中国で大変人気のテレビドラマに古典神奇小説を題材にした「封神演義」があります。
日本でも漫画化、アニメ化されていますが、中国では何度もテレビドラマ化され、一層知られるようになりました。なぜそんなに人気があるのでしょうか?
中国ドラマの魅力再発見!「封神演義」で知る伝統と現代
テレビドラマ「封神演義」はこんなにある
「封神演义」(fēng shén yǎnyì)は明時代に創作された長編神奇小説です。
扱われているのは「商」(Shāng 殷)の最後の皇帝「纣王」(ZhòuWáng)の統治が「周」(Zhōu)の「武王」(Wǔ Wáng)によって終わりを迎える前後の時代で、人間界、妖怪界、仙人界の様々なエピソードで構成されています。
この原作をもとに1927年に撮影された「杨戬梅山收七怪」(Yángjiǎn měishān shōu qī guài)以降、1980年代に4本、1990年代に1本、2000年代に4本、2010年から現在までに7本のテレビドラマ及び映画が制作されています。
しかも中国本土だけでなく、台湾や香港のテレビ局でも制作するほどの人気です。
その中でも評価の高いのが、1990年制作(全36話)の「封神榜」(fēng shén bǎng)、2006-2009年にかけて2部に分けて制作された「封神榜之凤鸣岐山」(fēng shénbǎngzhī fèngmíngqíshān)、
「封神榜之武王伐纣」(fēng shénbǎngzhī Wǔ WángfáZhòu)、2013年制作(全70話)の「封神英雄榜」(fēng shén yīngxiáongbǎng)です。
文学作品としては二流?
封神演义は元時代の「武王伐纣平话」(Wǔ WángfáZhòupínghuà)をひな形に、民間伝説などを加えて編纂されたようです。文学的にはあまり評価が高くないのですが、それにはいくつかの理由があります。
まず文体そのものの表現力が低いこと、歴史的に整合性が取れない内容を含むことなどが挙げられています。
また神奇小説ですから登場人物は人間だけでなく想像上の仙人、妖怪、道士、天界の神々なども含みますし、内容は空想の域を出ません。
作者については明時代の「许仲琳」(Xǔ Zhōnglín)と言われてはいますが、许仲琳自身の経歴が定かでないこと、彼以外の人物の名が上がることもあり、結局のところ誰かははっきりしていません。
とはいえ評価に値する分野もあります。
Cóng lìshǐ de jiǎodù lái kàn,
从 历史的 角度 来 看,
《fēng shén yǎnyì》bǐjiào zhēnshí de fǎnyìng le shànggǔ shíqī Shāng Zhōu dòuzhēng,
《封 神 演义》比较 真实 地 反映 了 上古 时期 商 周 斗争,
tā jùyǒu yǔ fēngjiàn zhuānzhì zhǔyì xiāng kànghéng de pànnì yìyì,
它 具有与 封建 专制 主义 相 抗衡 的 叛逆 意义,
hái fǎnyìng le hé fēngjiàn lúnlǐ guānniàn xiāng wéibèi de sīxiǎng
还 反映了和 封建 伦理 观念 相 违背 的 思想。
《fēng shén yǎnyì》gòusī shàng de zhòngyào tèdiǎn,shì gùshì xìng tèbié qiáng。
《封 神 演义》构思 上 的 重要 特点,是 故事 性 特别 强。
歴史的な観点から見ると『封神演義』は古代の殷と周の闘争を比較的正確に反映しており、封建専制主義に対抗する反逆の意義を持ち合わせている。
更に封建倫理観念に背く思想をも反映している。『封神演義』の構想上の重要な特徴はストーリー性が大変強いことである。
個性的なCGと衣装
たとえ原作が文学的に高い評価を得ていなくても、見て面白いならそのテレビドラマの人気が高まるのは必然です。
『封神演義』の内容は史実と空想の融合ですから、仙人や道士などの登場人物が次から次へと超自然の技を繰り出します。
ほかにも有名なシーンの中に「哪吒闹海」(Nézhānào hǎi)のエピソードで哪吒が「东海龙王」(dōng hǎilóngwáng 東海竜王)と闘う際の荒れ狂う波や洪水のCGがあります。
また三つ目を持ち、七十三変化を得意とする別名「二郎神」(Èrlángshén)の「杨戬」(Yáng Jiǎn)が得意技を繰り出し、ある時は別の人物とまったく瓜二つの姿になるとか、虫に姿を変えて飛んで行くなどのシーンもあります。
それを表現するCGのレベルアップにより、画像は一層面白みを増すようになってきています。さらに役者の衣装やメイクもドラマごとに個性的な特徴を出しています。
『封神演義』内の幾つかのエピソードは中国古代神話を扱う児童書にも出てきますし、勧善懲悪の結末がわかっているので子供たちにもわかりやすいのかもしれません。
九尾の狐と魔性の女
物語の中の主要人物「妲己」(dájǐ)はその美しさのために殷の纣王が寵愛した妃ですが、纣王を唆して暴虐の限りを尽くしたため、中国では魔性の女の筆頭にあげられています。
彼女にのり移って悪事を行わせたのが千年生きる九尾の狐で「狐狸精」(húlijīng)と言います。そのためこれに因んで、狐狸精といえば現在でも「男性を誘惑する悪女」を指す語として用いられています。
女優の范冰冰は2006年にテレビドラマで、2016年には映画版で二度同じ妲己を演じています。
過去の作品の中にはネット配信されていて視聴できるものもありますから、見比べてみるのも面白いかもしれませんね。