中国には色々な魅力がありますが、その一つとして沢山のパンダがいることを挙げる人もいるのではないでしょうか。残念ながら日本の動物園ではなかなかパンダの飼育に成功していません。中国でパンダがよく育つことには幾つかの理由があるのです。
中国でパンダがよく育つ秘密と成都パンダ基地の楽しみ方
目次
中国のパンダについて
まずパンダについての基本的な情報を紹介します。パンダについてある程度知っておくと、中国の方と会話する時にも話がはずみます。
パンダは中国の国宝
パンダは中国の人たちから大変重宝されていて「中国の国宝」といわれています。パンダについてはみんなこのように述べます。
xióng māo shì zhōng guó de guó bǎo
熊猫是中国的国宝
パンダは中国の宝だ
ジャイアントパンダは中国語で「大熊猫」(dà xióng māo)といいます。ちなみに「小熊猫」(xiǎo xióng māo)はレッサーパンダの事を指します。
パンダが熊猫と呼ばれる理由
漢字を理解できる日本人としては気になるところです。パンダは熊科の動物なので、熊という漢字が用いられているのは納得がいきますが、なぜ猫という漢字が用いられているのでしょうか?
昔の中国では文字を右から左に読んでいました。それが徐々に左から右に向かって読むようになり、1955年頃に正式に変更されました。ちょうどこの変化の過渡期にパンダの存在が世の中に知られるようになりました。
パンダは熊科に属していますが外観が猫に似ており、「猫のような熊」ということで中国ではもともと「猫熊」(māo xióng)と呼ばれていました。その後ある展覧会で「猫熊」の文字を、古い書面での文字の記し方に従って右から左に向かって表示しました。そうすると「熊猫」と表示されます。
その時代の人々は文字を左から右に向かって読むことに慣れつつあり、「熊猫」と表示された文字を左から右に向かって読みました。それで多くの人がパンダの事を「熊猫」と認識し、そのまま「熊猫」と呼ばれるようになりました。
中国でパンダがよく育つ理由
日本には上野動物園、和歌山アドベンチャーワールド、神戸王子動物公園(2023年8月31日時点ではパンダの体調管理のため一般公開中止)にパンダがいます。日本ではパンダ繁殖に成功するとニュースになり、全国から多くの人がパンダを見に動物園にやってきます。
ところが中国と比べると繁殖率は決して高くなく、残念ながら繁殖に失敗してしまうケースも少なくありません。日本と中国では何が違うのでしょうか?中国でパンダが育つ要素を考察してみましょう。
飼育環境の違い
動物にはそれぞれ適した環境があります。動物を飼育するのであれば、その動物に適した環境を整えてあげるのは動物の生存にとって不可欠です。
もともとパンダは中国の四川省・甘粛省・陝西省に生息している動物です。そのうち75%は四川省に生息しています。山地を好み、海抜1500メートルから4000メートルの高地で生活しています。こうした背景もあり、中国のパンダ基地のほとんどは山の多い四川省にあります。
四川省などではまれに、野生のパンダが山地の民家の庭などに出没し、ニュースになることがあります。野生のパンダの生息地は、人目にほつくことがない山奥です。中国ではこうした地域にパンダ基地を設けているので、当然パンダにとっては住みやすい環境となっています。
そうした環境面での条件を考慮してか、中国のパンダ基地も都市部からかなり離れた自然の豊かな場所に設置されています。こうした環境という角度から考えると、中国のパンダ基地と日本の動物園では全く異なります。
上野動物園と神戸王子動物園は、都市部の最寄り駅から徒歩数分と非常にアクセスが便利です。観光客からすればアクセスが良いに越した事はありませんが、必ずしも人が住みやすい環境がパンダにとって適した環境であるわけではではありません。
パンダの飼育法の違い
日本のパンダと中国のパンダの間には大きく異なる点があります。日本のパンダは白黒がはっきりしているのですが、中国のパンダの多くは白い毛の部分が茶色くなっています。
