中国の科学技術の進歩は非常に速く、世界をリードする経済大国となりました。最先端の技術がいち早く取り入れられ、独自の技術も開発されています。その反面、こうした技術が食文化に悪影響をもたらすことがあります。
中国の驚きの食文化:人工卵の製造方法
目次
科学技術の食品への応用と悪用
健康的においしいものを食べたいというのは、すべての人に共通している願いですが、食品の製造に関して科学技術が悪用されることがあります。
今回の記事では、中国の卵・水・油等の基本的な食品に関して紹介します。特に中国に行く予定のある方には是非じっくり目を通していただきたいと思います。
近年、中国で大きな問題になったのが、(假鸡蛋;jiǎ jīdàn)/(人造蛋;rénzào dàn)といわれる「人工卵」が作り出されたことです。
中国の人工卵とは?
これは人の手によって作り出された卵で、ニワトリに卵を生ませるよりコスト(成本;chéng běn)が安く、ニワトリを育てるより儲けが出るようです。2010年あたりから市場に出回るようになりました。
人工卵の製造方法
では、どうやって人工卵を作るでしょうか? 人口卵の製造方法は中国のサイト検索で知ることができます。中国のネット辞典(百度百科;bǎi dù bǎi kē)にその作り方が以下のように載せられています。
卵の殻の作り方
卵の殻は中国語で(蛋壳:dàn ké)といいます。
jiǎ jī dàn de dàn ké yóu tàn suān gài jí shí là fěn zào chéng de
假鸡蛋的蛋壳由碳酸钙及石蜡粉造成的
人工卵の殻は炭酸カルシウムとパラフィン粉によって作られる
(钙; gài)はカルシウムの事です。良く使われるので覚えておきましょう。
卵白の作り方
中国語で卵白は(蛋清:dàn qīng)といいます。
dàn qīng zhǔ yào yóu hǎi zǎo suān nà zài jiā shang míng jiāo sè sù děng zào chéng
蛋清主要由海藻酸钠、再加上明胶、色素等造成
卵白は主に海藻からとられた酸化ナトリウムにゼラチン、色素などで作られる
(钠; nà)はナトリウムの意味です。
卵黄の作り方
卵黄は中国語で(蛋黄:dàn huáng)といいます。
dàn huáng de zhǔ yào chéng fèn shì hǎi zǎo suān nà zài jiā shang rú níng méng huáng yí lèi de sè sù hòu , rán hòu fàng rù lǜ huà gài róng yè níng gù ér chéng
蛋黄的主要成份是海藻酸钠、再加上如柠檬黄一类的色素后,然后放入氯化钙溶液凝固而成
卵黄は主要成分の海藻からとられた酸化ナトリウムにレモン色の色素を加え、塩化カルシウムの中で固まらせる
(柠檬; níng méng)はレモンの意味です。
人工卵の見た目と味
上記の方法で作られた卵は本物の卵と全く区別がつきません。見た目が同じだけでなく、割った時の様子、フライパンで焼いたときの様子、味までほぼ一緒なのです。
中国に住んでいるなら知らない間に人工卵を食べていたという事もあるかもしれません。
人口卵の問題点
売り出す前に国が定める安全基準をクリアしたうえで、人工卵である事をとはっきり表記し、その製造過程や成分をはっきりと伝えているのであれば問題なりません。
問題なのは、こうした人工卵が本物の卵として売られていることです。当然ですが詐欺行為であり、顧客の権利と健康を脅かすものです。人口卵そのものにはほとんど栄養がないといわれており、その中に有害物質が入っている可能性も否定できません。
一部の貪欲な製造業者が人口卵を巧みに自然の卵と一緒に市場に入れ込むことにより、消費者の間では不安が募るようになっています。消費者たちは、自分で人工卵を見分ける方法を理解しておかなければなりません。
本物と偽物の見極め方
本物の卵から人工卵を見分ける方法はあるのでしょうか?2つあります。
yáo dòng shí méi yǒu shēng yīn
摇动时没有声音。
振った時に何の音もしない。
中国語の(摇动;yáo dòng)は振るという意味です。
安い卵が売っていたらまずは振ってみましょう。ブルンブルンと中身が震える音がしたら本物です。なかったら人口卵の可能性があります。
jiān jī dàn de shí hou yǒu pào mò
煎鸡蛋的时候有泡沫。
焼いたとき泡が出る。
焼いてみましょう。人工卵は焼くと若干ですが、卵白の部分に泡が出ます。
中国語の(煎;jiān )は「焼く」当いう意味です。焼き餃子のことを(煎饺;jiān jiǎo)と呼んだりします。
中国の卵事情
