一言でホテルといっても、中国語ではさまざまな表現があります。
中国のホテルの選び方:星の数だけじゃない!快適なホテルを見つけるコツ
中国のホテルの種類
酒店(jǐu diàn)、饭店(fàn diàn)、宾馆(bīn guǎn)、旅馆(lǚ guǎn)、招待所(zhāo dài sǔo)などなど。
いろいろありすぎて、どこがどう違うんだろうと、考えちゃいますよね。その実、中国人も明確に区別していないようなのです。
なので今回は、ちょっとそのへんを追求してみようと思います。
大規模ホテル
大規模なホテルは「酒店」(jǐu diàn)」「饭店(fàn diàn)」「宾馆(bīn guǎn」と呼ばれます。
酒店
現在の一般的な解釈は、「酒店(jǐu diàn)」は宿泊やレストラン、ゲームや娯楽、ショッピング、ビジネスサービス、宴会・会議など総合的なサービスを提供するホテルを指し、
同義語に「宾馆」「旅馆/旅店/旅社(lǚ guǎn/ lǚ diàn/ lǚ shè)」「客店(kè diàn)」「客栈(kè zhàn)」があげられます。
饭店
では、「饭店(fàn diàn)」はどうでしょう。これは、宿泊と飲食をメーンとしたサービスを提供する宿泊施設をいうようです。
「酒店」と「饭店」の使い分けは地域で異なることもあるようで、香港、マカオ、マレーシア、シンガポールでは「酒店」、台湾、中国大陸では「饭店」を使うようです。
香港やマカオ、マレーシア、シンガポールといえば、西欧諸国の文化の影響も受けていますから、西洋式の本格的なホテルを指しているといえます。
外資系ホテル
外資系のホテルの名称を見てみましょう。
喜来登酒店 (xǐ lái dēng jǐu diàn) シェラトンホテル
丽思卡尔顿酒店 (lì sī kǎ ě dùn jǐu diàn) リッツカールトン
希尔顿酒店 (xī ě dùn jǐu diàn) ヒルトンホテル。
なお、ドバイの最高級ホテル・ブルジュ・アル・アラブを中国語にすると「迪拜帆船酒店(dí bài fān chuán jǐu diàn)」と「酒店」を使っていますね。
ただし、ユダヤ系イギリス人がオーナーのペニンシュラホテルは、香港は九龍半島の先端にあるからか「半岛酒店(bàn dǎo jǐu diàn)」といい「酒店」を使っています。
しかし北京の王府井にあるペニンシュラホテルは「北京王府饭店(běi jīng wáng fǔ fàn diàn)」と「饭店」を使っています。
中国系マレーシア企業が率いるシャングリラホテルは、香港は香港島のホテルは「港岛香格里拉大酒店(gǎng dǎo xiāng gé lǐ lā dà jǐu diàn)」で「酒店」を使っています。
北京は「北京香格里拉饭店(běi jīng xiāng gé lǐ lā fàn diàn)」とやはり“饭店”です。
中国系ホテル
一方、中国を代表するホテルはというと、孫文やソ連フルシチョフ首相、米国ニクソン大統領が泊まった清代創業の「北京飯店(běi jīng fàn diàn)」、
李鴻章、周恩来に加えアインシュタインやチャップリンも泊まった「浦江飯店(pǔ jiāng fàn diàn)」、
上海の「和平饭店(hé píng fàn diàn)」、と「饭店」ばかりですね。
酒店と饭店の使い分け
ここまでまとめてみると、大陸で中国を代表するホテルは「飯店」で、外資色が濃厚なホテルには「酒店」と「飯店」の両方が存在する、ということでしょうか。
外資系の「酒店」と「飯店」の違いは、改革開放後に建設されたホテルが「酒店」で解放前が「飯店」だという説もあります。
しかし「北京王府饭店」は1983年の開業ですから、必ずしもそうとはいえないようです。
宾馆と旅馆
「宾馆(bīn guǎn)」は、中国式の宿泊施設である「旅馆(lǚ guǎn)」の改革開放前の呼び名で、しかも大規模なものをいいます。
もう一つ、「宾馆」という名称は迎賓館から来ていますから、国内外の要人をもてなすぐらい豪華な「旅馆」であったことが想像できます。
今は一般旅客も泊まれるようになった「宾馆」といえば、各国の要人をもてなす「钓鱼台国宾馆(diào yú tái gúo bīn guǎn)」や、
国務院の「招待所(zhāo dài sǔo)」で在京のロシア関係者をもてなした「友谊宾馆(yǒu yì bīn guǎn)」があります。
「招待所(zhāo dài sǔo)」とは、会社や組織の職員やその家族、関係者のための宿泊施設です。
ホテルの規模
中国語のホテルを規模や施設で整理すると、酒店≧飯店≧宾馆>旅馆となるでしょうか。
「旅店(lǚ diàn)」や「旅舍(lǚ shě)」は「旅馆」の小規模な施設で、中国版のイン(inn)やゲストハウスに該当します。
酒店の名の由来
ところで、「“酒店”と書いて、なぜホテルなんだろう」と思ったことはありませんか?
かれこれ十数年前でしょうか。香港の大学で広東語を教えている現地の友人に聞いてみたら、飲食と宿泊ができるお店でも、「酒店」はもともと、食事よりもお酒の方がメーンのお店。
対する「饭店」は、食事がメーンだったそうで、その名残なんだと聞いたことがあります。
【日系ホテルは?】
ちなにみ、中国大陸に進出している日系ホテルはどうでしょう。
北京にあるホテル・ニューオータニは「长富宫饭店(cháng fù gōng fàn diàn)」、上海のオークラはガーデンホテル「花园饭店(huā yuán fàn diàn)」です。中国に合わせたのでしょうか。