黄土高原は中国北西部に位置する黄土が蓄積してできた広大な地域です。そこには約4500年前から「窑洞」と呼ばれる洞穴式住居があります。
2013年の統計によると何と今でも25万件以上が現役で、主に農民が約三千万人住んでいるとされています。
黄土高原の生活:現役で使われる窑洞の秘密
目次
窑洞とは
窑洞の成り立ち
窑洞は山西省、陜西省、河南省、河北省、内モンゴル自治区、甘粛省、寧夏省など黄土高原(huángtǔ gāoyuán)に属する広い地域に分布しています。
こうした地域では黄土地質の深さが大変厚いため、土を彫りぬいて住居にするのに適していたようです。
山や崖に造られた窑洞とその眼下に広がる田園、そして周囲の自然の景観は、人の郷愁を誘う本当に美しい風景です。
近代の窑洞
とはいえ近年の経済発展により窑洞を離れて町で住む人が増え、新たに窑洞を作る人が減ったため、窑洞を全く初めから建造する過程を見る事は現在では大変難しくなっています。
修理をしている最中の窑洞を見る事は出来ますが、それらも先祖から受け継いだ窑洞を修理しているので、その建築方法については口承か資料からしか知る事ができません。
現存する窑洞の調査によると、一つ穴の窑洞の一般的サイズは幅3.3~3.7m、高さ3.7~4m、奥行きは7~8mで、大きなものでは奥行きが20mほどのものもあります。
古くからある窑洞は土質が固く、有機物の含有量が少なく、耕作に適さない土を用いて作られた建築物です。
自然の洞窟
原始人が最初に住んでいたのは自然の洞窟でした。
それが窑洞を建設できるようになったので、野獣に襲われる心配なく安全に暮らせるようになり、定住生活を始めるようになりました。そのおかげで農業が大いに発展したと言われています。
それで昔の勤勉な農民の一生の夢は、一生懸命に働いて幾つかの窑洞を所有して妻を迎え、夫は畑で農作業をし、妻は窑洞で家事をこなしながら子供たちを育てることだったのです。
Yáodòng jiàn zàihuángtǔ gāoyuán de yán shān yǔ dìxià,
窑洞 建 在 黄土 高原 的沿 山 与 地下,
shì tiānrán huángtǔ zhōng de xué jū xíngshì,yīn qí jùyǒu dōng nuǎn xià liáng,
是 天然 黄土 中 的穴居 形式,因其 具有 冬 暖 夏 凉,
bú pòhuàishēngtài,bú zhànyòng liángtián,jīngjì shěng qián děng yōudiǎn,
不 破坏 生态,不 占用 良田,经济 省 钱 等 优点,
bèi dāngdì rénmín qúnzhòng guǎngfàn cǎiyòng。
被 当地 人民 群众 广泛 采用。
窑洞は黄土高原の山沿いと地下に建てられます。
天然黄土の中の穴居形式で、冬は暖かく夏は涼しいこと、生態系を破壊しないこと、
肥沃な田畑を占用しないこと、経済的で節約になるなどのメリットがあるために、地元の人々の多くが広範に採用しています。
窑洞の形式
窑洞は大まかに三つの種類に分類されます。
崖窑(yáyáo)
崖や山に沿って掘ったもの。山の斜面の角度や高度が条件に合えば何階建てかの階段式もあります。
地窑(dìyáo)
山のない所で地下に掘り下げた形式のものです。まず大きな四角い穴を地面に掘り、その後四方に向かって各部屋を掘りぬくので、四合院の形になります。
箍窑(gū yáo)
アーチ形に土をかぶせた独立した形のもので、煉瓦と土をアーチ形に作っていくものもあります。山や崖がなくても作る事ができ、平屋形式もあれば複数階建てのものもあります。
これらの中では山や崖に沿った崖窑が一番多く使用されています。
室内装飾
窑洞は必ず陽光が入るように太陽に向かって入口を作ります。壁には石灰を少なくても2~3回塗って白くするので、室内は明るくからっとしています。
壁の一方にはかまどを作り、煙は排気口を伝って室内を暖める働きもあります。
かまどの周囲三方には「炕围画」(kàngwéihuà)と呼ばれる絵を貼りますが、それは装飾の意味だけでなく、煙や煤で壁が汚れるのを避けるためでもあります。
室内の美観のために窓は凝った造りにし、どの窓にも外から色鮮やかな切り絵を貼ります。
その切り絵は窓の形や室内の色に合わせて選んだものを配置し、室外から見ても鮮やかで、窓から差し込む陽光によって室内が独特な色の光で照らされるように考えられています。
窑洞を観光資源にしている町や村もありますから、機会があればぜひ一度体験してみてください。
都市部に出て働く人が増える中、窑洞で暮らす人は以前と比べて減ってきています。とはいえ現在でも窑洞で暮らしている人は少なくありません。
