈和 被迫的 将就,
bú fàngxiàduìàiqíng de biāozhǔn,yě búfàngqìduìshēnghuó de biāozhǔn。
不 放 下 对 爱情 的 标准,也不 放弃 对 生活 的 标准。
ドラマの中で彼女たちは結婚できないのではなく、結婚したくないのです。周りの圧力に屈しないよう、それぞれが勇気をもって自分をしっかり主張しています。結婚するなら自然な出会いであってほしいと願っているのです。
不満を抱きながらまた強いられて、我慢しながらの結婚はしたくないし、愛情に求める基準もあきらめたくない、もちろん今の生活レベルも手放したくないのです。