千数百年前から現代まで伝わっている伝統的民間食品の一つが豆腐の発酵食品「腐乳」です。
美味で栄養価が高い反面、独特な臭いと香りで中国人のみならず東南アジアの人々に愛されています。地方によって様々な種類と色がありますがどんな食品なのでしょう?
腐乳(fǔrǔ)中国語で知る歴史ある発酵食品
目次
腐乳–fǔrǔとは?
腐乳は「豆腐乳」(dòufǔrǔ)、「酱豆腐」(jiàngdòufǔ)とも呼ばれ、資料によると紀元5世紀ごろには作り始められていた豆腐の発酵食品です。
明時代に各地に広まり、その頃からすでに東南アジア各国に輸出されていました。カビ菌による発酵を経て、豆腐のタンパク質吸収率が上がり、ビタミン類がより多くなります。
加工の際には塩、砂糖、黄酒、麹などを加えて味を付けますが、その分量は地方によって異なり、仕上がりの色や味は様々です。
胃腸の働きを良くし、食欲増進、消化促進の働きがあると言われています。
Fǔrǔ fù hán zhíwù dànbáizhì,jīngguò fājiào hòu,dànbáizhì fēnjiě wéi gèzhǒng ānjīsuān,
腐乳富 含 植物 蛋白质,经过 发 酵 后,蛋白质 分解 为各 种 氨基酸,
kě zhíjiē xiāohuà xīshōu。
可 直接 消化 吸收。
Fǔrǔ de chéngfenzhōng xīn hé wéishēngsù B zú de hánliàng hěn fēngfù,
腐乳的 成分 中 锌和 维生素 B族的 含量 很 丰富,
cháng chī bùjǐn kěyǐ bǔchōng wéishēngsù B shí èr,hái néng yùfáng lǎonián xìng chīdāi。
常 吃 不仅 可以 补充 维生素 B12,还 能 预防 老年 性 痴呆。
Fǔrǔ de dànbáizhì shì dòufǔ de liáng bèi,qiě jí yì xiāohuà xīshōu,suǒyǐ bèichēng wéi dōngfāng nǎilào。
腐乳的 蛋白质 是 豆腐的 2倍,且极易 消化 吸收,所以 被 称 为 东方 奶酪。
腐乳は植物性タンパク質を豊富に含んでいます。タンパク質が発酵を経てアミノ酸に分解されるので直接消化吸収できます。
腐乳の成分の中では亜鉛とビタミンB類の含有量がとても多く、常食することでビタミンB12を補充できるだけでなく、老人性痴ほう症を予防することもできます。
腐乳のタンパク質は豆腐の二倍で、その上極めて消化吸収しやすいので、東方のチーズとも呼ばれています。
腐乳の種類
白腐乳(bái fǔrǔ)
代表的なものが「桂林腐乳」で、宋時代には既に有名になっていました。桂林の三大伝統特産品の一つにもなっています。
红腐乳(hóng fǔrǔ)
最も伝統的な腐乳の一種で、その名の通り表面は赤い色をしています。原材料の選別から始まって、元となる原料ができるまでに30近い工程を要します。
それをカメに入れた上に良質の「白酒」(báijiǔ)(トウモロコシや甘藷を原料にした蒸留酒)を加え、さらに数か月寝かせてようやく完成です。
青腐乳(qīng fǔrǔ)
「臭豆腐乳」(chòudòufǔrǔ)とも言われる最もポピュラーな腐乳です。安徽省出身の「王致和」(WángZhìhé)が発明したとされています。
その他の種類
玄米を加えるものや、もち米・米・粟などを原料にした醸造酒「黄酒」(huángjiǔ)を加えるもの、ゴマを加えるもの、バラの花を加えるものなど。
何を添加するか、何で味付けし、どのくらい発酵させ漬け込むかで、各地方に様々な味わいの腐乳があります。
王致和の青腐乳
豆腐屋の倅が科挙に挑み…
1669年、王致和は科挙試験を受けるため都に上りましたが結果は不合格。諸事情も重なり故郷に帰るに帰れず、次の回の試験を目指して都にとどまることにしました。
とはいえ生活費を稼がなくてはなりません。豆腐屋をしていた父親のそばで幼い時から豆腐作りを学んでいた彼は小さな場所を借り、毎日作った豆腐を街頭で売り歩くことにしました。
でも夏の盛りに売れ残った豆腐は、暑さのためにすぐにかびてしまいます。それである日、売れ残った豆腐を小さく切り、陰干ししてから小さなカメに塩漬けしてみました。
青腐乳は偶然の産物
その後、科挙の準備のため勉学に励み、しばらく店を閉めていたためにカメに漬けた豆腐の事はすっかり忘れてしまいました。
秋になり、そのことを思い出してカメの蓋を開けてみると、その途端ものすごい臭気が鼻を突きました。取り出してみると豆腐は既に青味がかった灰色です。
王致和はおそるおそる一口味見をしてみました。するとどうでしょう。あの臭気を補って余りあるほどの濃厚な香りが口いっぱいに広がり、その美味なことといったら!
ご近所さんに配ってみると誰もが大絶賛!「王致和の臭豆腐」という名前は一気に世間に知られるようになりました。
ところが、そもそもの目的の科挙は落第続き。それで王致和は遂に覚悟を決めて臭豆腐で開業することにしたのでした。
西太后の食卓にも
「王致和南酱园」(WángZhìhénánjiàngyuán)という店名で始めた商売でしたが、それほど経たない間に各地に広まっていき、改良を重ねるうちに宮廷で供されるまでになりました。
清王朝末期には西太后の日々のおかずの一品として供されましたが「臭豆腐」という名を好まなかった西太后から「御青方」(yù qīngfāng)という名を賜りました。
こうして今に至るまで約300年、青腐乳は愛されてきたのです。
今ではスーパーで瓶詰された様々な種類の腐乳を簡単に手に入れる事ができます。「王致和」という老舗メーカーもあります。ぜひ一度ご賞味ください。