古代中国の美女の真実:4大美女の魅力と現代の美の定義

  1. 中国歴史・民族

人類史においてはどの時代でもどの国でも美女はもてはやされました。ただ美人だったというだけで歴史に名を刻みこんだ人も少なくありません。

中国にも歴史に名を残す美女がいました。美女を形容する言葉は今でも使われ、現代社会にも影響を与えています。

古代中国の美女の真実:4大美女の魅力

中国語での美しさを表す三つの漢字

中国の歴史背景を見ていくと、今と昔では美人の定義にいくらか違う部分があることが分かります。

中国語で美しさ「」(měi)を表す漢字は3つあります。それは()と(jiāo)と(yàn)ですが、それぞれどのような時に使うのでしょうか?

丽(lì):全体的な美しさ

1つ目の()というのは「全体的な美しさ」を表わすのに用いられます。スタイルが良いなどは関係なく、顔立ちを含め全体的なイメージが華憐であれば()と表現されます。現代ではスレンダーな場合を指します。

娇(jiāo):愛くるしさ

2つ目の(jiāo)は「愛くるしさ」を表わすのに用いられます。若さに伴う天真爛漫故な魅力が(jiāo)という漢字によって表現されます。

艳(yàn):スタイル重視の美しさ

3つ目の(yàn)は「スタイル重視の美しさ」を表わすときに用いられます。スレンダーを指すのではなく、出るところは出てへこむところはへこんでいる美しさです。

男性を虜にして魅了するような美しさを指すので、日本語では「艶めかしい」と表現されるような美しさを表現するときに使われます。

これらの3つの単語で表現されることが多い中国の美女たちですが、実際にはどんな人がいるのでしょうか?

中国古代の美女

中国の4大美女とは?

中国4大美女といわれる女性たちを紹介します。

楊貴妃:世界三大美女の一人

yáng guì fēi

杨贵妃

その名の通り、楊貴妃です。唐の第6代皇帝の玄宗(xuán zōng)が寵愛した女性で、美人の代表とされている人物です。日本ではクレオパトラ、小野小町と並んで、世界三大美女として知られている人物です。

王昭君:前漢時代の皇帝の妻

wáng zhāo jūn

王昭君

前漢時代の皇帝が、当時の美しい女性たちの中から選び抜いて自分の妻としたと言われている女性です。

西施:春秋時代の美女

xī shī

西施

春秋時代の美女です。中国では4大美女の中でこの西施が最も美しかったといわれています。写真や当時の人物画が存在しているわけではないので、根拠は分かりません。

貂蝉:三国志の美女

diāo chán

貂蝉

中国4大美女に数えられながら、実在の人物ではありません。この女性は日本で三国志といわれる三国演义(sān guó yǎnyì)の中に出てくる美女の名前です。

三国志の中でも存在感のある吕布 (lǚ bù)と董卓(dǒng zhuó )がこの一人の女性を取り合う姿が描かれているので、中国人の「どれだけ美しかっただろう」という妄想が膨らみ、4大美女に数えられるまでになったようです。

日本や中国の歴史ゲームで、こうした美女たちが登場することも少なくありません。ゲームで描かれている姿や、テレビドラマで美しい女優が演じるこれらの女性たちの姿は、現在の美女の定義にスッポリはまるものです。

美女の真実の姿:現代の美女との違い

ところが中国の歴史家によると、必ずしも中国4大美女は現代の美女の定義に当てはまるわけではないようです。なぜでしょうか?

古代の美の基準

中国語で表現してみましょう。

yīn wèi gǔ dài zhōng guó , yǐ pàng wèi měi

因为古代中国,以胖为美

古代中国では太っていることこそ、美しかったから

これは中国に限らず、日本やアフリカでもいわれていることです。古代の文献を見ると常に太っていることと美しさとが結び付けられています。

当時多くの女性は食糧不足と労働で痩せていました。ただし貴族の女性は馬に乗り、衣食に困らない生活(衣食无忧:yī shí wú yōu)が送れたため、ふくよかな人が多かったようです。そのような憧れの生活が送れる女性を美しいと感じる文化だったわけです。

