中国の傘と雨ガッパ:知っておきたい歴史と現代の活用法
傘の歴史
ある日留学生仲間のBさんが「雨傘を貸してくれませんか?」とやって来ました。
言われてみれば、北京など華北地方は雨が少ないのでそれほど傘を使いません。季節によっては数か月、ずっと雨が降らないこともあるので傘を持っていなかったのでしょう。
中国の発明者
中国で最初に傘を発明したのは、土木建築と大工の祖と称される春秋時代の「鲁班」(Lǔ Bān)の妻「云氏」(Yún shì)と言われています。
当時の人々は、雨の日や夏の酷暑の際には屋根のある小さなあずまやの下にとどまっているだけで、なかなか外出しようとしませんでした。
ちょうど鲁班は、数軒のご近所のためにあずまやをいくつか建設中でしたが、大風や大雨ともなればやはり人々が自由に外出することはできませんでした。
Lǔ Bān de qīzi zhè shí zhào zhe tā zhàngfu suǒ jiàn de tíngzi de yàngshì,
鲁 班 的 妻 子 这 时 照 着 她 丈 夫 所 建 的 亭 子 的 样 式,
zhì chéng le yī ge zhòngliàng qīng de zhǔ tíngzi qiě dài yóuzhǐ——
制 成 了 一 个 重 量 轻 的 竹 亭 子 且 带 油 纸 ——
zhè jiùshi zuì zǎo de yǔsǎn。
这 就 是 最 早 的 雨 伞。
Lǔ Bān de qīzi duì Lǔ Bān shuō
鲁 班 的 妻 子 对 鲁 班 说
“nǐ jiànzào de fángzi bùnéng bān qǐ yídòng,
“你 建 造 的 房 子 不 能 搬 起 移 动,
wǒ de sǎn,néng dài tā dàochù zǒudòng bìng kěyǐ zài gèzhǒng jìjí lǐ dōu kěyǐ yòng。”
我 的 伞,能 带 它 到 处 走 动 并 可 以 在 各 种 季 节 里 都 可 以 用 。”
鲁班の妻はこの時、夫が建てているあずまやの様式に合わせて、重さの軽い竹に油紙を付着させたあずまや、つまり最初の雨傘を作りました。
鲁班の妻は鲁班に言いました。
「あなたの建てた家は運んで移動させることができないけど、私の傘ならこれをもってどこにでも行けるし、どの季節にでも使えるわ。」
こうして発明された傘は、その後、日本、朝鮮、ベトナム、タイ、ラオスなどの東アジアへ広がり、それぞれの国で独自の文化をはぐくんでいきました。
傘と権力
また中国の前漢時代、傘は皇帝や権力者が持つ権勢を表わすとされました。
皇帝や高官が地方視察に赴く際には、傘で乗り物やかごを覆いました。
それは「庇荫百姓」(bìyìn bǎixìng)といい、「民衆を保護するもの」である事を表わそうとしたとされています。
また朝服や帽子と同様、文官たちの位にしたがって使う傘の色が定められていました。
これが宋の時代になると、皇帝が使う傘の色は赤と黄の二色、それ以外の者は青色を使うように定められました。
中国で人気は雨合羽
現代では、徒歩だけでなく、自転車や電動自転車、モーターバイクといった乗り物が庶民の足になったので、傘だけでなく雨合羽が重宝されるようになっています。
とりわけ、国土の広い中国では通勤通学の距離がかなりあるので、傘だけでは雨から身を覆えません。
合羽の種類
それで一般的に使われているのが「自行车雨衣」(zìxíngchē yǔyī 自転車用雨合羽)や「电动车雨衣」(diàndòngchē yǔyī 電動自転車用雨合羽)です。
どちらも前かごから人の頭部と体全体、それに後部までをすっぽり覆ってくれるカッパです。
折りたたんで「电动自行车」(diàndòng zìxíngchē 電動自転車)の荷物入れに常時入れておくことのできるコンパクトな物なので、ほとんどの人が利用しています。
安全面に疑問
ところが、安全面対策があまり厳重になされていないために重大な事故も発生しています。
最近流行のタイプが、「加大 加长 加厚」(jiā dà jiā cháng jiā hòu 大きくなって、長くなって、厚くなった)という売り出し文句にあるような商品です。
裾の巻き込まれに注意
自転車に乗ると、風で合羽の裾がひらひらと広がってしまいますよね。
それがラッシュ時に車と車の間を通り抜けようとする際に、車やトラックのバンパーや、もともと割れていたミラーやライト部分に引っかかるなどして転倒する事故が後を絶ちません。
こんな見出しを載せた新聞記事がありました。
Wànwàn méi xiǎng dào,yí jiàn xúncháng de yǔyī,jūrán chéngwéi duó mìng de“shā shǒu”
万 万 没 想 到,一 件 寻 常 的 雨 衣,居 然 成 为 夺 命 的 “杀 手”。
まったく思いもよらない事だが、一着の普通のカッパがなんと命を奪う犯人になってしまった。
既に雨は止んでいたのですが、電動自転車用雨合羽を着たまま走行中の一台の電動自転車が、運転手もろとも突然転倒してしまいました。
恐ろしいことに雨合羽が後部車輪に巻き込まれ、コントロールできなくなっただけでなく、巻き込みと同時に強い力で引っ張られ、運転者が窒息して死亡してしまったのです。
こうしたケースは後を絶たないので、いずれは交通安全対策を考慮した雨合羽の登場があるものと期待したいところです。