その結果、パンダ基地のパンダを見に行った日本人が失望してしまうこともありますが、中国の検索エンジン「百度」で調べてみると、パンダの体は洗いすぎない方が良いという意見が出ています。
パンダの体から分泌される油成分にはパンダを病気から保護する作用があるため、頻繁にパンダの体を洗うと、その油が落とされてしまい、免疫能力が下がってしまうと説明されています。
観光客としては、白黒はっきりしたパンダが見たいという気持ちがあるのは否定できませんが、パンダの健康を考えれば頻繁に体を洗わない方が良いということです。
パンダ基地の存在
中国にはパンダ基地というものが存在します。中国語では「熊猫基地」(xióng māo jī dì)といいますが、パンダ基地とは、その名の通り「中国でパンダを保護するために繁殖や研究をおこなっている施設」のことです。
パンダ基地はパンダのために設けられた施設であり、他の野生動物園とは全く性質が異なります。他の動物園であれば、パンダ以外の様々な動物も管理する必要があります。パンダ基地の場合はパンダを中心にして考えることができ、よりパンダに適した環境を整えることが可能です。
日本には動物園でパンダを見ることができても、パンダ専門の施設というものは存在していません。こうした点から考えても、中国はパンダを繁殖させるのに最もふさわしい環境を整えています。
パンダ同士で遊べる
人間の子供も同じくらいの年の子供たちがいて、いつも遊びながら楽しく暮らしているとのびのび育ちます。仮に子供が他の子供たちとほとんど接することなく育ったとしたら、精神的に不健康であるといわざるを得ません。
同じようにパンダも自分の周りにたくさんパンダがいて、いつも楽しく遊べるとのびのび育ちます。中国のパンダ基地では、子供のパンダ同士がじゃれあっている姿を見ることができます。
すでに多くのパンダが繁殖しており、普段から他のパンダと接することができる環境が整っていることも、パンダがよく育つ要素の一つです。
中国でパンダを見学する
中国では国内の至る所にある動物園で、パンダを見ることが可能です。しかし中国国内の動物園の場合はパンダが数頭しかいないため、パンダを見に行くのであればやはりパンダ基地がおすすめです。
中国には四大パンダ基地と呼ばれる施設が存在しており、すべて四川省にあります。それぞれの施設に特有の特徴がありますので、特徴を把握してから自分に合った施設に見学に行くことをオススメします。
以下に挙げるのは2023年6月時点でのデータになります。パンダの数など変更される場合がありますのでご注意ください。
成都パンダ繁殖センター
chéng dū dà xióng māo fán yù yán jiū jī dì
成都大熊猫繁育研究基地
- パンダの数:80頭以上
- メリット:パンダの数が一番多い。生まれたばかりのパンダを含め、様々な年齢のパンダを鑑賞できるのも魅力。成都市内から近くアクセスが便利。
- デメリット:人が多く、特に連休は混雑。観光客に向けた商売の雰囲気が濃厚。夏はとても蒸し暑く、午後は基本的にパンダが出てこない。
都江堰パンダ繁殖センター
dū jiāng yàn xióng māo lè yuán
都江堰熊猫乐园
- パンダの数:20頭以上
- メリット:空気がきれいで、人が少なく、観光客に向けた商売の雰囲気がほとんどない。
- デメリット:子供のパンダがいない。成都の市内から1時間半ほどかかり、車か高速鉄道に乗っていく必要がある。
卧龍パンダセンター
wò lóng guó jiā zì rán bǎo hù qū
卧龙国家自然保护区
- パンダの数:70頭以上
- メリット:パンダの数が多く、最もパンダに適した自然環境。パンダの飼育ボランティアに参加することが可能。
- デメリット:成都市内から2時間で、長距離バスに乗る必要がある。周囲に他に観光できる施設はない。
碧峰峡パンダセンター
bì fēng xiá xióng māo jī dì
碧峰峡熊猫基地
- パンダの数:20頭以上
- メリット:空気がとてもきれいで、夏でも涼しく避暑地にもなる。施設が清潔で人が少ない。パンダの飼育ボランティアに参加可能で、周囲の碧峰峡自然区の観光も楽しめる。
