三国志前後の時代から学ぶ中国語

    1. 中国歴史・民族

    皆さんは中国の歴史はお好きですか?日本にも三国志が好きな方はたくさんいらっしゃいますね。私も「三国志が好きだから中国語の勉強を始めた」という方にあったことがあります。

    今回は、そんな魅力満載の三国志前後の時代に由来する中国語を紹介します。

    三国志前後の時代から学ぶ中国語

    三国志と中国語

    中国語を勉強する方すべてが中国の歴史に興味があるわけではないですよね。「中国語は話せるようになりたいけど、別に歴史について知りたいとは思わない」、そんな方もいらっしゃるでしょう。

    しかし歴史に興味なくても、ぜひ一度今回の記事に目を通すことをお勧めします。言語というのは時代とともに変化するものです。三国志の時代と現代では2000年近くの隔たりがありますので、三国志の時代の中国語は、当然現代の中国語とは異なります。

    それなのになぜ注目すべきなのかというと、三国志前後の時代に使われるようになった表現の中には、現代までずっと使われ続けている言葉が数多くあるからです。

    2000年もの時の試練を耐え続けてきたフレーズにはとても大きな価値があります。こうした言葉はこれからもずっと残っていくはず。だからこそ、中国語を勉強している方には是非知っておいていただきたいと思います。

    三国志由来の成語に関してはこちらの記事でも扱っています。

    これから三国志前後の時代に由来する中国語を紹介します。是非ストーリーと単語と例文をセットで覚えていきましょう。

    中国で2本の矢印が描かれた道路に立つ人の足。

    苦肉の策

    この苦肉の策(くにくのさく)という言葉には、相手をおとしいれるために、自分の身を苦痛にさらすようなことまでするという意味があります。

    三国志演義で北方を平定した、曹操と呉の都督である周瑜が赤壁で戦う事になりました。三国志演義についてはこちらの記事で紹介していますのでご参照ください。

    曹操軍が圧倒的な大軍なのに対し、周瑜の軍は数万の兵士しかおらず劣勢でした。黄蓋は自分が偽って降伏すると述べると、周瑜は「曹操軍から偽って降伏してきている蔡中、蔡和の前で黄蓋殿を鞭打つ事になるが構わないか?」と黄蓋に問います。

    黄蓋は快諾し、これにより周瑜と黄蓋はお互いが納得した上で、苦肉の策を実行する事になります。苦肉の策の演技とはいえ、黄蓋はかなり痛めつけられてしまいます。

    この後に、黄蓋は曹操の下に降伏しますが、周瑜に打ちたたかれてボロボロになった黄蓋を見て、曹操は黄蓋の降伏を信じるに至ります。

    この苦肉の策という言葉は、日本語ではビジネスシーンなどでもよく用いられます。例えば、「管理職に就いていれば、苦渋の決断を迫られることもある」といった具合です。

    この苦肉の策という表現の由来は中国語の苦肉计(kǔ ròu jì)から来ており、三国志の時代から用いられるようになりました。

    【苦肉计の例文】

    この苦肉计という言葉は、現代の中国社会においてどのように用いられているのでしょうか?

    中国のウェブサイトでは、彼女に振られてしまった男性が苦肉の策を用いてよりを戻す方法について説明されていました。苦肉计という表現がどのように用いられているかに注目してください。

    jīn tiān wǒ men yào fēn xiǎng de shì rú hé shǐ yòng kǔ ròu jì qù wǎn huí nǚ yǒu.

    今天我们要分享的是如何使用苦肉计去挽回女友。

    今回は苦肉の策を用いて別れた彼女とよりを戻す方法について教えます。

    wǒ men yīng gāi rú hé zhèng què shǐ yòng kǔ ròu jì?

    我们应该如何正确使用苦肉计?

    苦肉の策はどのように用いるべきでしょうか?

    kǔ ròu jì bù shì yì zhì xiāo chén, jué shí, xià  guì, shèn zhì zì cán děng wēi xié de fāng shì lái bó tóng qíng.