美女の内面の美しさ

もう一つ歴史家が口をそろえることは、4大美女はいずれも男性から寵愛されていたことです。よって古代美女には次のような特徴もあったであろうと言われています。

gǔ dài měi nǚ dōu yǒu měi hǎo de tè zhì

古代美女都有美好的特质

古代の美女はみな素晴らしい特質を持っていた

中国の4大美女たち顔立ちが良く、当時の基準でただ魅力的な外見だったというわけでないようです。主君に忠節を尽くしたり、自分の美しさをひけらかすことがなかったなど、内面の美しさも共に描かれています。これらは現代の美の定義とも合致するでしょう。

美女の定義から学べる教訓

ここまででは古代中国でどんな人が美女とみなされていたのかを考察しました。ありがたいことに、今はほとんどの女性は衣食住に困ることはありませんので、昔の価値基準からすると現代人は美女だらけというわけです。

外面の美しさの定義は変化します。であれば、どの時代でも共通する「内面の美しさ」こそ追求したいものですね。

現代の美女

日本と中国の美人観の違い

美に対する基準は時代によって変わると述べましたが、現代においても日本と中国では美に対する基準が若干異なります。

中国では高身長も美人の条件

日本人が美人について語るときは顔立ちや肌の美しさに着目することが多く、美しいとされる女性の紹介にしても、顔立ちの良さや美肌、ファッションに注目が集まります。他にも気配りができるか、美しい立ち居振る舞いができるかどうかも美人の条件となります。

中国人は小顔、歯並び、美肌や顔立ちの良さはもちろん、体全体の美しさが美人の基準に含まれています。実際にSNSでも、全身の写真を公開しているインフルエンサーが多い傾向にあります。

日本との一番の違いは、高身長が条件に入っていることです。日本では高身長はそれほど評価基準として重要ではありませんが、中国では高身長で足がまっすぐな女性が好まれる傾向にあります。

美人観がファッションに与える影響

そうした美に対する基準の違いが、ファッションにも影響を及ぼしています。

日本人が体型を強調しないファッションを好むのとは対照的に、中国ではファッションもスタイルの良さがわかるデザインのものが好まれ、体の線がくっきり現れるようなデザインを身につけるインフルエンサーが多くなっています。

中国においてはスタイルの良さが重要な要素となっているわけです。確かに中国の美女にはスタイル抜群な女性が多く見受けられます。

ところで中国の料理は炒め物などの脂っこい料理が多いのに、なぜスタイルを保っていられるのでしょうか。

中国の美女はなぜスタイルが良い?

中国に美女が多いのは決して偶然ではありません。そこにはれっきとした理由があります。

中国人の美意識は日本人に比べて非常に高くなっています。リサーチ会社が実施した調査によれば、中国人の美容食品を購入したことのある人の比率が日本人の約3倍になっているようです。

美しさを保つための食事へのこだわり

中国には医食同源(yī shí tóng yuán)という言葉があります。健康と食事は深いつながりがあり、食事を改善することで健康を保つことができるという考え方です。

この考え方が美容にもつながっていて、中国には美しさを保つために食事にもこだわり、体の中から美しくする努力をしている人がとてもたくさんいます。真に美しくなるためには、まずは食事に十分に気を配るべきであるということです。

では、中国では美しさを保つための食事として、何が重視されているのでしょうか?

【薬膳に使われる食材】

中国では、薬膳に使われる食材を日常的に摂る食習慣があります。その代表的なものが火鍋です。薬膳の食材には、以下のものがあります。

  • 枸杞(gǒu qǐ;クコの実):ビタミンAが豊富に含まれ、皮膚の粘膜を良い状態に保つ
  • 龙眼(lóng yǎn;龍目):細胞の再生を助ける
  • 党参(dǎng shēn ;トウジン):抗酸化作用に優れている

【肌に良い食材】

中国では豚足や鶏皮など、コラーゲンがたくさん含まれている肉が日常的に食べられています。その成果もあってか、肌にハリやツヤがある人が多くいます。

【種々多様なお茶】

中国でよく飲まれているお茶にも、健康によい成分がたくさん含まれています。緑茶には抗酸化力による美肌効果。ウーロン茶には体脂肪の減少効果。ジャスミン茶には消化促進作用。プーアル茶にはむくみ防止等の効果があります。

