中国語の助詞・副詞(文章に頻出する表現)

    1. 中国語講座

    「わたし、新しいのiPhon買ったね」

    中国の人が日本語を話すときにこんな感じで不自然な場所に「の」が入るのを耳にしたことがあるのではないでしょうか。

    なぜ必要のないところに助詞の「の」を入れるのか?実はそれには元となる中国語に理由があるのです。

    中国語の助詞・副詞(文章に頻出する表現)

    中国人が「の」をよく使う理由

    考えてみると中国以外の国の外国人が話す日本語には、必要のないところに「の」は入っていません。中国人が日本語を話す時にだけ、やたら「の」が登場します。

    それは母国語である中国語の影響を受けていて、元となっている中国語の文章に「の」に値する言葉が入っているからなのです。

    さきほどの「わたし、新しいのiPhone買ったね」を中国語にするとこうなります。

    wǒ mǎi le xīn de iphong

    我买了新的iphong

    わたしは新しいiphongを買いました

    我买了(wǒ mǎi le)は、「私は〇〇を買った」という表現になりますが、何を買ったかというと新的iphongxīn de iphong)です。

    注目すべきは、xīn)とそれに続く名詞「iphong」の間に「」(de)という助詞が入っている点です。

    中国人のほとんどは中国語の「」(de)は日本語で「の」と表現すればいいと単純に考えるので、「新しいのiphong」と言ってしまうわけです。

    実は中国人が「の」を変なところで入れてしまうのは形容詞と名詞の間だけではありません。

    「的」を「の」と訳してはいけないケース

    中国語では名詞と名詞の間だけでなく、動詞と名詞の間、形容詞と名詞の間にも「」(de)が入ります。

    例えば、名詞と名詞の間だと

    zhè shì wǒ de iphong

    这是我的iphon

    これはわたしのiPhoneです

    動詞と名詞の間だと

    zhè shì wǒ mǎi de iphong

    这是我买的iphon

    これは私が買ったiPhoneです

    形容詞と名詞の間だと

    zhè shì xīn de iphong

    这是新的iphong

    これは新しいiPhoneです

    このように日本語では名詞と名詞の間にしか入ることはない「の」が、中国語ではすべてのケースで「」(de)を必要とします。

    「新しいのiPhone」だけでなく、「これ、私、買ったのiPhoneね」なんかも中国人が言いそうな日本語ですが、原因は中国語の動詞と名詞の間に「」(de)が必要だからなのです。

    なぜ中国人が日本語を勉強するのが難しいのか理由がわかりますね。

    日本人にとっても難しい「的」

    中国人が日本語の「の」をなかなか上手に使えないケースがあるのと同様、日本人にとっても簡単なように感じる中国語の「」(de)はよく間違うことがある表現です。

    では、例を挙げて考えてみましょう。まずは基本形です。「これは私の家族です」をどのように訳したらいいと思いますか?

    zhè shì wǒ de jiārén

    这是我的家人

    これは私の家族です

    私「の」家族、「の」の部分に単に「」(de)を入れて訳せばいいだけですから、簡単です。

    では「きみ、起きるの早いね」をこれはどう訳したらいいでしょうか?

    きみ、起きる「の」早い、ですから「の」の部分に「」(de)を入れて「你起的早」(nǐ qǐ de zǎo)と表現したくなる人も多いと思いますが、厳密にいうとこれは間違いです。

    日本語では単に「の」と表現する言葉ですが、中国語ではこうなります。

    nǐ qǐ de zǎo

    你起得早

    発音はまったく一緒なのですが、中国語ではこの場合「」(de)を使わず、「」(de)を使います。

    このように日本語だと「の」としか表現されない言葉も、中国語では「」(de)以外の表現を使うときがあるので一筋縄にはいきません。

    では、ここで日本人が中国語を勉強するとき少し混乱する「」(de)にまつわる中国語用法の考察を深めていくことにしましょう。

    「的」の基本的な使い方

    次に「的」の基本的な使い方を見て行きましょう。使い方はそれ程難しくありません。

     měi guó de qì chē 

    美国的汽车

    アメリカの車

    měi lì de huā

    美丽的花

    美しい花

    fǎng wèn de jī huì

    访问的机会

    おとずれる機会

    「的」と「地」「得」の使い分け

    中国語の文章に頻出する語のなかで「」はおそらく最もよく使われる語の一つでしょう。日本語の「な」や「の」に対応する語で名詞や動詞、形容詞にくっついて形容詞句を形成する助詞です。