    苦肉计不是意志消沉,绝食,下跪,甚至自残等威胁的方式来博同情。

    ここで用いる苦肉の策は、落ち込んだり、ハンストしたり、土下座したり、ひいては自傷行為などの行為を通して相手の同情を買おうとするとすることではありません。

    zhè yàng zhǐ huì ràng nǚ shēng gǎn dào yā lì ér lí nǐ yuè lái yuè yuǎn.

    这样只会让女生感到压力而离你越来越远。

    こういうことをすると、女性はますます離れていきます。

    kǔ ròu jì zhēn zhèng de hé xīn zài yú fàng xià nǐ de dà nán zǐ zhǔ yì,

    苦肉计真正的核心在于放下你的大男子主义,

    苦肉の策の核心は、亭主関白の態度を改めることです。

    fàng xià nǐ suǒ wèi de miàn zi, rèn rèn zhēn zhēn dì biǎo dá zì jǐ wǎn huí de zhēn chéng hé tài dù, jué xīn,

    放下你所谓的面子,认认真真地表达自己挽回的真诚和态度,决心,

    面子を捨て、自分の誠意、態度、決心を心から改めたことを伝えることで、

    ràng nǚ shēng  chū le zhè ge qì, xiè le xīn zhōng de bù mǎn, tóng shí jī fā qí nǚ shēng de mǔ xìng yì shí, yǐ jí niàn jiù de yì shí, 

    让女生出了这个气,泄了心中的不满,同时激发其女生的母性意识,以及念旧的意识,

    女性の怒りを沈め、不満をはきださせると同時に、母性本能と付き合っていた時の感覚を思い出させ、

    fàng  bù xià nǐ men jīng yíng de zhè duàn gǎn qíng, ér xuǎn zé hé nǐ jì xù de zǒu xià qù.

    放不下你们经营的这段感情,而选择和你继续的走下去。

    二人の関係を終わらせたくないと思わせることで、あなたとの関係を続けることを選ばせるのです。

    まとめると、恋愛関係を持続させるために自分の面子を捨てるという行動をとること、それが苦肉计の核心であるとこのウェブサイトでは説明されています。

    このように、苦肉计はハウツー記事の中に普通に出てくる表現です。ビジネスや人間関係など、人の生活の様々なシーンで用いることができる言葉ですね。

    中国の大階段の頂上に腕を上げて立つビジネスマン。

    登竜門

    登竜門(とうりゅうもん)とは、立身出世や成功のために超えなければならない関門のたとえとして使われる言葉です。ここで言う関門とは、採用試験や審査、作家や芸能人などの場合は賞の受賞などが挙げられます。

    登竜門という名前の門があったわけではありません。登竜門は門そのものを指す言葉ではなく、「竜門に登る」ということを表し、もともとは成功のための関門を突破するという意味の言葉でした。

    「竜門」とは黄河の上流、竜門山に流れる急流のこと。その下には多くの鯉が集まり、急流を登ろうとしますが、みんな登り切れずに落ちていきます。しかし、もし竜門を登り切った鯉がいたなら、その鯉は竜になれるという伝説がありました。

    この伝説には険しい道を乗り越えるという意味が含まれていて、三国時代の少し前に活躍した李膺(りよう)という官僚が「登竜門」の語源です。

    
彼は政治の腐敗に怒り、これを正そうとしたこともある公明正大な人物で、官僚としての実力もあるとても評判の良い人物。若い官僚にとって、そんな李膺に才能を認められるということは、将来の出世が約束された事を意味します。

    李膺に認められた人のことを、上記の「竜門」の伝説になぞらえ、「竜門に登った」と表現するようになりました。

    日本語でも登竜門はよく用いられる言葉ですね。「この試験は上級職への登竜門」といった用いられ方をしています。

    【登龙门の例文】

    登竜門は中国語で登龙门(dēng lóng mén)といいます。中国語の中では、一登龙门(yī dēng lóng mén)という4字熟語がたくさん用いられます。

