中国のお餅、年糕とは?その歴史と美味しい食べ方

  1. 中国語講座

中国のお餅「年糕」(nián gāo)は白色だけでなく赤色や黄色などもあり、とてもカラフルです。

鍋料理やスープ料理・炒め物に使いますが、日本のお餅とは違い、もちもち感と粘りが少ないため、新しい食感だと感じるかもしれません。

中国のお餅、年糕とは?その歴史と美味しい食べ方

年糕の言葉の由来

」(gāo)には本来「温かい食品」や「柔らかい食品」の意味があり、偏の「」()と組み合わせた「」は「米を原料にした温かく柔らかい食品」を表すようになりました。

年糕は一年を通じて販売されていますが、とりわけ「过年」(guò nián 年越し)の「应时食品」(yìng shí shí pǐn 時節商品)として欠かせない一品です。

Niángāoyǒuhónghuángbáisānsèxiàngzhēngjīnyín

年糕有红、黄、白三色,象征金银,

niángāoyòuchēng“niánniángāo”yǔ“niánniángāo”xiéyīn

年糕又称“年年糕”,与“年年高”谐音,

yùyì zherénmen de gōngzuòhéshēnghuóyīniánbǐyīniántígāo

寓意着人们的工作和生活一年比一年提高。

年糕には赤、黄、白の三色があり、金銀を表します。また年糕は「年年糕」ともいい、「年年高」と発音が同じなので、人々の仕事や生活が前の年より更に向上するようにとの願いが込められています。

年糕の作り方

広大な中国では地域ごとに様々な種類の年糕があり、こだわりの製法があります。

市販されている一般的な年糕は、「糯米粉」(nuò mǐ fěn もち米粉)に水と「白糖」(bái táng 白砂糖)、もしくは「红糖」(hóng táng 黒砂糖)を加えてしっかりこねたものを成形し、せいろで蒸して作ります。

糯米粉をこねる時や蒸すために成形する時に油を使うのですが、これは日本の餅との大きな違いです。

市販されている年糕は、糯米粉と「大米粉」(dà mǐ fěn 米粉)が6:4の割合で混合されたものが多く、日本の餅のように伸びることはありません。

自家製の年糕は完成した後、薄く切って炒め物にしたり、スープに入れたり、油で揚げたりして調理します。

Niángāoyǒunánběifēngwèizhībié

年糕有南北风味之别,

běifāngniángāoyǒuzhēngzháliǎngzhǒngjūnwéitiánwèi

北方年糕有蒸、炸两种,均为甜味;

nánfāngniángāochúlezhēngzhá yǐwàiháiyǒupiànchǎohétāngzhǔděngzhūfǎ

南方年糕除了蒸、炸以外,还有片炒和汤煮等诸法,

wèidaotiánxiánjiēyǒu

味道甜咸皆有。

年糕は南北で異なる特色があります。北方では蒸す、油で揚げる、の二つの方法があり、いずれも甘い味です。南方は蒸す、油で揚げる以外に、薄く切ったものを炒める、スープに入れて煮るなど、色々な方法があり、味も甘い場合と塩辛い場合のいずれもあります。

赤い点がついた伝統的な蒸し餅3個が花形の竹の器に盛られ、木の皿の上に、受け皿に盛られたお茶のカップの横に載せられており、中国の優雅な料理の芸術性を彷彿とさせます。

地域で異なる中国の「年糕」

北京の年糕

北京の年糕は清朝の時代に普及したといわれています。元々宮廷料理として、当時は皇室の人々や高官たちが特別な行事や祭典の際に食べていました。

献上品としても納められていた年糕は、その後一般市民の間にも広まり、家庭で手作りされるようになったそうです。

特に冬至や旧正月の際には多くの家庭が年糕を作り、親戚や友人に贈る風習が今でも根付いています。北京の伝統的な食文化として受け継がれていることは、中国語を学ぶ過程で知る方も多くいるのではないでしょうか。

また、北京の年糕は控えめな甘さが特徴で、餡が入ったものやナツメやクルミなどの果物を加えたものなど多種多様です。

果物だけでなく豆やギンナンを使ったものもあり、素材そのものの味や香りを生かしているため、もち米の香りも十分に感じられますよ。

見た目は日本の豆餅に似ていて味も素朴なため、初めて食べる年糕としてぜひ挑戦してみてはいかがでしょうか。

広東の年糕

中国広東地方の年糕の歴史は、清朝時代から始まりました。広東料理(粤菜)の一部として発展し、豊かな広東食文化を支える食べ物の一つとして、広く親しまれてきたといわれています。

