辞書通りの中国語を使っているのに、全然通じない…。文法的には間違いもなく発音も正確なのに、どこに問題があるのか日本人の中国語は通じないことがあるのです。
今回は外国人が中国語で考えを伝えるうえで、知っておくと便利な方法をお伝えします。
日本人の中国語は通じない?失敗しない伝え方のポイント
目次
中国人に日本人の中国語が聞き取れない理由
まずはどうして日本人が勉強して使っている中国語が通じていないことがあるのかを解説いたします。
辞書の言葉が通じない
例えば「教える」という動詞を表現したいとします。辞書を調べるとこう書いてあります
jiāo
教
教える
この動詞を使って「私があなたに教えます」と表現するとします。おそらく中国語を勉強したての人はこう言うでしょう。
wǒ jiāo nǐ
我教你
文法的に間違いはありません。ところがこの中国語を聞いても中国人はポカンとしています。なぜでしょうか?
我(wǒ)と你(nǐ)は聞き取れても意味を伝えるうえで一番重要な部分である動詞の教(jiāo)が聞き取れないからです。
なぜ正確に発音しているのに聞き取れないという問題が生じるのでしょうか?
たくさんある同じ動詞の発音
聞き取れなかった原因は、教(jiāo)つまりjiaoというピンインを一声で発音する中国語はほかにもたくさんあるからです。
例えばなにかを「渡す」を意味する動詞は交(jiāo)です。よって中国人にはこう聞こえることも大いにあります。
wǒ jiāo nǐ
我交你
私があなたに渡します
他にも物事に慌てふためく、つまり「あせる」を意味する「焦:jiāo」、「驕り高ぶる」ことを意味する「骄:jiāo」、水などを「注ぐ」ことを意味する「浇:jiāo」すべて同じ発音で単発でも使える動詞です。
単語量の少ない外国人同士では問題なく通じる中国語でも、単語量の多い中国人にはどの動詞のことを言っているのか選択肢がありすぎて混乱するというわけです。
ではこの問題を解決するにはどうしたらよいのでしょうか?
中国語で確実に考えを伝える方法
母国語ではない外国語で話すときに覚えておいたほうがいいのは、自分は正しく言っているつもりでも、伝わっていないことが多いということです。
中国語を使うときも同じことが言えます。中国語を勉強し始めて数年過ぎ、ある程度言いたいことが表現できるようになったら、自分の考えは当たり前に相手に伝わっていると思い込んでしまいます。
しかし後々確認すると、実は伝わっていなかったなんていうことはよくある話です。では、何が問題なのでしょうか?
それは、母国語ではない言語で話すときに意識する必要がある「確実に意思を伝える方法」を実践していないことにあります。それは、次の3つの方法です。
duìfāng tīngbùdǒng cídiǎn de dòngcí shí , yào yòng liǎngzì dòngcí
1,对方听不懂词典的动词时,要用两字动词
相手が辞書に載っている動詞が分からない時、2文字の動詞を使う
xuǎnzé bǐ jiào jiǎndān de jùzǐ
2,选择比较简单的句子
簡単な表現を選択する
ràng běndì rén shuōhuà
3,让本地人说话
ネイティブに言ってもらう
一つずつ考えていきましょう。
二文字の動詞を使う
例えば先ほどの「教える」という動詞を、確実に相手に伝わるように言うにはどうしたらいいのでしょうか?