    似たような語に「」や「」があり、使い分けはちょっと難しいかもしれません。

    「的」は形容詞句

    基本的に「的」は名詞の前に置いてその名詞を修飾します。いわゆる形容詞句ですね。

    kuàilè de jùcān

    快乐的聚餐

    楽しい飲み会

    「地」は副詞句

    これに対し、「地」は動詞の前に置いてその動詞を修飾します。要するに副詞句です。

    kuài lè di hē jiǔ

    快乐地喝酒

    お酒を楽しく飲む

    「得」は動詞や形容詞を説明

    」は動詞や形容詞の後に置いて、後に続く語を使って動詞や形容詞を説明します。説明する語とされる語の位置関係は「」と「」とでは逆ですね。

    動詞(下の例では「」)に目的語()がある場合、目的語の後にもう一度動詞を加えて「」を続けます。

    hē jiǔ hē de hěn kuài lè

    喝酒喝得很快乐

    お酒を飲むのは楽しい

    名詞/形容詞/動詞をセットにして名詞を修飾する表現

    それぞれ、名詞/形容詞/動詞とセットになって名詞を修飾する語を作っています。

    nà ge qì chē shì měi guó de

    那个汽车是美国的

    あの車はアメリカの車です

    語順を変えて「~なもの」という表現

    このように、語順を変えて「~なもの」という表現にもできます。

    「的」に比べると、「地」と「得」の区別はちょっとやっかいです。

      tā màn màn di zǒu

    他 慢 慢 地 走

    彼はゆっくり歩く

    tā zǒu de hěn màn

    他 走 得 很 慢

    彼は歩くのが遅い

    慢慢地」は動詞「」の修飾語で、この文のポイントは「彼は歩く」ですね。

    一方、「」の文章のポイントは「彼は遅い」です。

    ただ、上の例の「慢慢」のような元々動詞を修飾する副詞には、通常は「」をつけず「慢慢走」という言い方をします。

    「地」をつけると、ちょっと強調した感じになりますね。

    動詞を修飾する副詞句

    形容詞など副詞ではない語を使って動詞を修飾する場合は、「」で副詞句を作ります。

    こちらは強調しているわけではなく、動詞を修飾する副詞句ですよという印です。

     tā gāo xìng di bāng tóng shì de máng

    他高兴地帮同事的忙。

    彼は喜んで同僚の仕事を手伝った。

    副詞句の否定文

    否定文は次のようになります。

     tā bù màn màn di zǒu

    他 不 慢 慢 地 走

    彼はゆっくりは歩かない

    tā zǒu de bú màn

    他 走 得 不 慢

    彼は歩くのが遅くはない。

    また、「」には可能を表す表現もあります。

    可能を表す表現の否定文

    その場合の否定文では「」は省きます。

     zhè ge xíng li ná de qǐ lái 

    这 个 行 李 拿 得 起 来 。

    このカバンは持ち上げられる。

    zhè ge xíng li ná bù qǐ lái

    这 个 行 李 拿 不 起 来。

    このカバンは持ち上げられない。

    以上のように、修飾語を形成して名詞を修飾する形容詞句なら「的」

    動詞を修飾する副詞句なら「地」、 修飾語ではなく補語を形成して動詞を説明するなら「得」という使い分けになります。

    「的」や「地」、「得」の使い方は、ネイティブの中国人でも間違えることがあるようです。

    発音はどれもdeで大丈夫ですから、会話では特に気にする必要はないでしょう。

    時にdiと発音が変化する

    ここまで「」、「」、「」三つの”de”を考えてきました。「」(de)にまつわる中国語用法の考察で、最後にもう一つだけ乗り越えなくてはいけない関門があります。

    それは

    “de” de fā yīn yǒu shí dú “di”

    “de”的发音有时读”di”

    de” の発音がときどき“di”という発音に変化する

    特に「地」の発音di と区別することが多いですが、人によってはたまに「的」をdi と発音することもあります

    なぜ文法的に正確な発音は“de” なのに、中国人は“di”と発音することばあるのでしょうか?