一般的な主原料はもち米粉と米粉、ピーナッツ油と瓜類のさね、竹の葉などを材料として作られており見た目もシンプルです。

金と赤が溶け合ったような色で柔らかく滑らかで甘く、日本の方も食べやすい味になっているかと思います。

蘇州の年糕

蘇州の年糕の歴史は宋代から始まっており、当時は祭りや祝い事など重要行事の際に食べられる特別なものとして広まったそうです。

北京同様もち米を主成分としており、砂糖を使った甘い年糕とラードを使った年糕が特徴です。

甘い年糕白年糕bǎi nián gāo)と紅年糕hóng nián gāo)と呼ばれる二種類があり、見た目は鮮やかな色彩で食感はもちもち!甘党の方にはおすすめしたい一品です。

砂糖が原材料のため甘さはありますが、蒸したり水煮をすればさっぱり、油で煎ればパリッと味と食感を楽しめるのも蘇州の甘い年糕の大きな特徴。

ラードを使った年糕は、バラやモクセイ・ナツメの粉・ハッカなど独特な風味が特徴で、見た目はシンプルなものから鮮やかなものまで多種多様です。

薄切りにしたものを卵白につけ、熱したフライパンに油でさっと揚げて食べると更に美味しいですよ。

雲南の年糕

中国雲南地方の年糕は、多様な民族文化と古くからの農耕文化が融合した点が特徴です。

発祥地である云南省yún náng shěng)は中国南西部に位置しており、複数の少数民族が暮らす地域として知られています。

そんな年糕の起源は古代にまで遡り、当時の農業社会において、豊作を祈るための重要な儀式や祝い事で用いられていたといわれています。

種類は、赤砂糖とバラ砂糖で作った紅年糕hóng nián gāo)と、白砂糖と中華ハム、ごまとピーナッツで作った白年糕bǎi nián gāo)の二つ。

蘇州にある白年糕紅年糕と名前は一緒ですが、原材料や味・歴史が異なる点に地域性を感じられますよね。

紅年糕は味付けの主原料が砂糖のため甘くて柔らかく、白年糕は甘みと塩味が混じり合い、更にピーナッツの風味が加わった蘇州オリジナルの年糕です。

お店によっては、長期間保存できる年糕もあり、中国旅行の際のお土産としてもおすすめな一品ですよ。

ピンクのエプロンを着た女性がキッチンに立って、フライパンとヘラを持ち、カメラに向かって微笑んでいる。彼女の後ろの壁にはキッチン用品が掛けられており、伝統的な中国のキッチンを彷彿とさせる。

 市販の年糕料理を食べてみよう

市販されている主流の年糕は、真空パックの「年糕条」(nián gāo tiáo 棒状の年糕)や、「年糕片」(nián gāo piàn 厚さ約4mmにスライスした年糕)などです。

年糕が手に入ったら中国式で調理してみましょう。

汤年糕」(tāng nián gāo)は日本のお雑煮のようなもので、各家庭によってどんな風にもアレンジできる万能料理です。

炒年糕」(chǎo nián gāo)も甘口・辛口・ピリ辛味とどんな味にも合わせやすいので、ぜひチャレンジしてみてください。

青菜蘑菇汤年糕

青菜蘑菇汤年糕

qīngcàimógutāngniángāo

チンゲン菜とキノコの雑煮

  1. 油をひいて熱したフライパンに好みのキノコとスライスしたウインナーを入れて炒める
  2. 酒・醤油・オイスターソースで味をつける
  3. しっかり火が通ったら別鍋に用意した湯を加え、スライスした年糕を入れる
  4. 強火のまま2分ほど煮込み、年糕が柔らかくなったら塩少々で味を調え、チンゲン菜を加える
  5. 最後に卵を溶き入れて出来上がり

猪肉白菜炒年糕

猪肉白菜炒年糕

zhūròubáicàichǎoniángāo

 豚肉と白菜と年糕の炒め物

  1. 豚肉は細切りにし、酒と醤油で下味をつけておく
  2. 市販のスライスされた年糕はばらして水につけておく
  3. 油をひいて熱したフライパンで年糕を炒める
  4. 柔らかくなり始めたくらいで、いったん皿に取り出しておく
  5. フライパンに再度油をひき、豚肉を炒める
  6. 白菜・ニラ・キクラゲ・ニンニク・ショウガを加え炒める
  7. 全体に火が入ったら年糕を再度投入し、野菜から出た汁で柔らかくなるまで炒める
  8. 仕上げに胡麻油を振り入れて出来上がり。
大きな木槌を使って木製の臼で餅をつく人のクローズアップ。臼の中にもち米のかけらが見え、中国の伝統的な習慣を思い起こさせます。

中国の農村が伝統的な餅で地域活性?

中国各地の伝統的な餅の中でも、希少価値が高く有名なのが江西省の特産品「弋阳年糕」(yì yáng nián gāo)です。

小さな村でひっそり作られていた希少な餅が、地域活性化の柱にもなっています。弋阳年糕とはいったいどんなお餅なのでしょうか?

