西欧諸国から来た留学生が、授業で苦労させられるのが中国語の教科書の暗記です。
ある先生方は「とにかく暗記して!」 と言います。英語なども含め、言語の検定試験の勉強方法として、暗記は必須とされているのです。
中国教育の根幹:暗記式学習の実態とその影響
中国の教育は暗記式
語学学校では?
語学の場合、教科書の暗記は語感を養うためとされています。とはいえ、すべての語学教師が盲目的な暗記を薦めるわけではありません。
上手な教え方をされる先生方は、「多听多读多写多说」(duō tīng duō dú duō xiě duō shuō)と励まして下さいます。
遠い中国にまで来て語学を学ぶのは、中国語を流暢に話せるようになるためだからです。ところが、受験対策の語学勉強となると、暗記式の勉強が強調されます。
子どもの教育
子供たちは小学生の頃から、子供らしく遊ぶ暇がないくらい勉強させられます。
毎日の授業時間は長く、家に帰っても膨大な宿題が待っています。その上、暗記しなくてはならない教材があります。
よく暗記を求められるのが、宋の時代に完成した伝統的啓蒙教材, 「三字经」(Sān zì jīng)です。
三文字ずつ、韻を踏む形式で、文学、歴史、哲学、天文地理、礼儀などの教訓的な内容を表現しており、全体では1,440文字あります。
子供用には挿絵と解説付きの本などが出版されており、中には子供が2歳の頃からこれを暗記させる親がいます。
賛否両論の暗記方式
しかし、別の親はネット上で、こんな苦情を言っています。
「小学一年生になる子供は、夏休みにかなりの量の宿題が既にあるにもかかわらず、その上『三字经』を全部暗記しなければならない。
大人である自分でさえ、初めの幾つかの句を正確に読むのが難しかった。ましてこんな小さな子供が、これを読んで理解するなんて!
盲目的な暗記に何の意味があるの?」
というのです。
中学以降の暗記
高校受験を控えた中学生が覚えなければならない単語は約1000語、センテンスは約350と言われています。
大学受験に臨む学生ならば、英語以外にも歴史、64種類もの古典文学、果ては数学に至るまで、とにかく暗記しなければないとされているのです。
社会人であっても、資格などの検定試験に臨む場合、試験勉強のための暗記に取り組みます。
暗記に悩む中国人
当然のことですが、誰もが容易に暗記できるわけではありません。それでネットには教科書の暗記についての悩み相談がたくさん上がっています。
Kuài kǎo shì le,yào bèi hěn duō shū,jì bu zhù bèi shū de nèi róng。
快 考 试 了,要 背 很 多 书,记 不 住 背 书 的 内 容。
もうすぐテストなのでたくさんの本を暗記しなくてはならないのですが、本の内容を覚えていられません。
bèi guò jiù wàng le,zěn yàng cái néng jì bèi de kuài,yòu jì de láo?
背 过 就 忘 了,怎 样 才 能 既 背 得 快,又 记 得 牢 ?
暗記してもすぐに忘れてしまいます。どうすれば速く暗記して忘れないでいられますか?
Qián xiē tiān kàn le yí dàng gōng wù yuán kǎo shì jié mù,
前 些 天 看 了 一 档 公 务 员 考 试 节 目,
fā xiàn lǐ miàn dá tí de rén dōu gēn dá àn yì mú yí yàng,kěn dìng shì bèi chū lái de,
发 现 里 面 答 题 的 人 都 跟 答 案 一 模 一 样,肯 定 是 背 出 来 的,
bù rán zěn me kě néng yí zì bú cuò,yǒu méi yǒu gāo rén zhǐ diǎn xià,
不 然 怎 么 可 能 一 字 不 错,有 没 有 高 人 指 点 下,
yǒu nǎ xiē shū shì bì bèi de。
有 哪 些 书 是 必 背 的。
何日か前に公務員試験の要項を見た時に気づいたんですが、回答者の答えは解答とまったく一致していました。一字の間違いもないなんて絶対に暗記していたに違いありません。どなたかどの本が暗記必須か教えていただけませんか?
Quán guó dǎo yóu zhèng kǎo shì yào bèi nǎ xiē shū ya?
全 国 导 游 证 考 试 要 背 哪 些 书 呀?
全国旅行ガイド免許の検定試験にはどの本を暗記しなければなりませんか?
三番目の質問の答えには筆記試験用に4冊、口答試験用に3冊の教科書が挙げられていました。という事は、この試験を受ける人は7冊もの本を暗記するのでしょうか?
暗記教育の歴史
中国の暗記教育をさかのぼると、かなりの歴史があります。
西暦605年、隋の時代に始まり、清の光緒帝の時代に廃止されるまでおよそ1300年にわたり続いた科挙制度。言わずと知れた官吏の検定試験ですね。
その長い歴史のうちのある時期に、科挙を受けようとする書生たちもひたすら本を読んで暗記していたようです。
彼らは、「論語」11,750字、「孟子」34,685字、「書経」25,700字、「詩経」39,234字、「礼記」99,010字、「左伝」196,845字、総数40万字以上を暗記し、精通していました。
【生涯学習?】
それ以外にも、その数倍以上の量の注釈や、その他の必読本、古典、文学書などを読み、精通していなければならなかったのです。
70歳になってもまだ受験生だった書生も少なくなかったと言われているのも無理はありませんね。