中国の吸いふくべの歴史と発展

    1. 中国歴史・民族

    中国人の友人が、中国医学の専門医から吸いふくべ治療を含む治療方法を学んでいました。

    彼女は、中国医学での「拔罐」は一般のマッサージ店で行われているものとは全く違うと主張し、本当に治療したいのなら正しい方法で行わなければだめだと言います。

    中国の吸いふくべの歴史と発展

    吸いふくべの歴史

    発祥は西暦前6~2世紀

    中国吸いふくべ療法「中医拔罐疗法」(zhōng yī bá guàn liáo fǎ)は歴史のある治療法の一つです。

    1973年に湖南省長沙市で発掘された《五十二病方》(wǔ shí èr bìng fāng)という書物があります。

    この書物は現存する最古の中国医学書と言われ、春秋戦国時代、つまり西暦前6~2世紀の間に完成したとされています。

    この書物の中で吸いふくべは「角法」(jiǎo fǎ)とも呼ばれています。なぜなら、当時の医師は動物の角を用いて吸引の道具としたからなのです。

    さらに病の治療方法についても詳しく説明されています。こう考えると「角法」はなんと万里の長城を建設させた始皇帝で有名な秦の時代より早くからある典型的な治療方法というわけなのです。

    竹を使った吸筒法

    隋から唐の時代になると、吸引道具として動物の角ではなく竹筒を用いるようになります。これは当時としては大変画期的なことでした。

    竹材はどこにでもあり、価格も安く、入手しやすいという利点がありました。しかも材質が加工しやすいうえに、強い吸引力を持っていましたから、治療効果が劇的に向上したのです。

    宋、金、元の時代には竹が完全に動物の角に取って代わるようになりました。それでこの治療法は「角法」とはいわず「吸筒法」というようになりました。

    陶器への移り変わり

    やがて時代が進み清の時代になると、今度は竹ではなく陶器の吸引器が用いられ始め、治療法も「拔罐」(bá guàn)と呼ばれるようになります。そして現代ではガラス吸引器が主流となっているのです。

    家庭でも吸いふくべ

    近年は「真空拔罐」(zhēn kōng bá guàn)がよく見られるようになっています。とりわけ家庭用として販売されている器具はこの手のものが多いようです。

    アルコールに火をつける手間が省けますし、皮膚の状態を見ながら吸引の強弱を調整する事が出来ます。とはいえ火をつけて使用する「火罐」(huǒ guàn)と比較すると温熱効果は期待できませせん。

    医療としての吸いふくべ

    さて、マッサージ店で行われるものと中国医学の治療法として行われるものとではどのような違いがあるのでしょうか? まず、施術者の資格から異なります。

    Wǒ xiǎng kāi yī ge zhōng yī tuī ná、guā shā、bá huǒ guàn de diàn,

    A: 我 想 开 一 个 中 医 推 拿、刮 痧、拔 火 罐 的 店,

    xū yào shén me yàng de shǒu xù?

    需 要 什 么 样 的 手 续?

    私は中国医学のスイナ、かっさ、吸いふくべの店を開きたいと思っていますが、どんな手続きが必要ですか?

    Rú guǒ nǐ yǒu yī ge zhōng jí yǐ shàng de àn mó shī zhèng jiù kě yǐ,

    B: 如 果 你 有 一 个 中 级 以 上 的 按 摩 师 证 就 可 以,

    hái xū yào qù gōng shāng jú zhù cè,bàn lǐ yíng yè zhí zhèng hé shuì wù dēng jì。

    还 需 要 去 工 商 局 注 册, 办 理 营 业 执 照 和 税 务 登 记。

    もしあなたが中級以上の按摩師の資格を持っているならそれで大丈夫です。さらに工商局へ行って名簿に載せてもらい、営業許可証の事務手続きを行い、税務登記をしなければなりません。

    Yào shi xiǎng yào de shì zhì liáo de huà,jiù gāi zěn me bàn?

    A: 要 是 想 要 的 是 治 疗 的 话,就 该 怎 么 办?

    もし治療しようとするならどうすればよいでしょうか?

    Zhè yàng de huà,jiù yào yǒu yī shī zī gé zhèng cái kě yǐ。

    B: 这 样 的 话,就 要 有 医 师 资 格 证 才 可 以。

    そういう場合は、医師免許がなければなりません。

    衛生面

    清潔で衛生的な方法を重視する中国医学の医者「中医」(zhōng yī)ならば、使用するごとに容器をアルコールで拭いて消毒してくれます。

    細かく調整

    また、体の部位と調子の悪い程度によって用いる容器の大小を調整します。

    大きい容器で吸引力が少し弱めの際は時間を長めに、小さくて吸引力が強い容器なら短めに、というように時間も調整します。

    そして皮膚の色がどのくらいの時間で、どのような色に変化するかに注目し、体のどこがどのように具合が悪いのかを判断します。

    さらに容器を皮膚から外す時は、マスクをします。容器の中に溜まった空気には体内から出てきた老廃物などがあり、それを自分自身が吸いこんでしまわないためだそうです。

    施術後

    医師は施術後、患者の皮膚の色や状態をさらに詳しく観察します。そして水疱のようなものが出来ている場合は、その処置も丁寧に行ってくれます。

    こうした治療は、確かに娯楽施設の趣のあるマッサージ店で行われているものとは似て非なるものです。

    中国に行ったらぜひ試してみたいですね。

    説明:一位の女性は中国式按摩を受けており、背中には泡があります。

    吸いふくべ!痕になってもやめられない理由とは?