日本人の食文化の中には「卵かけご飯」があります。多くに日本人から愛されていますが、基本的に中国の方はこうした食べ方はしないようです。
「卵かけごはん」について、中国の人に話すと「気持ち悪い」「考えられない」などの反応が返ってくることもあります。
卵を生で食べない理由
では、なぜ中国の食文化では卵を生で食べないのでしょうか?それにはしっかりとした理由があります。実は、中国の市場で売られている卵には生で食べられるものがほとんどないのです。
中国に行く機会があるのであれば、スーパーなどで確認してみてください。一般的に中国のたまご(鶏卵)は、「生で食べられる」ものと「生で食べられないもの」の2種類があります。
「生で食べられるたまご」はパッケージの上に(可生食;kě shēng shí)と表示されていますので、賞味期限内で且つ冷蔵保存がしっかりされているものであれば、生で食べる事が出来ます。
しかし一般的に、中国のスーパーや市場で売っているたまごは、生食が出来ないものがほとんどです。
上海や北京などの日本人が多く住む大都市にある大手スーパーなら、生食できるたまごもよく売っています。しかし他の都市の一般のスーパーでは、たまごは冷蔵保存もされておらず、基本常温保存です。生食可と書かれていないものは、生で食べるのは大変危険です。
中国で安全に卵を食べる方法
中国で卵を食べる場合、たいていは「ゆでたまご」か「たまご焼き」にして食べます。麺類にたまごを割って入れて、茹でて火が通ったものを食べる事もあります。こういう風に熱を通してあれば安全です。
中国と日本の食品事情の大きな違いと危険性
中国の卵事情について紹介しましたが、日本では当たり前に受け入れられているようなことが中国では受け入れられていないということがたくさんあります。
食べ物など直接口に入れる物の場合、日本では大丈夫だからといって安易に口に入れると命に関わるトラブルが生じることもあるので注意してください。私の知り合いも食事後急に体調をくずし、救急車で緊急搬送されました。原因は卵の安全な調理法が確保されていなかった事でした。
特に中国に行く機会がある方は、自分の身を守るためにもしっかりとした知識を得てから向かうようにしましょう。以下に、日本とは大きく事情が異なるものを紹介します。
中国の水事情
日本では、水道水をそのまま飲むことができます。日本人にとっては当たり前の事ですが、中国の水道水はそのまま飲んではいけません。お腹をこわしてしまいます。なぜなら消毒が十分にされてないので雑菌が混ざっているのです。
中国ではよく水道管修理などで水が停められることがあるのですが、修理後に水を出すと茶色い水がドバっと出てくることもあります。一応無色透明ではあっても、生臭い臭いがすることがあります。飲用には適していません。
中国での水の飲み方
では中国で生活する場合、どのようにして水を飲むのでしょうか?
多くの人は水道水を飲む場合、電気ポットなどに水道水を直接注ぎ、沸騰させてから飲むようにしています。そのため、中国では白湯(白开水;bái kāi shuǐ)を飲む人がとても多くいます。
日本との違いとして、中国では水筒に水やお茶などを入れて、持ち歩く人が非常に多くいます。中国の空港、高速鉄道、長距離列車の中には、必ずといっていいほど、給湯器が備え付けられています。
ただ、沸騰させたとはいえ、十分に消毒されていない水を飲むことには不安があります。私の知り合いでも中国で生活するようになって、結石になってしまったという方がいます。結石は中国でとても多い病気です。その理由は水の質がよくないからということです。
水分を取る事は生きていく上で大変重要で、毎日のことです。中国で生活する機会があるのであれば、信頼できる水を飲むようにしましょう。
中国で信頼できる水を入手する方法
こうした背景もあり、中国でも多くの人がミネラルウォーター(矿泉水;kuàng quán shuǐ)を飲んでいます。
中国の各都市には、大きなボトルに入ったミネラルウォーターを家まで持ってきてくれる業者がたくさん存在しています。中国では水道水の質が良くないために、こうしたサービスは非常に手軽に利用することができ、電話一本で持ってきてくれます。
スーパーやコンビニ、その辺の小売店でも売られていますので、こちらもおすすめします。ブランドも色々あり、一般的に1本(500ml)あたり2元程度(40円程度)で購入できます。
こうしたミネラルウォーターの質は信頼できるものです。水は本当に大切なので、しっかりお金を出して購入するようにしましょう。
「地溝油」について
以前、中国の屋台や安い食堂では(地溝油;dì gōu yóu)と呼ばれる食用油が使われていると問題になりました。地溝油とは、日本語に直訳すると「どぶ油」です。地溝油とはいったいどんなものなのでしょうか?
