中国料理はおいしいですね。しかし中国に行けば本場の中国料理が食べられると思って期待していくと予想していたものとは全く違うものが出てきます。なぜでしょうか?
それは日本人がこれぞ中国料理と思っているもののほとんどは、中国のものではないからです。
中国料理と思っているが実は違う料理
目次
日本の中国料理の歴史
日本の中華料理の基礎を作ったのは、以前「料理の鉄人」という番組に出ていた中華の鉄人、陳健一の父親、陈建明(chénjiànmíng)と日本中華界の重鎮、周富德(zhōufùdé)です。
陈建明は中国四川で料理人として働き、その後日本に渡りました。戦後まだ中華料理が定着していなかった日本でしたが、彼が高級ホテルで四川料理を日本人の口に合うようにアレンジして提供するうちに、それが日本の中華料理として定着したのです。
周富徳は広東人の父を持つ在日2世です。横浜中華街で修行を積みながら日本風にアレンジした広東料理を編み出しました。
日本の中華料理はこの二人の発明によってできたと言っても過言ではありません。
中国にはない中国料理
日本人は彼らが編み出した中華料理をとってもおいしいと感じますが、本場中国に行くと日本で食べなれている中華料理はありません。中国人から言わせると「そんなの中華料理ではない」からです。
日本人が中国のものと勝手に思っている中華料理をいくつか例を挙げましょう。
エビチリ
(干烧虾仁:gānshāoxiārén)
中華料理の代表のようにさえ思われているエビチリは、陳健民が編み出した完全なる日本の料理です。
四川料理は辛いので、辛い味付けという点は共通点ですが、四川はおろか中国全土にエビチリは存在しません。そもそもエビチリのチリソースは中南米のチリです。中華料理というよりもむしろ中南米料理でしょう。
天津飯
(天津饭:tiānjīnfàn)
天津の人は天津飯という食べ物を知りません。ドラゴンボールの登場人物としか思っていないでしょう。そもそも中国料理にはとろみをつけたアンをかけるという習慣がないのです。
中華丼
(中华盖饭:zhōnghuágàifàn )
ウズラの卵が貴重な中華丼ですが、「中華」と銘打っていながら中国には存在しません。日本人が勝手に中国をイメージしたどんぶりなのです。あくまでも日本の中華街で人気が出たので中華丼と言われているに過ぎません。
冷やし中華
(凉拌面:liángbànmiàn)
そもそも中国人は冷たい食べ物を食べません。「冷たいものを食べさせる=人殺し」とみなされることもあるくらいで、お店が冷たい麺を出すなどご法度です。
冷やし中華も夏には冷たいものを食べたい日本人の好みに合わせて生み出された料理というわけです。
ちゃんぽん
(烩菜面条:huìcàimiàntiáo)
ちゃんぽんの発祥地は中国ではありません。横浜中華街でもありません。長崎中華街です。長崎ちゃんぽんと言いますが、まさにちゃんぽんはれっきとした日本の料理なのです。
ちなみに同じ理由で皿うどんも中国で食べることはできません。
中国の物ではあるが日本風なもの
最後に中国料理ではありますが、中国人から言わせると日本人に魂を売ってしまっている中華料理を取り上げましょう。
麻婆豆腐
(麻婆豆腐:mápódòufu)
日本の麻婆豆腐は中国人から言わせると、あんなの中国料理ではありません。なぜならほとんど辛くないからです。
本場の麻婆豆腐は甘辛いなんてものではなく、麻辣(málà)、つまりしたが舌がビリビリと痙攣するほど辛いのです。ほとんどの日本人は一口食べたら口から火を噴くことでしょう。
焼き餃子
(煎饺:jiānjiǎo)
日本人にとって餃子は焼き餃子です。ですが中国人にとって焼き餃子というのは邪道なのです。アメリカ人が「sushi」と言いながら食べているカリフォルニアロールを日本人が邪道と感じるのと同じです。
日本人の口に合う本場中華料理は?
上記のように日本人が勝手に中華料理と思っているもののほとんどは中国にはありません。もしくは中国人からすると本場の物ではありません。
中国には中国人が勝手に日本料理と思っている、豚骨うどんや、激辛しゃぶしゃぶなどが存在します。でもそれを中国人は日本料理と思いながらおいしく食べて、幸せな時間を過ごしています。
確かに日本の中華料理は偽物ですが、日本人がおいしいと感じているのであればそれでいいのかもしれませんね。