中国と聞いて何を思い浮かべるでしょうか?中国料理・パンダ・歴史的建造物・豊かな自然などを思い浮かべるかもしれません。
しかし中国は「自動車大国」でもあります。中国の自動車産業は成長を続け、それに伴い自動車免許の取得者も増えています。
中国の運転免許制度: 知っておくべき全ての情報
目次
中国の自動車産業の急速な成長
中国と日本それぞれの自動車工業会のデータによると、2023年第1四半期における自動車の輸出台数は中国が107万台・日本が95万台となっており、中国の輸出台数が日本を上回りました。業界では、2023年内に中国の自動車輸出台数が日本を追い抜くとの予想が広まっています。
中国は2025年までの自動車産業の育成計画として「自動車産業の中長期発展計画」を公表しました。この計画では、中国自動車市場の規模を「2025年に3500万台に上る」と予測したうえ、現在の中国を「自動車大国」と位置づけています。
zhōng guó chéng le shì jiè dì yī qì chē dà guó le
中国成了世界第一汽车大国了。
中国は世界位置の自動車大国になりました。
増え続ける電気自動車
中国は電気自動車(EV)製造と購入において、世界をリードするようになりました。2022年に中国内の電気自動車年間販売台数は680万台で、中国は8年連続で世界最大の電気自動車市場となっています。
一方米国では2022年の電気自動車販売台数がわずか80万台です。こうして比較すると中国のEV市場がいかに大きいかがわかります。
xīn néng yuán qì chē
新能源汽车
新エネルギー車(EV)/電気自動車
中国の電気自動車メーカー
中国では数多くの電気自動車メーカーが存在しています。中国で有名な5つの電気自動車メーカーを紹介します。
- 特斯拉(Tesla) tè sī lā
- 比亚迪(BYD) bǐyǎdí
- 蔚来(NIO) wèi lái
- 小鹏汽车 xiǎo péng qì chē
- 理想汽车 lǐ xiǎng qì chē
特斯拉(Tesla)は米国のメーカーで、それ以外は全て中国のメーカーです。
中国ではショッピングモールの施設内にこうしたメーカーの直営店があり、車が展示されています。そのため様々な年齢層の消費者ショッピングの途中で気楽に直営店を訪れ、自動車について理解できるようになっています。
電気自動車ショップでの会話例
中国を訪れた際は、こうした直営店に行って店員と話してみてると中国語のよい練習になります。
wǒ xiǎng liǎo jiě zhōng guó de xīn néng yuán qì chē
我想了解中国的新能源汽车
中国の電気自動車について知りたいです。
qǐng wèn, nǐ men pǐn pái yǒu shé me yōu shì?
请问,你们品牌有什么优势?
こちらのブランドの強みは何ですか?
直営店の店員であれば、接客に慣れているためこちらの中国語が流ちょうでなくても親切に対応してくれますし、スマホの翻訳アプリも使用できます。
こうしたショップに入った後、実際に購入しなくても問題ありません。アパレルショップに行く感覚で入っていけます。
電気自動車の見分け方
中国の電気自動車は、他のガソリン車と一目で見分けられるようになっています。電気自動車のナンバープレートはグリーン「绿牌」(lǜ pái)です。それに対し、ナンバープレートはブルー「蓝牌」(lán pái)です。
簡単に見分けることができるので、今後中国に行く機会があれば電気自動車がどれくらい普及しているのか確認してみましょう。政策により市内バスの新エネルギー車への移行が推し進められており、その割合は日増しに高くなっています。
中国の普通自動車免許
中国の自動車免許取得保有者数
中国公安部の発表によれば、2023年6月末時点の国内のエンジン付き車両保有台数は4億2,600万台で、うち自動車が3億2,800万台、電気自動車が1,620万台だったと明らかにしています。エンジン付き車両の運転者数は5億1,300万人、そのうち自動車が4億7,500万人でした。
中国では人口の約三分の一が運転免許証を取得していることになります。日本では、2023年6月末時点の自動車保有車両数は8,273万台 で、自動車免許証保有者数は2022年末時点で約8,184万人 となっています。日本では人口の約三分の二が運転免許証を取得しています。
中国の場合は人口が多いため三分の一でも相当な数になりますが、日本と比べると自動車免許証を取得している人の割合はまだそれほど高くありません。中国国内の電気自動車の成長に伴い、中国で運転免許証を取得する人はさらに増えていくと予想されています。
普通自動車免許の検定試験
中国の普通自動車免許の検定試験はどうなっているのでしょうか?