    登龙门一登龙门 の意味はとてもよく似ています。一登龙门は、権力を持っている人に認められると、急激に世間の評判がよくなることを指しています。

    登龙门が関門そのものを表すのに対し、一登龙门は、関門を突破した後もしくは権力者に認められた後の世間の評判の変化に重きが置かれています。

    yī dēng lóng mén, zé shēn jià shí bèi

    一登龙门,则身价十倍。

    時の偉い人に認められれば、それでその人の値打ちが十倍にもなる。 (直訳:竜門を一度登りつめれば家名は10倍にもなる )

    詩人の李白が述べた言葉です。ふとした会話の中でこういうフレーズをさりげなく入れていけたらいいですね。

    rú guǒ zhè xiē rén dōu xiǎng “yī dēng lóng mén zé shēn jià shí bèi” de huà, nà chéng gōng zhī lù jiāng shì hé qí màn cháng.

    如果这些人都想一登龙门则身价十倍的话,那成功之路将是何其漫长。

    もしこれらの人々が皆、「竜門を登った瞬間に家名が10倍になる」ことを望んでいるなら、成功への道は非常に長いものになるでしょう。

    人口の多い中国は競争が困難で若者に多くのストレスを与えています。登竜門を越えられずにいる若者がしている仕事についてはこちらの記事をご参照ください。

    zì cóng tā yī dēng lóng mén jià rén hòu, duì rén de tài dù shén shì ào màn

    自从她一登龙门嫁人后,对人的态度甚是傲慢

    彼女は権力者と結婚して以来、他人に対して非常に傲慢な態度をとっています。

    立場が変わると人も変わってしまうものです。一登龙门によって急に社会的立場に恵まれるようになった、女性の態度の変化を嘆く思いが伝わってきますね。

    日本のしゃぶしゃぶは日本発祥の伝統的な鍋料理です。薄切りの牛肉や豚肉、野菜、麺を風味豊かなスープで煮込んだのが特徴です。の

    絵に描いた餅

    絵に描いた餅とは、どんなに上手に描かれていても、絵に描かれた餅は見るだけで食べることができないという意味です。日本語では「そんな夢みたいなことばかり言って、まるで絵に描いた餅じゃないか。」 といった具合で用いられますね。

    この言葉の由来は中国語の画饼(huà bǐng)という言葉で、魏国の曹操の孫である曹叡の言葉が元となっています。

    xuǎn jǔ mò qǔ yǒu míng, míng rú huà dì zuò bǐng, bù kě dàn yě

    选举莫取有名、名如画地作饼、不可啖也

    人を選んで登用するときは、名声や評判だけで選んではいけない。名声や評判というものは、地面に餅の絵を描くのと同じで、その餅は食べられない。何の役にも立たない。

    この曹叡が言ったフレーズから、画饼という言葉が生まれました。は絵を描くという意味で、は小麦粉を材料にして焼いた、あるいは蒸した、丸くて薄い食べ物を指します。中国語でお餅は年糕(nián gāo) といいます。

    【画饼の例文】

    を用いた成語があります。

    huà bǐng chōng jī

    画饼充饥

    絵にかいた餅で飢えをしのぐ(つまり空想によって自分を慰めるということ)

    この画饼充饥を用いた例文を紹介します。

    zhǐ yǒu shí jì xíng dòng cái néng dài lái zhēn zhèng de shōu huò, huà bǐng chōng jī zhǐ huì ràng zì jǐ gèng jiā jiāo lǜ.

    只有实际行动才能带来真正的收获,画饼充饥只会让自己更加焦虑。

    本当の利益は実際に行動することによってのみ得ることができます。空想にふけることは自らの不安を増幅させるだけです。

    wú lùn cái huá, zhī shì duō me zhuō zhe, yào shi quē fá rè qíng, zé wú yì zhǐ shàng huà bǐng chōng jī, wú bǔ yú shì.

    无论才华、知识多么卓着,要是缺乏热情,则无异纸上画饼充饥,无补于事。

    どんなに優れた才能や知識があっても、熱意がなければ絵に描いた餅と同じで何の役にも立ちません。

    まとめ

    今回は三国志前後の時代に使われるようになった中国語を紹介しました。

    言葉というものは、ストーリーを理解すると一層覚えやすくなります。是非それぞれの言葉の由来を知り、実際の会話で使えるようにしましょう。

    関連リンク

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