    ある日、中国人の友人が我が家に来ました。彼女がかぶっていた帽子を取った顔を見てびっくり!彼女の額には、直径3cmほどの紫色の丸い型の痕があるではありませんか。

    「どうしたの?」と聞くと、「風邪だったから自分で吸いふくべをした」と言います。

    中国で人気の吸いふくべとは

    彼女のように、我流で吸いふくべをしている人を街中でよく見かけます。

    老若男女を問わず、額の中央や、首筋から背中にかけての部分に、くっきりとした赤紫や青紫色の痕をつけているのです。

    夏場ともなれば、若い女性は肌を露出した服装を身につけますが、この吸いふくべの痕を周囲の人に見られることは、いっこうに気にならないようです。

    中国では吸いふくべを一般的に「拔罐」(bá guàn)といいます。

    街角でよく見かける看板には「按摩」(àn mó)、「保健」(bǎo jiàn)、「足疗」(zú liáo)などがあります。

    これらは、いわゆるマッサージ店なのですが、そこで必ずと言っていいほどメニューに入っているのが吸いふくべ、つまり吸い玉療法です。

    方法

    大抵はガラス製の容器を使用します。アルコールを燃やして発火させた着火器をガラス容器に近づけ、容器内が真空に近くなった時を見計らって肌に吸い付かせます。

    すると、皮膚はかなりの力でガラス容器の中に吸い上げられます。こうすることで、意図的に皮下の浅い筋肉部分を充血させるのです。

    効果

    結果として、その部位の皮膚、経絡、つぼを刺激することになり、体内毒素の排出と活発な新陳代謝を促すといわれています。

    拔罐」は薬を用いない、自然物理生態療法として古代より庶民に親しまれています。道具としてはガラス容器のほかにも、竹筒、ビニール製などでできたものがあります。

    Jīn tiān nǐ men yào zuò shén me?

    A: 今 天 你 们 要 做 什 么?

    今日は何になさいますか?

    Tā yào zuò jīng yóu kāi bèi,wǒ yào zuò guā shā hé bá guàn。

    B: 她 要 做 精 油 开 背,我 要 做 刮 痧 和 拔 罐 。

    彼女は背中のアロママッサージ、私は刮痧(かっさ)と吸いふくべをしてください。

    Hǎo,qǐng nǐ men shāo děng yí xià,wǒ men yào zhǔn bèi zhǔn bèi。

    A: 好,请 你 门 稍 等 一 下,我 们 要 准 备 准 备 。

    わかりました、準備してきますので少しお待ちください。

    吸いふくべは痛い?

    日本の整骨院の先生の中には、痛くなるほどする必要はないとおっしゃる方もおられますが、中国のマッサージ店の「拔罐」は強烈です。

    背中に吸いふくべをする際、マッサージ師は先に、客の背中にアロマオイルのような液体を塗ります。

    そのあと、一つ目のガラス容器を吸着させ、そのまま背中じゅうをごしごしとこすります。客が「痛い」と言ってもお構いなしです。

    【痛いところが悪いところ】

    その理由は「通则不痛,痛则不通」(tōng zé bú tòng,tòng zé bù tōng)という考え方にあるようです。「痛くない所はめぐりがよく、痛い所はめぐりが悪い」というのです。

    それで、客が痛いと感じる所こそ、しっかり治療すべき場所だと思うようです。続いて、首と肩の周辺、背中から腰にかけて吸いふくべを吸着させ、10~15分ほどそのままにしておきます。

    足つぼマッサージの際にも、足裏に吸いふくべをする場合があります。

    【色で判断】

    時間がくるとマッサージ師は、ポンッ、ポンッと小気味よい音を立てながら容器を外してくれます。

    自分では鏡を見なければわかりませんが、背中は丸い形の容器の痕で、まるで水玉模様のようになっています。

    この容器を外した後の肌の色で、その場所がどれほどこっているか、めぐりが悪いかがわかります。

    それほど悪くないなら肌の色はあまり変化がないか、明るいきれいな薄赤色をしています。悪い状態の場合は、赤紫色、紫色、青紫色の順で表れます。

    時には、水疱ができてしまうこともあります。こうした治療後の肌の状態で、その人の健康状態を知るというのが吸いふくべの特徴です。

    吸いふくべでデトックス

    吸いふくべをしたあと24時間はシャワーをしないように言われます。体の状態があまり良くない時には、肌が熱を持ち、痛くてたまらないこともあります。

    それでも、この方法で薬を飲まずに風邪を治すという中国人がかなりいます。

    中国には日本のような風呂がなく、多くの場合はシャワーですので、こうした方法で「排毒」(pái dú)、いわゆる体の毒気を出すようです。

    お店選びは慎重に

    ただし、マッサージ店で行っている吸いふくべは、正統的な中国医学における吸いふくべとは異なるようです。

    正しい知識に基づいて行っているとは言えない店やマッサージ師がいるのも実情です。

    やはり信頼できる店かどうかを、中国人の友人に訪ねてから行く方が賢明かもしれませんね。

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