窑洞の老朽化や、高齢化の波で村として存続するのが難しい中での窑洞の維持などいろいろな問題があるようです。
過疎の村を窑洞で観光化
2015年、河北省委員会宣伝部が主催する「美しい河北・最も美しく特徴ある建築物」の活動で専門家とネット投票がありました。
その総合評議の結果、最終的に選ばれた10か所のうちの一つに入ったのが「窑洞宾馆」(yáodòng
bīnguǎn)です。
河北省の尚義県十三号村は年間を通じて村に居住する村民がわずか86戸189人で、そのうちのほとんどが都市部で働く現役世代の留守を預かる高齢者でした。
一人あたりの年間収入は約2100元(日本円で約3万5700円)で、それまでは県全体の中でも重点的に支援が必要な貧しい村でした。
そんな十三号村が使わずに置かれている土地を活用し、県立森林公園のそばにあるという立地を活かして2014年に建設したのが「窑洞宾馆」だったのです。
上品で気持ちの良い環境、消防設備などを完備した窑洞形式のホテルを呼び物の中心にし、レストラン街や駱駝観光、馬車観光なども楽しめる休暇村に生まれ変わりました。
そして十三号村には、何と年間2万4千人の旅行客が訪れ、村民の平均収入も1200元アップしたのです。
このニュースは窑洞を維持する必要のある過疎地域の中でも、良い結果を見た一つのモデルケースとして大々的に取り上げられました。
倒壊の危険が迫る窑洞
2013年7月、まれに見る大雨が長期間、黄土高原中央部に位置する陕西省延安市を襲いました。7月初旬から後半までの約二十日間に通常のこの時期に降る5倍の降水量があったのです。
その結果、約9万5千戸の窑洞が倒壊するか重大な損害を受け、10万人に近い人々が家を失いました。災害の被害に遭った延川県にある29の村では村にあるすべての窑洞が損壊してしまいました。
山に沿って建てられていた新しい形式の4-5階建ての窑洞はほぼすべて倒壊し、崩れた土砂が絶え間なく山の斜面を滑り落ち、周辺では樹木を押しつぶす音が響き渡りました。
Yáodòng fēnbù qūyù yǐ jīngjì qiàn fādá de zhōngxībù wéizhǔ,
窑洞 分布区域以 经济 欠 发达的 中 西部 为 主,
hěn duō pínkùn hù jūzhù de tǔ yáo,niánjiǔ shīxiū,
很 多 贫困 户 居住的土 窑, 年久 失修,
yóuyú bàoyǔ hóngshuǐ、huápō níshíliú děng zìrán zāihài zàochéng yáodòng fángwū bīnlín dǎotā,
由于 暴雨 洪水、滑波 泥石流 等 自然 灾害 造成 窑洞 房屋 濒临 倒塌,
guǎngdà yáo jū rénmín qúnzhòng suíshí miànlín zheshēngmìng wēixiǎn。
广大 窑 居 人民 群众 随时 面临 着 生命 危险。
窑洞が分布している地域は経済発展が不十分な中西部が中心になっています。
大変多くの貧困家庭が居住する土製の窑洞は、長年にわたり修理されないままでいます。
暴雨による洪水や山崩れの土石流などの自然災害が窑洞の建物倒壊の切迫した危険を引き起こしているため、広範な地域の人々はいつでも生命の危険に直面していることになります。
先祖代々窑洞で暮らし、自らも20年間生活していた窑洞が今回の大雨で完全に倒壊してしまった一住民は、この伝統的な居住形式に疑問を抱くようになったと言います。
窑洞は外気が零下20度にもなる冬ですら日光のさす部屋であれば摂氏10度と暖かく、夏は逆に涼しく快適で、現地の人々に最も適した居住形式だとずっと言われてきました。
その窑洞がまさか倒壊するなど夢にも思わなかったのです。しかも村の多くの高齢者はこれほどの大雨は今まで一度も経験したことがないと言います。
果たして、このまま引き続き窑洞に住み続けるべきか、どこかへ移住すべきなのか、住民は難しい選択を迫られています。
窑洞倒壊の原因
原因は窑洞の老朽化だけではないようです。黄土高原は主に「湿陷性黄土」(shī xiànxìnghuángtǔ)と呼ばれる特殊な土で構成されています。
「湿陷性黄土」は浸水すると土の結合が破壊され、顕著に変形する性質があります。大雨が続くと土壌は極度の飽和状態になり、山全体が地滑りを起こす危険があるのです。
さらに、大多数の住民が窑洞を建設するさいに、力学的な知識がないまま、経験だけに頼っていることも原因の一つです。
専門家によれば両側の外壁は少なくとも2m以上の厚みが必要ですが、多くの窑洞では壁の厚みが50cmもない場合があり、一度大雨になれば当然崩れてしまうというのです。
貴重な窑洞を今後も保存してくために、厳格な建築基準を国として早急に設定し、その知識を住民にも教育する必要があると学者たちは警鐘を鳴らしています。