    その理由は2つほど考えられます。

    hěn róngyì fāyīn

    1,很容易发音

    発音しやすい

    shòudào mǔyīn qiánhòu yīn de yǐngxiǎng

    2,受到母音前后音的影响

    母音が前後の言葉の影響を受ける

    「発音しやすいように読み方を調整する」、これは日本語でもあることです。

    以前にも考察(こうやって判別するのか!中国語二通りの読み方 )しました。日本人も他の漢字の読み方の影響を受けたり、単に読みやすいからという理由で発音の仕方を変えたりしてないでしょうか?

    例えば、重複(ちょうふく)という漢字をついつい重複(じゅうふく)と、早急(さっきゅう)を早急(そうきゅう)と読んでしまうことがあるかもしれません。それは重(じゅう)とか早(そう)という読み方があまりにも多く、メジャーな読み方だからです。

    同じ理由で、“de” が正確な発音ではあるのですが、“di”と発音してしまうケースがあります。その方が発音しやすい、“di”という発音のほうが慣れ親しんでいるという潜在意識から来ています。

    なぜ中国人は“de” を“di”と発音したくなるのか、それでは“di”と発音するケースを見てみましょう。

    たとえば、助詞副詞ではないのですが、「タクシーを呼ぶ」ことをこう表現します。

    dǎdī 打的

    「打的」(dǎdī)はとっても語呂のいい発音です。もともとはタクシーを呼ぶときに使うこの言葉の流れを、ついついほかのケースでも「的」(di)という発音で使ってしまうというわけです。

    ほかにもこれまた語呂がいい言葉で、「確かに!」と相手に同意する際の言葉はこう言います。

    díquè 的确

    この「的确」(díquè)も発音していて気持ちがいい響きで語呂の良さを感じます。日本語と同じく、発音しやすいように発音するというのは中国語でもあることなのですね。

    これは中国語で歌を歌うケースでよく出てくるパターンですが、音の流れで“de” よりも“di”と発音されるケースがあります。

    これは日本語でも見受けられます。例えば「私のごはん温めておいて」というとき、よく口語では「私のごはん温めといて」と言わないでしょうか?

    「て」と「お」を早く言うと「と」のように聞こえるために、日本人は「と」発音します。

    同じように「」(de)の前後の母音によっては、“di”と発音したほうがきれいに聞こえるから、語呂がスムーズだからという理由で“di”と発音するというケースがあるように見受けられます。

    ですが正確に文面化できる法則性があるわけではなく、中国人は何気なく“di”と発音しているという種類のものです。

    言語を学習するときの基本。それは「習うより慣れろ」です。つまり中国人と生活しながら、「あー、こういうケースでは“di”と発音するのか」と、覚えていくのが一番よいでしょう。

    まとめ

    今回は日本語では「の」と表現される助詞が、中国語ではどのように表現されるのか、中国語で「」(de)と表現される言葉が別の漢字で用いられるケース、さらには発音が“di”に変わるケースについて考察しました。

    正直に申し上げると、本日考察したことは、話すときに言い間違えたとしてもさほど大きな問題ではありません

    文章を書くときに間違えても、通じなくなるということはありませんが、できることならなるべく正確に使えるようにしたいものですね。

    関連リンク

    1. 「中国語の副詞の種類と使い方を徹底解説」: 中国語における副詞の種類とその使い方に焦点を当てた記事です。頻度、否定、話し手のニュアンスを表す副詞など、様々な副詞の意味と使い方が紹介されています。例えば、「又」「再」「还」「也」などの頻度を表す副詞や、「不」「没」「不要」「不用」などの否定を表す副詞について解説しています。これらの副詞を適切に使うことで、中国語の表現が豊かになります​​。
    2. 「副詞の置き場所と使い方」: この記事では、中国語における副詞の置き場所と使い方について詳細に説明されています。程度、範囲、時間、否定など、様々な意味を持つ副詞の正しい配置を理解することが、中国語での適切なコミュニケーションに不可欠です。例えば、「也」「都」「不」などの副詞は主語の後ろに置き、動詞や形容詞の前に配置して使われると説明されています​​。

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