北京語(北京话:běijīnghuà)さえ身に着けてしまえば、中国全土のどこにおいても問題ないことをお伝えしました。
しかし同じ中国語圏である香港(香港:xiānggǎng)では、中国標準語である北京語を話さないほうがいいのです。なぜ話さないほうがいいのでしょうか?
香港では北京語を話してはいけない
目次
香港で使われている言語
香港はもともとイギリス領でしたが1997年に中国に返還されました。よって中華圏でありながら主に使われている言語は、北京語ではなく、英語(英语:yīngyǔ)と広東語(广东话:guǎngdōnghuà)です。
もちろんいまでは中国に返還されているので、香港でのアナウンスは英語と広東語に加え、北京語でもなされます。
香港人は中国語が話せるの?
年配者でない限り話せます。それは1997年に中国に返還されてから学校の必須科目として北京語が教えられているからです。
香港の方は広東語と英語が母国語ですが、北京語も聞き取れますし、話もできます。ですが、率直に申しますと香港の人は北京語が好きではありません。
香港人はなぜ北京語が嫌い?
香港人の多くは北京語を話せますが、話したがらないですし、他の人が北京語を話すと露骨に嫌な顔をします。なぜ香港人が北京語を嫌うのでしょうか?2つの理由があるようです。
bùxiǎnggěizhōngguózhèngfǔguǎn
1、不想给中国政府管。
中国政府に管理されたくない
zàixiānggǎngshuōběijīnghuà de , zhǐshìzhōngguódàlù de lǚkè
2、在香港说北京话的,只是中国大陆的旅客。
香港で北京語を話すのは中国大陸から来た旅行客だけ
中国政府に管理されたくない
香港人が北京語を嫌う一つ目の理由を見ていきましょう。
香港人はいままでイギリス文化の元、平和に生活していました。ジェントルマンのマナーを重んじる文化の中で生きていたのです。商業方式は民主主義の自由経済でした。中華圏でありながらイギリス風の生活を楽しんでいたのです。
ところが中国に返還されてからというものの、徐々に中国の共産主義の考え方、利益第一主義の考え方が入るようになりました。当然香港人は中国の影響に反感を感じ、同時に入ってきた北京語に反感を感じるようになったわけです。
そうです。香港人はこうした「政治的背景ゆえに」北京語を嫌っているのです。
中国人旅行客のふるまい
香港人が北京語を嫌う別の理由は、「北京語を香港で使うのが大陸から来た旅行客だけだから」です。
中国の旅行客は香港で、唾を吐き、大きな声で話し、並んでいる列に割り込みをすることも。そのような旅行客のジェントルマンではないふるまいに香港の方は呆れています。
これは香港人の問題かもしれませんが、香港人が接客をするとき中国人に対しては露骨に態度が違います。
英語で何かを尋ねたお客さんには親切に応対するのに、中国北京語で尋ねてきたお客さんには、冷たく接するのです。例を挙げましょう。
北京語で話した場合
あるとき日本人である筆者は、旅行カバンをもって香港のジャスコで買い物をしようと思いました。大きなカバンが邪魔だったのです。そこで総合受付に中国語でこう尋ねました。
不好意思。我想买东西。把我的行李三十分钟可以保管吗?
申し訳ない。買い物したいので、30分旅行バックを預かってもらっていいですか?
香港人総合受付の対応は、嫌な顔を露骨に表し、手を横に振り「ダメだダメだ!」という反応です。
では質問です。その後日本語で話すとどうなったでしょうか?
日本人に対する反応の違い
ダメもとで日本語でいい直しました。
わたしは日本人なんです。買い物したいから荷物預かっていただけませんか?
総合受付の方は日本語を聞き取れませんでしたが、私たちが日本人であることは分かってくれました。すぐに対応が変わり、荷物を預かってくれたのです。
そうです。香港では中国からの旅行客と間違えられてしまわないために、日本人は北京語は話さないほうが良いでしょう。英語ができるのであれば英語を話すのが最善です。
香港ビジネス界でも
これはビジネスのために香港に出張するときも同じです。中華圏ではありますが、香港でビジネスをするのであれば、現状北京語はあまり役立ちません。よって勉強する必要はないでしょう。
むしろ英語が流暢に話せるほうがいいでしょう。彼らの母国語であり、中国人に間違えられなくて済むからです。
中国出張・北京語はどこでも通じるの?
