日本から中国に旅行に言った人がタクシーに乗ると「中国のタクシーは安いなぁ」と感じます。
実際中国のどの都市のタクシーも日本と比べる圧倒的に安いのですが、この安い中国タクシーが今消滅の危機に面しています。なぜでしょうか?
中国タクシーは、安いのに廃れかけている
目次
中国のタクシーはいくら?
首都北京のタクシーの起步价(qǐbùjià) 、つまり初乗り料金は13元です。日本円にして200円ほどでしょう。
すこし地方の都市となると10元(160円)、さらにその近郊の小都市となると5元(80円)で乗れてしまうこともあります。日本人からすると、こんなに安く目的地に運んでくれるのでありがたいと感じます。
中国のタクシーが安い理由
どうして中国のタクシーはそんなに安いのでしょうか?2つの理由を中国語で述べてみましょう。
理由①
yīnwèi qítā jiāotōng gōngjù dōu hěn piányi
因为其他交通工具都很便宜.
中国のタクシーが安い1つ目の理由は「其他交通工具都很便宜」だからです。
因为(yīnwèi)というのは「なぜならば」という意味で、何かの理由を述べるときの言葉です。
其他(qítā)というのは「その他」という意味、交通工具(jiāotōng gōngjù)は漢字を見て意味が分かると思いますが、「交通手段」という意味になります。便宜(piányi)は「安い」という意味ですよね。
つまり「他の交通手段の料金も安いから」タクシーもある程度張り合うために、料金を安くせざるを得ないという事情があります。
中国のタクシーの運転手という仕事も日本と同じく低賃金として知られています。
理由②
yīnwèi rénshì fèi hé jiǎnchá fèi hěn piányi
因为人事费和检查费很便宜.
中国のタクシーが安い2つ目の理由は「人事费和检查费很便宜」だからです。
人事费(rénshì fèi)は人件費のことで、检查费(jiǎnchá fèi)は漢字の通り、タクシーの「検査費用」のことです。
つまり中国は日本と比べると「人件費と検査費用が安い」のでタクシー代金が抑えられるというわけです。
【日本と中国のタクシーの違い】
日本のタクシー会社は安全にお客様を乗せるために、毎日洗車と室内清掃をして、頻繁に車の検査をするでしょう。
ところが中国のタクシーが清掃されるのは「見た目が汚れたとき」、検査するのは「車に異常が出たとき」です。そのため日本よりも圧倒的に管理費用が抑えられます。
運転手の平均月収も日本の5分の1ほどなので人件費もかなり抑えられます。中国のタクシーが安い理由、理解できますね。
タクシーが廃れる理由
とっても安く使い勝手のよい中国のタクシーですが、今存続の危機に面しています。なぜですか?それは打车软件(dǎchē ruǎnjiàn)なるものが近年現れているからです。
この打车软件というものを使うともっと安い料金で個人タクシーが利用できるので、最近のタクシーは商売上がったりという状況に直面しています。
打车软件とは
打车软件とは何でしょうか?中国語の意味から解説しましょう。
打车(dǎchē)というのは「車を拾う」という意味になります。软件(ruǎnjiàn)は「ソフトウェア」という意味です。
つまり打车软件とは、スマホに搭載できる「個人タクシーを捜すソフト」のことです。
車の持ち主は事前に身分証明書を使って打车软件に自分と自分の車を登録しておきます。そして空いている時間に自分の車で街中を走ります。
車を拾いたい人はどうしますか?スマホ内で打车软件を立ち上げて、近くを走っている登録済みの車を探します。車を選ぶと数分後に個人の車がやってきて目的地まで運んでくれます。
スマホ上に料金が事前に表示されるので、料金のことで車の提供者ともめることはありません。利用料金はタクシーの半額ほどで済むことが多く、最近の若者はほとんどタクシーを使わず、打车软件を利用しています。
打车软件の種類
打车软件を運営している会社は中国にたくさんあります。一番有名なのは滴滴车(dīdī chē)という会社です。滴滴车は車の登録者が多いうえ、身分証明がしっかりしているので比較的安心して利用できるからです。
中国の個人タクシーの安全性
日本の個人タクシーは国への届出は必要ですが、中国では必要ありません。打车软件に登録しさえすれば、誰でも好きなときに個人タクシーの運転手になれてしまいます。
日本人の女性の感覚であれば、素性が分からない男性が運転する個人の車に乗るのって怖いですよね。
でも中国人女性は性犯罪に巻き込まれることなどほとんど心配していないのに驚きます。中国人女性は一人でタクシーや個人タクシーを捕まえ、後部座席ではなく助手席に座ります。