中国の美女たちは、その人間離れした美しさゆえに「チャイボーグ」といわれていますが、その影には毎日の生活を徹底的に管理するという多大な努力があるのです。

多民族の特徴を反映した美しさ

日本人も中国人も同じ黄色人種ですが、単一民族である日本人に対し、中国は多民族国家です。

中国には漢民族を含む56の民族が存在していますそれぞれの民族に特有の身体的特徴があり、異なる民族同士が結婚して子供を産むときに、それぞれの民族の特徴が子供に反映されます。

もちろん日本でも国際結婚は珍しい話ではありませんが、中国には様々な民族が存在することから、多種多様な民族の特徴を反映させることができる美人も多くなっています。

中国の整形

中国の整形事情

美意識がとても高い中国においては、美しくなるために美容サロンに通ったリ、整形を試みる人も数多くいます。

美容サロンのことは中国語で「美容院」(měi róng yuàn)といいます。整形のことは「整容」(zhěng róng )といいます。

中国では毎年100万人以上の人が整形をするといわれており、その数は年々上昇傾向にあります。ある統計によれば、2022年には340万人が整形したとのこと。2023年現在では、中国国内で既に2200万人以上の人が整形経験があるということです。

既に経済大国となっている中国において、人々は経済的に豊かになって美を追求する余裕ができたことから、中国の美容業界の市場規模はますます大きくなっていくのでしょう。

美を追求することの弊害

美しくありたいと思うのは、人にとって自然の欲求で、実際に美しくなれればそれはとても素晴らしいことです。しかし美しさを追求するがあまり、トラブルが生じることもあります。

その中には、一生かかっても取り戻せないほどの重大な失敗や、命に関わる失敗もあります。

整形の失敗

中国語でやけど等のけがや整形手術に失敗して顔が変形してしまうことを「毁容」(huǐ róng)といいます。すでに中国国内では、20万人もの人が整形手術に失敗しているといわれています。

整形手術に失敗したことからくる心理的ダメージは計り知れないものがあり、そのための賠償責任など数多くの問題が引き起こされています。

中には整形手術を繰り返すことで、体に多大な負担がかかり、命を落とす人も出てきています。健康的な生活をすることで、美を作り上げると言う考え方はとても道理にかなっていますが、美を得るために健康や命が犠牲になってしまうと言うのは、なんとも残念な話です。

行き過ぎた写真の加工

中国では自分をよく見せようとするあまり、写真を加工しすぎてしまうケースが度々見受けられます。例を挙げると…

ある男性がインターネットを介して知り合った女性と親しくなり、その女性に会いに行くことにしました。その女性は別の省に住んでおり、会いに行くためには飛行機に乗らなければなりませんでした。

この男性は写真で見たその女性をとても気にいっていて、多くの犠牲を払うとしても、ぜひとも会いたいと思っていたのです。しかしやっとのことで目にした女性の顔は、インターネット上の写真とは全く別のものでした。

「裏切られた」と感じた男性はひどく憤慨し、女性を殴ってしまいました。結果として警察沙汰になり、中国全土にこのニュースが広く知られることとなりました。

別のケースです。就職活動していた女性が面接先に提出した写真が加工しすぎていて、実際の顔と全然違うことが問題となり、それが理由で面接不合格になったという事例もあります。

自分を良く見せたいと言うのは自然な気持ちですが、その気持ちが強すぎてしまうと、他の人を傷つけたりトラブルを引き起こす元ともなります。

まとめ

今回は中国の四大美女について紹介しました。写真すらないこれらの女性たちですが、これらの女性たちの美しさは中国の歴史に大きな影響与え、現在でも語り継がれています。

美の基準は時代や場所によって異なることと、それを追求しすぎることに関する弊害、さらに決して朽ちることのない内面の美しさについても考えました。

今回の記事は中国語の勉強としてとても参考になるものですが、それ以上に1人の人間としてどのように美に対して向き合うかということに関しても大切なことを教えてくれるものとなっています。

※2023年8月に執筆された記事です

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