中国にはたくさんの方言があります。中国出張になって感じる不安は「自分が勉強してきた北京語(普通话:pǔtōnghuà)は北京以外の場所でも通じるのだろうかという点かもしれません。
それでは、北京語はどれほど中国国内で通じるのでしょうか?
中国方言の違いは大きい
まずは中国の地方方言がどれほど北京語と違うかを見ていきましょう。北京語と地方方言言語の違いは、東京弁と大阪弁の違いどころではないのです。
上海の方が話す方言、上海话(shànghǎihuà)や、広州や深セン、香港の方が話す广东话(guǎngdōnghuà)は日本語と韓国語くらいの違いがあるといっても過言ではありません。
よって北京語だけを勉強して、それら方言が強い区域に出張に行くと、地元の方が普段使っている方言はおそらく全く聞き取れないでしょう。
しかし心配ありません。中国出張に行く人はどの場所に行くとしても、北京語だけを勉強しておけばいいのです。
北京語の浸透度
中国出張になった時、方言の強い上海でも、深センでも、四川語という方言がある内陸都市の成都でさえも北京語だけ勉強していけば、何の問題もありません。
理由を3つ挙げましょう。
diànshìtái zhǔ chírén dōu yòng
biāozhǔn de pǔtōnghuà
1,电视台主持人都用标准的普通话。
テレビ局のキャスターはいつもきれいな北京語を話している
zhōngguózhèngfǔ tuīdòng
rénmínyòng Běijīnghuà
2,中国政府推动人民用北京话。
中国政府が国民に北京語を話すように勧めている
yǐjing shàngbānzú jīběn
shan gdōuhuì shuō pǔtōnghuà
3,已经上班族基本上都会说普通话。
すでにサラリーマンのほとんどは基本的に北京語が話せる
北京語さえできれば、何の問題もないこれらの理由を分析してみましょう。
中国全土でいつも聞かされてる北京語
家でテレビをつけた時だけでなく、バスに乗った時も地下鉄になった時も、あらゆる生活シーンで中央台(zhōngyāngdiànshìtái)のニュースが流れています。
「今日は習近平がドイツを訪問した」などの国際ニュースだけでなく「重慶観音橋に吉野家進出」などの地方ニュースも、すべてニュースキャスター(台主持人:diànshìtáizhǔchírén)によるきれいな北京語で伝えられます。
普段使うのは地方の方言でも、中国全土のテレビから流されてくるのは北京語なので、中国全土にいる人は子どもから老人に至るまで、自分では北京語が話せなくても、北京語を聞き取れます。
つまり中国出張の場所がどこになったとしても、北京語さえ話していれば、中国人すべてに自分の意思を伝えることができるというわけです。
中国政府の教育成果
中国政府は小中高大学のすべてで「学校内では北京語しか話してはいけない」と定めています。
今の若者たちは、すべて学校の国語の授業で北京語を学んでおり、学校だけでなく、親と会話するときも北京語で会話するという家族も少なくありません。北京語が話せないおじいちゃんおばあちゃんとだけ地方の方言を使う子どももいます。
方言が強いと言われる地方都市も10年前と比べると、普段の生活でも北京語を話す人が増えてきました。街中で流れている宣伝も北京語ですし、地方都市でイベントがあるときも司会者がつかうのは方言ではなく北京語だからでしょう。
北京語だけを勉強しても大丈夫なのだろうかと心配する必要がないどころか、何十年後かには地方言語は消滅するかもしれない危機に直面しているのです。
サラリーマンの会話はすべて北京語
今や中国のサラリーマン(上班族:shàngbānzú)は、ビジネス会話では北京語を話すのが礼儀となっています。
中国企業には様々な地方都市から社員が集まります。会社内の一部の人たちがその土地の方言で話すと他都市の社員は理解できないので、ビジネスマナーとして北京語を話すのが暗黙の了解なのです。
北京語を勉強すればすべてよし
上記3つの理由により、中国国内のどの都市に行くにしても、北京語、つまり中国語の普通語だけを勉強すれば何の心配もいりません。
むしろ外国人である日本人が地方言語を話しているほうが怪しいので、ビジネスのために中国語を学びたい場合は上海語や広東語などを勉強する必要はないでしょう。