普通自動車免許証を「C1驾驶证」(jià shǐ zhèng)といいます。「C1」に相当する車は「小型汽车」(xiǎo xíng qì chē)で、車載制限人数は9人までとなっています。
中国では普通自動車免許証の年齢制限は18歳から70歳でドライビングスクール「汽车驾驶学校」(qì chē jià shǐ xué xiào)に通って、運転や交通ルールを学ぶ人が大半です。
費用は都市によって異なり、1~2級都市で5,000元~8,000元(2023年10月のレートで約10~16万円)ほど。3~4級都市だと、2,000~3,000元(約4万~6万円)が相場のようです。しかし学費を支払うのを嫌い、独学を選んで検定試験に臨む人も少なくないようです。
A:yī nǐ kàn,jià zhào zì xué zì kǎo zěn me yàng?
依你看,驾照自学自考怎么样 ?
自動車の免許取得検定を独学で受けるのって、あなたどう思う?
B:nǐ hái shi méi jīng yàn de nián qīng gū niang ba,
你还是没经验的年轻姑娘吧,
あなたは年も若いし経験の少ない女性だから、
wǒ rèn wéi hái shi bào míng jià xiào bǐ jiào hǎo。
我认为还是报名驾校比较好 。
やっぱり自動車教習所に申し込んで勉強する方がいいと思うわ。
中国の免許の更新
免許の更新は18歳から60歳までならば、初回の更新は6年後に行う必要があり、その後は事故や減点などが無い場合であれば10年後に更新となります。
免許取得者が60歳を過ぎると、毎年健康診断を受けた結果を提出する必要があります。それを怠ると、改めて交通理論に関する検定を受けなおさなければなりません。
高齢の運転手が改めて筆記試験を行うとなると、合格するのはなかなか難しいので、なるべく免許が失効しないうちに身体検査を行うよう勧められています。
減点の制度
2023年の道路交通安全法によると、違反した場合は道路交通安全違反の程度に応じて、減点点数は12点・6点・3点・2点・1点となります。
交通違反の減点は6年間で12点以内に収めなければならず、次の更新までに減点点数が合計12点に達した場合、その場で免停になります。
免停になってしまった場合、少なくとも七日間の交通教育を受けた後で再度検定試験に合格すれば、再び免許を取得できます。
免許の自動失効
運転手が70歳になると免許は自動的に失効し、車を運転することはできなくなります。日本でも高齢者に対する運転免許の制限はありませんが、中国ではこのような規制により事故を減少させています。
日本人が中国で自動車免許証を取得するには?
日本人が仕事などの事情で長期中国に滞在する場合、自動車免許証を取得するは可能なのでしょうか?
