寒く長かった冬が終わり、ようやく春になると、様々な花が咲き始めます。
桃にレンギョウ、ユキヤナギ…。そして花が終わると、白い綿毛が町中をふわふわと飛び始めるのです。これがいわゆる柳の花です。
春の訪れを告げる柳の綿毛:中国の風物詩とアレルギー問題
柳の綿毛
この白い綿毛を「柳絮」(liǔxù)と言います。これは正確には柳の花ではなく、柳の種子と種子の周りに生えた綿毛の事です。
柳の木の事は「柳树」(liǔshù)と言いますが、多くの中国人は「杨柳」(yángliǔ)とも呼びます。
日本人にもなじみ深い、長く枝垂れた枝は古来より文人たちの創作意欲を高めてきたようで、多くの文学作品に「柳絮」や「杨柳」が登場します。
Zài Zhōngguó de wénxué shàng,hǎo duō rén bǎ yáng hé liǔ hùn zài yìqǐ,
在 中 国 的 文 学 上,好 多 人 把 杨 和 柳 混 在 一 起,
jiào zuò yángliǔ,shīrénmen bǎ yáng hé liǔ tóng chūnguāng xiāng lián,
叫 做 杨 柳,诗 人 们 把 杨 和 柳 同 春 光 相 联,
dàn tāmen bǐxià de yángliǔ,shíjìshang shuō de dōu shì liǔ。
但 他 们 笔 下 的 杨 柳,实 际 上 说 的 都 是 柳。
中国文学において多くの人が楊と柳を混同しており、楊柳と呼んでいる。詩人たちは楊や柳を春の日差しに関連付けているが、彼らが書いた楊柳は実際のところ柳の木なのである。
「柳絮」が「ふわふわと風に流されるままに飛んでいくさま」から、この言葉には「移り気である事」「情が定まらないこと」という意味があるとされており、詩的表現でよく用いられています。
柳とポプラ
さてこの「杨柳」という語、「杨」と「柳」いう字を連結して表記しますが、「杨树」(yángshù)と「柳树」(liǔshù)の二つを指しているわけではありません。
柳
とりわけ古代中国の文学上で「杨柳」は、あくまでも枝垂れ柳を表わしています。
柳の花は単性で、雄花と雌花がありますが、それぞれに蜜腺があり、虫を引き寄せて花粉を受粉させる虫媒花です。
ポプラ
それに対して「杨树」とはいわゆるポプラの木の事です。じつはポプラもヤナギ科ハコヤナギ属で、同じ季節に柳の木とよく似た白い綿毛を飛ばします。
ポプラの花は柳の花とたいへんよく似ていますが蜜腺がないため、風の力を借りて受粉させるしかない風媒花です。
盛んな植林
1990年代以降、中国では国家戦略として生育の速い「杨树」を各地に植林してきました。
12年ほどで伐採して加工できるので、植林してから短期で収益を上げることのできる木として注目されたのです。
直径の大きな木はベニヤ板や家具に加工し、直径の小さな木は造紙、マッチ等にするようです。それで、長江流域や黄河流域を中心とした各地で「杨树」の林や並木道をよく見かけます。
「杨树」の並木道を見ると故郷を思い出すという大学生もいます。現在、春に見かける「柳絮」は、「柳树」の花ではなく、「杨树」のである場合が多い街もある事でしょう。
アレルギーの原因に
「柳絮」は大変軽く、最盛期には町中を真っ白にしてしまうほど飛ぶこともあります。それが地面に落ちて積もると、まるで雪が降ったかのように見えます。
雨が降ると一度は濡れますから地面に落ちるのですが、乾くとまたふわふわと飛び始め、それが埃などと混じると強烈なアレルギーを引き起こす原因にもなっています。
Sì yuè zhōngxún zuǒyòu,yángliǔxù màntiān fēiwǔ,
四 月 中 旬 左 右,杨 柳 絮 漫 天 飞 舞,
wàichū wǎngwǎng huì bèi liǔxù tuántuán bāowéi,yīfu shàng、liǎn shàng 、bāo shàng,
外 出 往 往 会 被 柳 絮 团 团 包 围,衣 服 上、脸 上、包 上,
lián jiémáo shàng dōu shì báimāngmāng de yípiàn。
连 睫 毛 上 都 是 白 茫 茫 的 一 片。
Guòmǐn tǐzhì de rén jiēchù huò xīrù liǔxù、yángxù、huāfěn děng wùzhì hòu,
过 敏 体 质 的 人 接 触 或 吸 入 柳 絮、杨 絮、花 粉 等 物 质 后,
róngyì yǐnqǐ liú bítì、dǎ pēntì、hūxī jícù děng zhèngzhuàng。
容 易 引 起 流 鼻 涕、打 喷 嚏、呼 吸 急 促 等 症 状。
4月中旬ごろになると、柳の綿毛が空一面を飛びます。外へ出ると、ややもすれば服の上、顔の上、カバンの上まで綿毛にとり囲まれるかのようで、まつ毛の上さえ、まさに一面が真っ白になるほどです。アレルギー体質の人が柳の綿毛やポプラの綿毛、花粉などの物質に触れたり、それらを吸い込んでしまったりすると、鼻水やくしゃみ、呼吸が荒くなるなどの症状を容易に惹き起こす場合があります。
今の所、外出時はメガネをかけ、マスクをするくらいしか綿毛を防ぐ方法がありません。
古代からこれほど文化人たちの叙情をそそった綿毛なのに、現代人からは少し厄介者扱いされているのは可哀そうな感じもしますね。