「原料は、生ごみや残飯、低品質の食肉、揚げ物などに使われた廃食油などで、これらを再精製し、一般の食用油より安く売られている」とのことです。
安全性が全く保証されていないため、非常に問題視されています。長期的に摂取すると、消化器へ悪い影響を与えたり、がんの発生を助長する可能性があります。
中国政府は、地溝油売買の取り締まりを強化していて、地溝油の生産・販売にかかわる人が数十人逮捕されたという報道も出ています。回収された地溝油は100トンにものぼり、逮捕者のネットワークは浙江、山東、河南など14の省に及んでいるようです。
中国料理には油がたくさん使用されます。その油の安全性が保証できないと、その食生活は非常に危険なものになります。対策としては、外食を控えること、あまりにも安いメニューは頼まないようにするなどがあります。
特に、長期に渡って中国で生活する方は注意が必要です。「安いから」という理由で屋台や安い店で外食を続けていると、身体を壊してしまいます。
安全な食品の購入方法
ここまでで卵・水・油について紹介しました。残念ながら中国国内では全ての食品の質の良いものであるわけではありません。質は自分でしっかり判断する必要があります。では、どうすれば安全な食品を購入できるでしょうか?
安すぎる物には要注意
基本的に「安すぎる物を買わない」「信頼できるブランドの物を購入する」ことで対応することが可能です。良質の物を手に入れるためにはある程度お金を出す必要があります。
中国語には(一分钱一分货 ;yī fēn qián yī fēn huò)という言葉があります。「安ければ安いだけの品質のものしか得られない」という意味ですが、まったくもってその通りです。
また(贪小便宜吃大亏;tān xiǎo pián yí chī dà kuī)という言葉もあります。「安物買いの銭失い」という意味です。
中国には日本では考えられないような値段で物を購入することができます。あまりの安さに嬉しくなって買ってしまいがちですが、安すぎるものには必ず落ち度がありますので、品質をよく考えましょう。
可能であればタオバオ等でネット購入するのも良い方法です。ネット購入の場合は、売上数や顧客の評価を見ることができますので判断の助けになります。
食品の安全問題が中国社会に及ぼした影響
近年、中国の食材や食品の安全性に関しては大きな問題が生じてきました。この記事を読んでいて、中国に行く予定のある人は不安を感じるかもしれません。
こうした良くないことが生じたからこそ、生じてきた変化もあります。
高まる健康ブーム
中国では若年層を中心に健康ブームが広まっています。実際に中国の有名な「天猫ダブルイレブン」ではサプリメントや栄養補助食品の売上が急増していて、購入者の多くが若年層だったということです。
その背景には、現在の中国の若者を取り巻く受験競争の激化、過酷な労働環境、美意識の向上、コロナウイルス流行による意識の変化等の要素があります。
中国では若年層が健康の大切さを認識するようになってきており、また、SNS等による情報網の発達もあり、悪質な商品は淘汰されやすい社会環境へと移行しつつあります。
良質な食品を自分で選ばなければならない環境だからこそ、消費者の目が非常に肥えてくるようになりました。
まとめ
中国において科学技術が悪用されたことも事実ですが、ここ数年では消費者が健康的な食品を得るために科学技術を利用するようになっています。
もし中国に行く機会があれば、自分の身をしっかりと守りつつ、是非こうした食品に関する意識の変化に注目してみてください。