まず理解しておくべき点として、中国はジュネーヴ条約に加盟していないため、国際運転免許証で運転することが許可されていません。中国大陸で車を運転するには、中国独自の運転免許証を申請して取得する必要があります。
香港・マカオはジュネーヴ条約に加盟しているため、国際運転免許証があれば運転できます。台湾は条約に加盟していませんが、有効な日本の運転免許証と免許証に対応する中国語翻訳文を持っていれば入境後1年運転可能です。
ジュネーヴ条約は道路交通に関するもので、1949年その名の通りジュネーヴで行なわれた国際会議で採択されたもので、1952年より発効しています。日本は1964年からこれに参加しており、これ以降日本で発行された国際免許が条約加盟国において使えるようになっています。
日本で自動車免許を取得している場合
基本的に日本で自動車免許を取得している方であれば、以下の条件を満たした場合に実技試験免除で中国の自動車免許を取得することが可能です。免許証の有効範囲は中国国内です(香港などを除く)。
注意点として、都市によって条件が異なることがあるので、実際に運転免許証を取得する場合には現地の機関に確認するようにしてください。
- パスポートを有していること
- 90日間以上の有効な居留許可を有していること
- 住宿証明(臨時宿泊登記表:公安の押印必須。住居地の派出所で発行)
- 日本の運転免許証の原本及びコピー(裏と表)、中国語翻訳文(必ず翻訳会社で作成したもので会社押印が必要)
- 身体検査報告書
- 「科目1」の学科試験を通過すること
中国と日本の交通ルールの違い
中国に行ったことのある多くの人は、日本とは大きく交通ルールが異なることに気がつくでしょう。ルールが違うということを理解していないと、中国の方に対して「ルールを守らない」などと偏見を抱いてしまうことになりかねません。
交通ルールの違いについて理解しておくと、危険を回避し、不必要な誤解や摩擦を避けることができます。これからその違いについて取り上げます。
中国に行く予定のある方は、たとえ車を運転する予定がなくても知っておくだけで役に立ちますので、目を通しておくようにお勧めします。
中国では右側通行
まず大きな違いとして中国では右側通行です。それに合わせて車は左ハンドルが基本です。全部が反対なだけなので慣れれば問題はないのですが、日本での交通ルールが当然だと思っていると大変危険ですので注意しましょう。
台湾は中国大陸と同じ右側通行、香港とマカオは日本と同じ左側通行になります。
赤信号でも右折可能
中国では、赤信号でも基本的には右折が可能です。日本でいえば左折にあたる方向です。右折専用の信号が設置されている交差点の場合はそれに従う必要がありますが、多くの交差点ではいつでも右折ができます。
このルールを理解していないと「赤信号なのになぜ右折するのか?」と戸惑ってしまいますね。信号を渡るときには右折車に注しましょう。
車優先社会
中国では基本的に車優先です。これは日本と大きな違いです。中国では歩行者に道を譲ることを義務付けている横断歩道には「车让人」(chē ràng rén)という表示があり、守らなければ減点されます。
歩行者側として道を歩く場合は注意が必要です。車が止まってくれることを期待したいところですが、中国では止まってくれないケースが多いです。道に出るときには車の動向によく注意しましょう。
電動バイクが多い
電動バイクが多いのも特徴です。基本的に音がしないので、すーっと近づいてきてさっと脇を抜けていったりします。マナーもよいとはいえない運転手が多いので、車の運転手にとっても歩行者にとっても注意が必要な存在です。
特に市内バスから降りる時は右方向からくる電動バイクに注意しましょう。音がないので気が付かないことがあります。
またシェア自転車も増えましたので要注意です。中国のシェア自転車には電動アシスト機能が備わっているものも多く、電動バイク並みのスピードが出ていることもあるので気を付けましょう。
中国には黄色信号が少ない
中国では黄色信号がない信号が多いです。赤になる前もしくは青になる前に、信号機にカウントダウン表示されます。車用であれば9秒前からのカウントダウンが多く、歩行者用の信号だと二桁のカウントダウンが多く見られます。
クラクションが多い
中国の道路ではクラクションの音が四六時中鳴り響いています。いきなりこうした光景を目にすると攻撃的な印象を受けますが、中国においてクラクションを鳴らす意味は日本と異なります。
中国で鳴らされるクラクションは日本のように危険指摘という意味ではないのです。ただ「私が通るから危ないよ」という意味にすぎません。感覚的には方向指示器に似ています。クラクションを鳴らされても「自分が攻撃されている」とは思わないようにしましょう。
まとめ
今回は中国における自動車事情と、中国の運転免許制度、中国の交通ルールについて取り上げました。日本と比較すると異なる点がたくさんありますね。
違いを比較するだけでも充分興味深いですが、実際に中国に行く機会がある方であれば、こうした違いを理解しておくだけでも現地で遭遇する危険やストレスを軽減することができます。
事前に良く予習し、中国での滞在が少しでも楽しいものとなることを願っています。