女学生が学校に遅刻しそうなときは、オートバイで自分を運んでくれる知らないおじさんと料金交渉をして、そのおじさんの後ろにまたがって学校にいきます。
このように中国というのはあまり身の安全を気にしない国なので、タクシーを脅かす個人タクシーという商売も成り立つのかもしれませんね。
今日は日本のタクシーに比べて価格が安いので、ついつい利用しがちなタクシーについてのお話です。
タクシー料金
タクシーの初乗り料金は、都市ごとに違います。
北京の場合
例えば北京と上海では、5:00~23:00の初乗り料金(3km以内)はガソリン税1元を含めると14元です。
それが23:00~5:00だと、北京で通常時間帯の20%増し、上海ならガソリン税を含めて18元(ガソリン税を含む)になります。
深圳では車両の色を赤、緑、青と分けており、それぞれ走行する区域と料金が異なります。天津のタクシーは3kmの初乗り料金がガソリン税込で9元です。
地方の場合
地方都市の中にはガソリン税をまだ徴収していない所もあります。初乗り料金は5~8元と開きがありますが、やはり夜は20%前後で割増料金になります。
タクシーメーターに注意
タクシーにはもちろん走行距離と料金を表示するメーターがついています。
客が乗り込んで目的地を伝えるとそこからカウントするのですが、わざとメーターを動かさず、走り始める運転手もいます。
こうしたタクシーは無認可の運転手の場合が多く、少し厄介です。この場合は、メーターを動かすようはっきりと意思表示しなければなりません。
Shī fu,wǒ yào kāi piào,dào le mù dì dì jiù gěi wǒ dǎpiào ba。
师 傅,我 要 开 票,到 了 目 的 地 就 给 我 打 票 吧。
運転手さん、私領収書が必要なので目的地に着いたらレシートをくださいね。
走行メーターはレシート発行と連動です。
それでも、中にはメーターを動かさずに走り続け、前に乗った客のレシートをこちらに渡して済ませてしまう運転手もいます。
最近は減ってきたものの、運転手の座席と後部座席を金属の格子で区切っているタクシーもあります。目的は防犯のようですが、あまりいい気持ちはしないものです。
タクシー関連中国語
タクシーに乗って出かける
「タクシーに乗って出かける」は「打的去」(dǎ dī qù)と言います。
Mā,nǎi nai yào kàn bìng,wǒ men zěn me zǒu?
A: 妈,奶 奶 要 看 病,我 们 怎 么 走?
お母さん、おばあちゃん病院に行くって。私たちどうやって行くの?
Dāng rán dǎ dī qù。
B: 当 然 打 的 去。
もちろんタクシーで行くわよ。
Hǎo,nà wǒ xiàn zài jiù qù dǎ ge dī ba。
A: 好,那 我 现 在 就 去 打 个 的 吧。
それなら今行ってタクシーを呼んでくるわ。
タクシー運転手
「タクシー運転手」の職業名は「出租车司机」(chū zū chē sī jī)ですが、話しかける時は「师傅」(shī fu)と呼びます。
Shī fu,wǒ men yào qù zhōng xīn yī yuàn。Bié jí,zhù yì ān quán a。
师 傅,我 们 要 去 中 心 医 院。别 急,注 意 安 全 啊。
運転手さん、私たち中央病院に行きたいんです。急がなくていいですから安全運転でお願いします。
タクシーを運転する「开出租车」
「タクシーを運転する」は「开出租车」(kāi chū zū chē)と言います。
助手席の前には運転手の顔写真と名前、タクシー会社名が表示されたプレートがあります。
ただし、大抵の車は二人一組で夜昼交代の勤務にしています。夫婦で組むこともあれば、それ以外の人と組むこともあります。夫婦の場合は、ご主人が夜勤、奥さんが日勤にして、日常生活も分担しています。
Yào ràng wǒ shàng dà xué,wǒ bà ba hé mā ma,tiān tiān kāi chū zū chē,
要 让 我 上 大 学,我 爸 爸 和 妈 妈,天 天 开 出 租 车,
pīn mìng de zhuàn qián。
拼 命 地 赚 钱 。
僕を大学に行かせるために、父と母は毎日タクシーを運転して一生懸命お金を稼いでくれています。
サービスの質は?
サービス面では、今後も改善が必要です。
スーツケースに一苦労
スーツケースを乗せてもらおうとしても、運転手が降りてこないことがあります。さらにトランクを開けると、運転手の個人の荷物が三分の一以上の場所を占めていることもあり驚かされます。
すすんで車を降りて、こちらのスーツケースをトランクに乗せてくれるだけで、「この運転手さん、いい人だな。」なんて思ってしまいます。
禁煙?喫煙?
