中国で春から初夏の風物詩といえば空中をふわふわと舞うポプラや柳の木の綿毛ですね。アレルギー要因にもなるので問題になっていますが、もう一つの難題が街路樹の害虫です。
市民の憩いの場でもある青々と茂った街路樹の害虫をめぐる声をお届けしましょう。
中国の春から初夏の風物詩に悩まされる街路樹の害虫問題
ポプラ並木に白い糸?
通勤通学の時間帯になると、相当量の自転車や電動バイクがポプラ並木の下の道路を走っていきます。
この時期の問題は木の上からつらさがっている無数の白い糸です。蛾の一種の幼虫がその白い糸の先に留まっており、自転車や電動バイクで走っていると容赦なく顔にぶつかり、目に入り、口に入ってきます。
市民の多くはそれを避けるためにサングラスを掛けたり、帽子をかぶったり、傘をさしたりしています。
柳の木が涙を流す?
こちらは山西省のある街の話です。
緑の葉が茂る柳の木の街路樹は見た目にも夏らしく、その木陰で中国将棋を指す年配の男性たちの集団があちらこちらに見受けられます。夕方にもなると涼を求めて木陰を散歩する人も少なくありません。
ところが木の上から頭や首筋に水が降ってくるのです。しかも空は晴れているのに、しとしとと雨が降るような音がします。
柳の木が涙を流すと表現すれば聞こえはいいですが、正体はやはり害虫です。
Wǒ zǐxìkàn,gāilùliǎngcè de xíngdàoshùjīběnyǐliǔshùwéizhǔ,
我仔细看,该 路 两 侧的 行道树 基本以 柳树为 主,
zhíjìngduōzàishílímǐyǐshàng。
直径 多 在 10 厘米 以上。
Wǒ fēnbiézàijǐkēliǔshùxiàzhànlìle jǐfēnzhōng,
我 分别 在几棵 柳树 下 站立 了几 分 钟,
néngmíngxiǎngǎnjuédàoshùshàngbùshíxiàngxiàdīshuǐ,
能 明显 感觉 到 树 上 不时 向 下滴 水,
érqiě shùyuècū,dī de shuǐyuèduō。
而且 树 越粗,滴的 水 越 多。
よく見ると、その道路の両側の街路樹は主に柳の木で、直径は多くが10cm以上ありました。私は何本かの柳の木の下で数分ずつ立ってみましたが、断続的に木の上から下に向かって水がしたたり落ちるのをはっきりと感じました。
しかも木が太ければ太いほど滴ってくる水も多いのです。
防虫剤散布も効果なし
この水の正体は柳の木に付く「蚜虫」(yáchóng アブラムシ)の分泌物でした。「柳沫蝉」(liǔmòchán)や「柳大蚜」(liǔdàyá)と呼ばれるアワフキムシの一種です。
この虫は樹液を吸うために、注射針に似た器官で柳の樹皮の柔らかい部分を刺して穴を開けます。
また若枝や若葉を食べると同時に、泡状の液体分泌物「蜜露」(mìlù)を体外へ排出します。これが住民に雨が降ってきたのかと思わせた水の正体でした。
シーズンが来る前に三回も防虫剤を集中散布しているのですが、なかなか成果が上がりません。なぜなら温暖化の影響などで冬から初春の気温が高いと、虫の成長が早く、より多く発生してしまうからです。
しかも、防虫剤に対する生体の抵抗力が年々強くなっているようです。
今のところ人体に害はないようですが、蜜露は粘り気があるため服に付くと洗い落としにくくなります。それで一度蜜露を浴びてしまったら、なるべく早く洗濯するよう勧められています。
家じゅう毛虫だらけ
今度は江蘇省です。とある居住区とその周辺の街路樹は主にポプラで、どれも15-20mもの高さがあります。
どうやらその街路樹から「杨扇舟蛾」(yángshànzhōu’é)という蛾の一種の毛虫が発生して毎日何百匹も落下し、その後近隣の住宅に入って来ているのです。
居住区は団地のような設計で6階以上がほとんどですが、それでも毛虫はベランダや部屋の中にまで入ってきて、ひどい時はベッドの上も毛虫だらけになります。
毎日処理しますが次の日もまたやって来るので、その繰り返しに住民は悲鳴を上げています。
樹木を伐採したとしても…
杨扇舟蛾はポプラの葉を主な餌にしており、除虫時期を逃してしまうとあっという間に葉をすべて食べてしまう恐れがあります。というのもこの虫は4月から9月のひと夏で四世代まで次々と成長するからです。
住民の要望に沿って都市緑化部門は何度か農薬を散布したのですが、樹高が高すぎて最上部にまで散布できません。
Pēnsǎ nóngyàohěnnánshíxiànquánfùgài,yīncǐ zàidàliàngsǐchóngdiàoxiàlái de tóngshí,
喷洒 农药 很 难 实现 全 覆盖,因此 在 大量 死 虫 掉 下 来的 同时,
shù dǐngshàngháiyǒuyīxiēlòuwǎng de cúnhuóxiàláijìxùwéihài,
树 顶 上 还 有一些 漏 网 的 存活 下 来 继续为 害,
tāmenchīguāngdǐngbù de shùyèhòu,
它们 吃 光 顶 部的 树叶 后,
yòubùchīxiàmianpēnsǎguònóngyào de shùyè,jiù diào le xiàlái。
又不 吃 下面 喷洒 过 农药 的 树叶,就 掉 了 下 来。
全体を覆うように農薬を吹き付けるのは大変難しい。それで大量の死んだ虫が落ちて来るのと同時に、樹木の最頂部にはそれを逃れた虫が生存していて引き続き害を及ぼす。
それらは樹木の最頂部の葉を食べ尽した後、下側の農薬散布された葉は食べずに落ちて来るのだ。
まとめ
いっそのこと並木を伐採してしまってほしいという声もあるのですが、伐採してしまうと今度は空気清浄化や防砂防塵の役割を果たす緑がなくなってしまいます。
また今ある樹木を伐採して、同程度の別の樹木を移植するには時間も費用もかかります。
どの都市の緑化部門も「初夏から夏にかけてしばらく我慢してください。」としか言えないのも仕方ないかもしれませんね。