三国志の関羽雲長と言えば2mを超す巨漢で赤兎馬に乗る長いひげの勇者ですが、その武勇と忠義が讃えられ、後代になると関帝として祭られるようになりました。
今でも商売繁盛を願う中国人にとって関帝信仰は欠かせません。
商売繁盛を願って-中国人の関帝信仰
财神到
cáishéndào「福の神が来た」
中国のほとんどの店や会社には「财神贴纸」(cáishéntiē zhǐ)が貼られています。上部には「财神到」と書かれ、長いひげの「财神爷」(cáishényé)と呼ばれる福の神が描かれています。
中国の福の神信仰の対象として祭られている人物は、東西南北と中央の各方角をつかさどる「五大财神」(wǔdàcáishén)と、南西、北東、南東、北西をつかさどる「四方财神」(sìfāng cáishén)の合計9人です。
その中で最も信仰されているのが西の方角をつかさどり30歳以上の人の金運を握るとされる「武财神:关公」(wǔ cáishén:Guān gōng)、つまり関羽です。
中国人は福の神の関羽を「关公」また「关帝」(Guāndì)と呼んでいます。
财神贴纸は「节庆用品店」(jiéqìngyòngpǐndiàn 節慶用品店)や「居家用品店」(jūjiāyòngpǐn diàn 日常生活用品店)といった商店、またネットでも販売されています。
また「关公像」(Guān gōng xiàng)という関羽の立像も大小さまざまなものが販売されていて、会社や商店に置かれています。
関羽雲長、神様になる
忠義を重んじた関羽の生き方は後世の人に影響を与えました。特に宋時代以降の王朝は、忠君と愛国の模範として関羽を教材にするために贈り名を与えてその地位を高め、官吏や国民に教育を施したのです。
彼の死からほぼ900年後に始まり清王朝に至るまで、関羽に与えられた贈り名は徐々にレベルアップしていき、遂に17世紀には「忠义神武关圣大帝」(zhōng yìshén wǔ guān shèngdàdì)と称されるまでになったのです。
Guān gōng shì Zhōnghuá mínzú de rénlún diǎnfàn,hé dàodé kǎimó,
关 公 是 中华 民族的 人伦 典范,和 道德 楷模,
bèi Rújiāchēng wéi“wǔ shèng”,Dàojiā zūnchēng“dì jūn”,Fójiào fèng wéi“qiélán púsà”,
被 儒家 称 为 “武 圣”,道家 尊称 “帝君”,佛教 奉 为 “伽蓝菩萨”,
shāngjiè fèng wéi“wǔcáishén”,mínjiān zūn wéi“wànnéng zhī shén”。
商界 奉 为 “武财神”,民间 尊 为 “万能 之 神”。
Jìn liǎng qiān nián de tuīchóng yǔ chuánchéng,Guān gōng yǐ cóng píngmín chéngwéishénshèng,
近 两 千 年 的 推崇 与 传承,关 公 已 从 平民 成为 神圣,
qí zhōng yì rén yǒng jīngshén yǐ chéngwéi yì zhǒng xìnyǎng。
其 忠 义 仁 勇 精神 已 成为 一 种 信仰。
関公は中華民族の人倫の模範であり、道徳の手本である。儒者からは「武聖」、道家からは「帝君」と尊称され、仏教では「伽藍菩薩」と信じられ、商業界では「武財神」、民間では「万能の神」として崇められている。
二千年近くにわたる尊敬と伝統により、関公は既に平民から神聖なものへと引き上げられ、その忠実さ、義理堅さ、思いやり、勇敢さといった精神は一種の信仰になっているのである。
福の神になった理由
伝説によると関羽は兵馬の管理や算術に長じていたと言われています。しかも信用を重んじ、正義感が強く、義理堅かったので、後代の商人たちから崇められるようになりました。
やがて商人たちは関羽を自分たちの守護神として信仰し始めるようになり、同時に富を招く福の神とみなすようになっていったのです。
関帝信仰を奉じる人々は今でも「初五」(chūwǔ 旧正月の五日)になると供え物をし、爆竹を鳴らし、紙銭を焼いて、新しい一年の間、関帝のご加護があるように、そして商売が繁盛するようにと願うのです。
赤色が基調な理由
京劇での関羽の顔は赤色です。财神贴纸の基調色も赤色です。本当に関羽の顔が赤ら顔だったのかどうかはともかく、どうしてこんなに赤色にこだわるのでしょうか?
実は中国では古代から赤色には邪気を払う意味があるとされていました。また赤色は忠義、忠誠を表わす色でもありました。
それで関羽が神格化されるようになって以降、その人格の魅力的な部分、猛々しさや勇敢さ、忠義などの精神に対する畏敬の念を含めて赤色を基調としているのです。
今も残る各地の関帝廟
たくさんいる福の神の中でも関帝は最も影響力が大きく、信仰されている地域も最も広いと言われています。
関帝を祭っている寺が関帝廟ですが、関羽の出身地がある山西省をはじめ、河南省、山東省、陕西省、甘粛省、湖北省、更に南方の沿岸地域には、観光地としても有名な関帝廟がいくつもあります。
また華僑によって世界各地のチャイナタウンにも関帝廟が作られているので、神戸や横浜では観光名所になっていますね。
さらに香港、台湾、東南アジアの商店、一般家庭、企業、官公庁にさえ関帝信仰に関係する装飾品が置かれています。
「どちらかといえば自分は無宗教だ」と公言する中国人の生活の中に、実は色濃く影響力を与えている関帝信仰。関羽の死後、これほど影響力を大きくしていったというのは興味深いですね。