ぜったい中国人が聞き間違えることのない、2文字以上の動詞を使えばよいわけです。教导(jiàodǎo)や训练(xùnliàn)などを使ってもいいでしょう。
「勉強する」という動詞もそうです。学(xué)という一文字の動詞で表現し、
wǒ xué hànyǔ
我学汉语
わたしは中国語を勉強します
でも通じるかもしれませんが、確実に伝えたいなら学习(xuéxí)という2文字の動詞を使って
wǒ xuéxí hànyǔ
我学习汉语
わたしは中国語を勉強します
と表現するほうが確実に伝わるのです。
他にも「助ける」という動詞なら帮(bāng)よりも帮助(bāngzhù)を、「寝る」という動詞なら睡(shuì)よりも睡觉(shuìjiào) という2文字動詞を使ったほうがよいでしょう。
中国人は例外
もしかしたら、中国人は2文字で表現する動詞を使わず1文字だけの動詞を多用しているかもしれません。
例えば先ほどの「私は〇〇を勉強します」の時に中国人は普通、我学习汉语(wǒ xuéxí hànyǔ)を使わずに、一文字の動詞・我学汉语(wǒ xué hànyǔ)を使います。
しかし中国人同士なら一文字の動詞でもいいのです。いつも日常会話で使っているので前後文(上下文:shàngxiàwén)から推察し、意味をはき違えることがないためです。
日本語でもそうではないでしょうか?例えば外国人がいきなり日本語で「私、北海道でやりました」と言ったら、「えっ?何をやったの?」となります。
しかし日本人が話の途中で「私、北海道でやりました」という場合、前後のスキーの話の流れから「あ~、スキーをやったんだろうな」と推察できます。
このような理由で中国語が母国語ではない外国人は、前後の話の流れを十分把握しきれないので、確実に考えが伝わる2文字以上の動詞を選ぶほうが良いでしょう。
簡単な表現を選択する
中国語で確実に考えを伝えるために2番目に考慮したい点は「簡単な表現を選択する」ということです。
例えば、当たり前ですが日本人は母国語の日本語においては、詳細な状況まで自由に表現もできます。
例:布団の中はとても冷たかったんで、それでずっと両足を抱え込んでました
そんなに難しいことを言ってはいないと感じることでしょう。これくらい中国語でも言えると思って中国語にある程度通じている一般的な日本人が翻訳するとこんな感じになります。
yīnwéi bèizǐ lǐ hěn lěng 。 wǒ bào zhe liǎngjiǎo
因为被子里很冷。我抱着两脚
これは典型的な日本人の中国語です。「布団」は「被子」(bèizǐ)だから、「布団の中」は「被子里」(bèizǐ lǐ)、「寒い」は「冷」(lěng)。
「布団の中がとても冷たい」は「被子里很冷」(bèizǐ lǐ hěn lěng)だなという組み立てになります。
さらに「抱える」は(抱:bào)だから「両足を抱え込む」は(抱着两脚:bào zhe liǎngjiǎo)ということになる。こんな風に日本人は日本語から中国語の構成を組み立てて長文を作ってしまいます。
中国人は表現の仕方がまるで違う
しかし中国人的には先ほどの中国語は「どうにか聞き取れるけど変な言い方」となります。実は中国人が表現するとこうなるのです。
bèi wōlǐ bīnglěng de wǒ liǎngtuǐ yīzhí quánqū zhe
被窝里冰冷的,我两腿一直蜷曲着
布団の中はとても冷たかったんで、それでずっと両足を抱え込んでました
全然違うと思いませんか?