禁煙マークを大きく助手席前のダッシュボードの置いていながら、運転手自身がぷかぷかとタバコを吸っていることもあります。
タクシーの強引な客引き
タクシー専用レーン
北京首都空港のように国際的な空港や、大きな駅「火车站」(huǒ chē zhàn)にはタクシーが客をのせる専用レーンが作られています。
数年前まで、こうした公共の場所では、多くのタクシー運転手が降り立ったばかりの客を乗せようと強引な客引きをしていました。
場合によっては法外な値段を外国人に要求したり、土地勘のない客だと思うとわざと遠回りをして儲けようとしたりする悪質な運転手が多かったため、新しい空港や駅舎を建設するのに合わせて、このようなレーンを設けたのです。
それでも地方都市の空港や駅付近では、こうした客引きが今も普通に行われています。
悪質な運転手も
留学生時代のガーナ出身の同級生は、北京空港から本来それほど遠くない予約済みのホテルまで随分遠回りをされ、結果400元を騙し取られてしまいました。
乗車拒否
ある都市では、タクシーを呼んで乗り込み、運転手に行先さえ告げればそのまま走ってくれます。
ところが、別の都市ではタクシーが止まったら乗り込む前に、まずドアを開けて、運転手に行きたい場所を告げなければなりません。
Wǒ men yào qù xī zhàn。
A: 我 们 要 去 西 站 。
私たち西駅に行きたいんだけど。
Wǒ bù gǎn。
B: 我 不 敢 。
俺は行かないよ。
この町ではこうした乗車拒否が普通です。とはいえ運転手の素養も、国際的な大都市から順に向上しているようです。何年か経てば、また状況が変化していくかもしれませんね。
タクシーを利用する場合の中国語
旅行で使える中国語のテキストで、比較的簡単な会話を学ぶことができます。
たとえば、宿泊したホテルから観光地に行くときに、タクシーを利用する場面。
多くのテキストで、以下のような会話事例が紹介されています。
「请到故宫去」
(故宮に行ってください。)
「明白了」
(わかりました。)
「到故宫,要多长时间?」
(故宮までどれくらいの時間がかかりますか?)
「十分钟左右」
(10分くらいです)
一見したところ、とてもスマートで、実用的な会話事例に思えますね。
文章も決して難しいものではありませんし、それでいて要領を得ています。
自分が行きたい目的地をはっきり伝え、所要時間を聞き出すことにも成功しています。
しかし、上記の会話が成立したところで、何の問題もなく目的地に着けるかというと、中国においては必ずしもそうとは言い切れません。
それはなぜでしょうか?
日本のタクシーと中国のタクシーは違う?
それは、「日本のタクシーと中国のタクシーは違う」からです。
中国ビジネスに関わる方々はよくご存知かもしれませんが、中国屈指の経済地区に深圳という地区があります。
日本をはじめ、諸外国の企業が数多く進出しているこの地区では、人の出入りも激しく、駅前のタクシー乗り場はつねに長蛇の列となっています。
駅から離れたオフィスや工場などに向かう場合、この駅前のタクシー乗り場でタクシーに乗り込むことになるのですが、これがたいへん勇気のいる「大仕事」なのです。
なぜかというと、運転手との価格交渉が必要になるからです。
日本のタクシーはメーターの走行距離をもとに料金が決まります。
中国のタクシーも、メーターを装備していますし、ほとんどのタクシー運転手は走行と同時にメーターを倒してくれます。
しかし、筆者の経験から申しますと、深圳や一部の地方都市では事情が違いました。
メーターがあるのに、それを使おうとしない運転手が数多く存在するのです。
さてそうなると、冒頭の問題が起こってきます。
何の問題もなく目的地に着けるか?
「上記の会話が成立したところで、何の問題もなく目的地に着けるか?」ということです。
メーターを使わない運転手に、「いったいいくら取られるんだ?」と、目的地までの道のりをビクビクしながら乗車することになるわけです。
これはたいへん心臓に悪い経験です。
そして、目的地だけを告げて、あとは何も言わずに乗車していると、まず間違いなくぼったくられます。
実際、筆者が勤めていた企業の中で中国語ができない日本人社員の方は、毎回相場の2~3割増のタクシー料金を支払わされ、会計係に注意されていました。
タクシーの値段交渉
つまり、中国の一部の都市においては、「トラベル中国語」にある「タクシーの乗り方」の会話事例が通用しないのです。
ちなみに、ビジネスパーソン向けに上記の会話事例を直しますと、以下のようになります。
「到○○地区的××工厂,要多少钱?」
(○○地区の××工場まではいくら?)
「六十块」
(60元だね)
「不会吧,上次我只支付五十块!」
(そんなバカな。前回は50元しか払わなかったぞ!)
こんな具合に値段交渉バトルを繰り広げ、運よく折り合いがついたら乗車→目的地到着となるわけです。
出張などで中国のタクシーを利用することが多いビジネスパーソンの方々、向こうの言い値でぼったくられないために、「ビジネスで使える中国語」と「価格交渉バトルに打ち勝つ度胸」を身につけてみてはいかがでしょうか?