- デメリット:成都市内から2時間半と遠い。パンダの数が少ない。
四つのパンダ基地の特徴について取り上げました。それぞれに特有のメリットとデメリットがあるので、自分に合ったものを選びましょう。
成都のパンダ基地について
旅行者にとって一番行きやすいのは、成都のパンダ基地でしょう。成都のパンダ基地は成都市の中心部から15km離れた所にあり、公共機関で1時間ほどで到着します。
成都の国際空港や市内から地下鉄に乗って「熊猫基地站」(xióng māo jī dì zhàn)で降り、パンダ基地行きのバスに乗ると便利です。基本的にパンダ基地にはジャイアントパンダかレッサーパンダしかいません。パンダだらけです。
一番人気のパンダの飼育部屋
パンダ基地の中でもとりわけ人気が高いのは、赤ちゃんパンダがいる飼育部屋です。タイミングが合えば赤ちゃんパンダが群れで遊んでいるところに遭遇できるでしょう。赤ちゃんパンダは中国でしか見られないので、わざわざ中国まで来た甲斐があったと感じる瞬間です。
パンダ基地の攻略法
パンダは昼から寝る動物です。よって午前中しか活動しません。もちろん午後からでもパンダ基地に入場できますが、パンダはほとんど活動していないので、パンダ基地に行くときは午前に行くとよいでしょう。
攻略についてですが、とにかく一番見たいもの最初に見に行くのがおすすめです。最初に見に行くように計画しておけば、万が一パンダ基地の事情で一時的に飼育部屋などの見学ができなかった場合でも、時間をずらして後で見に行くことが可能だからです。
パンダ基地はとても広大なので、施設内の移動にも時間がかかります。「見たいものは1番最初に見に行く、後回しにしない」これが攻略の秘訣です。
施設内には观光车(guān guāng chē)という、オープンカーがあり、有料ですが移動には便利です。
パンダに近づくには?
パンダ基地にはこのような張り紙があります。「中国の国家農林局の通達で、係員以外はパンダと至近距離に近づくことはできません」という内容です。
「パンダに触りたい、抱いてみたい!」パンダをこよなく愛する人はこのように強く願います。私もパンダ基地に行ったことがあるのですが、パンダに触れることができるというサービスは見つかりませんでした。
パンダ飼育ボランティア
上述したようにパンダ基地の中には、パンダ飼育ボランティアに参加できる施設もあります。中国のアプリで調べてみると、卧龍や碧峰峡のパンダ基地では「饲养员体验」(sì yǎng yuán tǐ yàn)というチケットが別売りされています。値段は700元〜1000元くらいです。
ボランティアに参加すると、係員からパンダの飼育に関する指導を受け、実際にパンダの飼育を手伝います。仕事の内容は主にエサの準備です。ボランティア活動が完了した後、パンダと一緒に写真を取ることができると掲載されていました。
しかし「パンダを抱きしめるなどの濃厚接触は固く禁止します」とも書かれています。
日本からのツアー
日本のウェブサイトでは、パンダと触れ合う旅行ツアーサービスが掲載されています。こうしたツアーに関するウェブサイトを見ていくと、パンダの飼育のお世話を手伝うボランティア活動に加わり、その後実際にパンダに触ったり写真を撮ったりすることができると掲載されています。
中には下記のようなネガティブな意見も出ているため、こうしたツアーを利用する際は十分に事前調査を行いましょう。
- ボランティアとして労働力を提供したにもかかわらず、高額の費用を支払わなければならない
- 写真を撮るときにはパンダは下を向いていて思うように撮影できなかった
- ビニール手袋をした状態でパンダにタッチすることしかできなかった
まとめ
今回は中国のパンダについて紹介しましたが、パンダを見学しようと思うなら中国のパンダ基地に行くのが最も良い選択です。パンダの数も多く、赤ちゃんパンダを見られるというのは大きな魅力です。
パンダ吉が多い四川省は、グルメや自然の豊さの観点から見てもとても魅力的な観光地です。パンダ基地に行くのであれば、それぞれの場所の特徴をよく理解したうえで、自分のニーズに合った場所を選ぶようにしましょう。