夜寒かったから何をしたなどといろいろ伝えたいかもしれませんが、そんな時はシンプルに…
zuó tiān wǎn shàng hěn lěng
昨天晚上很冷
昨日の夜は寒かった
とだけ言うほうがいいかもしれません。短い文章というのは間違いなく確実に伝わるからです。
外国人は中国語で確実に考えを伝えたいとき謙遜(谦卑:qiānbēi)でなければなりません。自分は上手だと勘違いし、複雑なことを中国語で伝えようとしても、思ったように伝わらないことが多いのです。
確実にしっかりと自分の考えを伝えたい場面では、何年中国語を勉強していたとしても簡単な表現を心がけたほうがいいかもしれませんね。
ネイティブに話してもらう
最後に中国語で確実に考えを伝えるために、覚えておきたい点は「ネイティブに話してもらったほうがいい場合がある」という点です。
中国語の上達という観点からすると、間違ってでもどんどん中国語を話し、発音も文法も訂正してもらうほうが良いです。
しかしこの場面は確実に伝わることが重要だという場合は、日本人が中国語を話すのではなく、近くのネイティブに代弁してもらうほうがいいというわけです。それはなぜでしょうか。
ネイティブに話してもらうメリット
特定のケースにおいては日本人が中国語を話さず、ネイティブに話してもらったほうがいいのはなぜか、例を挙げて説明しましょう。
筆者が中国のケンタッキー(肯德基:kěndéjī)で紅茶を購入しようとしていた時のことです。注文くらい自分でもできると思ってカウンターの店員さんにこう言います。
wǒ yào hóngchá
我要红茶
正確なピンイン発音で伝えているつもりですが、店員さんはまったく聞き取れないという顔をしています。
隣の店員さんまで呼んで来て、なんども我要红茶と言いましたが、二人で「全然聞き取れないよね」という顔をしています。結局メニュー表の紅茶を指さしてどうにか注文できました。
後日この苦い経験を若い中国人の生徒に言うと、先生発音してみてと言われました。我要红茶と言うと「先生の発音は間違っていないが、おばちゃんたちには聞き取りにくいかもしれない」と言われます。
そのあと生徒と一緒にケンタッキーに行き我要红茶と言ってもらうと、難なく注文成功です。不思議なことに自分の発音とまったく同じように聞こえるのです。
つまり、中国語というのはネイティブ同士なら共有している微妙なイントネーションやリズムがあるということです。外国人がいくら正確にピンインを発音していても通じないことがあるわけです。
それだけ奥が深く学ぶのには面白い中国語ですが、確実に意思が伝わらなければいけないここぞという場面では、自分ではなくネイティブに話してもらう方がいい場合もあるというわけです。
言語というのは意味が伝わることが最重要
ここまで中国語で確実に考えを伝える方法を考えてきましたが、それでも二文字の動詞が出てこないこともあるでしょう。
簡単な表現ではなく、どうしても難しいことを伝えなければいけないときもあります。近くに助けてくれるネイティブがいないこともあるでしょう。そんな時はどうしたらいいでしょうか。
言語というのは所詮考えを伝える道具にすぎません。相手が中国人でも日本語が分かるなら日本語で、英語が分かるなら英語で、なんならボディーランゲージ(身体语言:shēntǐ yǔyán)で意思を伝えてもよいのです。
漢字は日本語と中国語の共通点だから、漢字を紙に書くのもいいでしょう。
例えば先ほどの「布団の中はとても冷たかったんで、それでずっと両足を抱え込んでました」をどう表現したらいいかわからない場合、紙に日本語で漢字を書くと簡単に伝わってしまうこともあります。
昨日 夜 寒い 脚 抱える 寝る
と書けば、中国人は「あ~、昨日の夜寒かったから、脚抱えて寝たのね」とわかってくれるでしょう。極端な話ではありますが、考えを伝えるには必ずしも言語を話す必要はないということです。
ジェスチャーゲームのように「寒い~」と表情や両手を体の前で震わせる動作をしたいり、その場で脚を抱え込んで見せるのもいいでしょう。
確実に考えを伝えるためには「何でもやってみる」というわけです。
まとめ
確実にこちらの意図を伝えなければいけない場面では、正確に考えを伝える事を最重要とし、中国人からするとかっこ悪くても、確実に伝わる2文字以上の動詞を使うことを意識するとよいでしょう。
さらに妥協できる点は大いに妥協して、簡単な表現を使って確実に意思を伝えることを心がけましょう。
場合によっては自分ではなく、ネイティブに話してもらう方が良いということを覚えておくことも重要でしたね。
上記の点さえ心がけていれば、きっと中国人はあなたの考えをどうにか理解してくれることでしょう。