時間と手間がかかる希少な米-弋阳大禾谷

弋阳年糕は江西省上饒市弋陽県で栽培された「弋阳大禾谷」(yì yáng dà hé gǔ 弋陽大禾谷)という米を原料に作ります。

弋阳县」(yì yáng xiàn 弋陽県)は山に囲まれた盆地です。標高400-700メートル、年間の平均気温が18度前後の大変涼しい高地に位置しています。

弋阳大禾谷は春(5月中旬から下旬)に種をまき、夏に苗を植え、秋に生育させ、冬にようやく収穫できるように。それは山麓から湧き出る比較的冷たい水を利用した水田で、日照時間が短く湿度が高い環境の下、じっくりと時間をかけて育てるからです。

収穫期になると稲穂の高さは、何と人の背丈より高い180cmほどにもなります。米の粒は通常のうるち米より大きく、背は短く、形は丸く、ぷっくりとしています。

年糕」(nián gāo 餅)にするのに適しているため近隣の県でも栽培を試みましたが、不思議なことにいずれも成功しません。

この土地のこの水でないと生育せず、手間暇かけても通常の米の半分ほどの生産量しかないため、弋阳大禾谷は江西省の四大品種米と称される希少価値の高い品種になりました。

三回蒸して杵で200回つく

弋阳年糕は原料の米の名にちなみ「弋阳大禾米粿」(yì yáng dà hé mǐ guǒ 弋陽大禾米粿)とも呼ばれます。「粿」(guǒ)とは「米の粉などで作った食品」の意味です。

Zhīsuǒyǐyìyángniángāoyǐ“sānzhēngèrbáichuí”wénmíng

之所以弋阳年糕以“三蒸二百捶”闻名,

shì yīnwèiYìyángrénbǎzhēngshú de mǐfàntóurùgānjìng de shíjiùzhōng

是因为弋阳人把蒸熟的米饭投入干净的石臼中,

yòngmùgùnfǎnfùchuídǎchuí hòuzàizhēngfǎnfùsāncì

用木棍反复捶打,捶后再蒸反复三次,

chuídǎ qǐmǎliǎngbǎicìcáixíng。

捶打起码200次才行。

弋阳年糕が『三回蒸して二百回つく』として知られているのは、弋陽の人々が蒸しあがったもち米をきれいな石臼に入れて木の杵で繰り返しつき、ついたらまた蒸しを三度繰り返すからです。また少なくとも二百回はついてようやく出来上がります。

もち米をまず粉にしてから水と混ぜ、手でよく捏ねてから成形して蒸す製法の中国の一般的な餅と異なり、蒸したもち米を臼と杵でついて作るのは日本の製法に似ていますね。

つきたての餅はその場で村人にふるまわれます。残りは平たい小円形に形を整えてから吉祥の印を押して出来上がりです。

手作りゆえの課題

弋阳大禾谷のもつ粘り気は「糯米」(nuò mǐ もち米)と「籼米」(xiān mǐ うるち米)の中間位です。それで一度目に蒸した米にはあまり粘り気を感じません。

蒸した約50kgの米をいったん石臼に入れて細めの杵でつき、米の形をつぶしてから再び蒸籠に入れて蒸します。これを繰り返してようやく三度目に本格的な餅つきが始まります。

餅つきに使う杵は10kg以上の重さがあり、男性が三人がかりで協力して持ち上げなければ首尾よくつけません。時にはさらに二人の男性が両横から手を貸して、杵の頭を持ち上げる手助けが必要です。

しかも200回から300回ついてようやく餅は完成します。「加水」(jiā shuǐ 手水)のタイミングと水の量の加減も長年の経験が欠かせません。

限られた地域の人々だけで作るため高齢化の影響も伴って、餅つきの技術を持つ人材の減少が課題となっていました。

弋阳年糕が地域の活性化のカギに

このように手間がかかるため、この地域の小さな店が、年に2-3か月間だけ弋阳年糕を加工・販売しているだけでした。

ところが受注してから製造・発送する方法でネット販売したところ、中国全土から注文が入るようになります。

原材料と餅の両方を長期保存できないネックも解消されました。16度以下で弋阳大禾谷を保存できる冷蔵施設と、弋阳年糕の製造ラインを地域の企業が完成させたので、年間を通して弋阳年糕を生産できるようになったのです。

その後は、長期保存が可能な真空パック包装で販売されるように。さらに弋阳年糕の人気に併せて、他の特産物や農産物も売れ行きが伸びました。加えて、弋阳年糕の伝統民俗餅つき技能コンテストを開催し、観光客を呼び込んでいます。

こうして経済的な安定が見込まれるようになったため、村に戻って弋阳大禾谷の栽培に従事するようになった若い世代も少なくありません。

まとめ

弋阳年糕が手に入ったらぜひ色々な料理に活用してみてください。「長く煮てもとろけてしまわず、甘口辛口どちらにも合い、蒸す、炒める、焼く、煮る、いずれにも適している」と評判ですよ。

関連リンク

年糕 – Wikipedia
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