インターネットが普及するようになってから、ネット社会で用いられる「ネット用語」がたくさん出現するようになりました。
中国語にもたくさんのネット用語があります。教科書やテストにはほとんど出てきませんが、中国では非常に良く用いられています。
日本と中国のネット用語の違いと誤解:「草」の意味と使い方
目次
日本由来のネット用語
ネット用語は中国語で「网络用语」(wǎng luò yòng yǔ)といいます。
漢字は中国から日本に伝わりましたが、ネット用語の中には日本から伝わった用語もたくさんあります。
なぜ日本のネット用語が中国に伝わるのかというと、日本の漫画やアニメは中国でもとても人気があり、これらの日本の文化を受け入れる途上でネット用語も伝わるようになったからです。
日本から伝わったネット用語の例
日本の「お宅」という言葉は、中国に伝わり「宅男」(zhái nán)という言葉で使われています。この言葉はすでに中国のどの年代の人にも受け入れられています。
また日本人がイケメンを指して使っている「顔面偏差値」という言葉が中国に伝わり「颜值高」(yán zhí gāo)という表現になりました。
ただ日本から伝わったネット用語であっても、日本語の意味と異なるものもありますので、注意が必要です。
「草」の起源:日本のネット文化とその影響
代表的なものが、日本のネット用語「草」です。これは笑いを表す「wwwwwww」が草に見えることから「・・・・(草)」と表現されるようになりました。
中国にはニコニコ動画と同じような「哔哩哔哩」(bì li bì li)がありますが、その画面上でも「草」という書き込み文字が出てきます。
一見すると日本と同じように単に「笑い」を表す際に使われているように感じます。しかし実はこれ、日本人がネットで使う用法とかなり違うのです。
日本の場合は、純粋に面白いとか、これは笑えるという意味で「草」が使われ、悪意はあまり感じられないことでしょう。面白いことをしてくれた人への一種の評価にさえなっているかもしれません。
しかし中国人がネットで「草」を使う場合は、必ず悪意が含まれているのです。
中国での「草」の意味と使い方
中国のネット用語の中で「草」は汚い言葉です。それは「草」の中国語の発音が(cǎo)で相手をののしるときに使う「操」(cào)という言葉と同じ発音であることが原因です。
ここでは表現できないような、もっと汚い意味もあります。同じ発音の「草」を中国人が使うとき、このような相手を見下しながら罵っている意味になっているようです。
日本由来のネット用語であっても日本から中国に伝わる過程で、汚い言葉に変わってしまっているので注意が必要です。中国で「草」という言葉の位置づけは、完全に「骂人」(mà rén)つまり「人をののしる」ときの言葉になっています。
中国のネット上で日本の動画を掲載するときは、投稿者から「日本人がネット上で“草”を使うときは、単に笑いという意味しかないですよ」という説明があるほどです。
ネット用語に限った話ではありませんが、日本語と中国語では漢字は同じでも意味が全く異なることがありますので、しっかり確認するようにしましょう。
英語から伝わったネット用語
中国では、英語由来のネット用語も多く使用されています。
「栓Q」=「サンキュー」
これはあるネットユーザの言う「Thank you」の発音が「栓Q」(shuān Q)の発音に似ていて「とてもかわいい」とのことで広がりました。
「NBCS」=「誰も気にしない」
「NBCS」は、英語の「Nobody Cares」の略語で「誰も気にしない」という意味です。英語圏ではこうした略語はほとんど使われていないそうですが、中国のネット上では大流行しています。
中国語由来のネット用語
こうした外国語由来のネット用語があるとはいえ、中国語由来のネット用語も多くあります。
数字を用いたネット用語
233=「笑い」
これは絵文字がルーツになっています。中国の掲示板などで使われる「大笑い」の絵文字には233のコードが振られています。それで、日本でいう「笑」や「www」の意味を持つようになったようです。
555=「泣き声」
555=「呜呜呜」(wǔ wǔ wǔ)で泣き声を表現しています。日本語だと「うぅうぅうぅ」というところですね。
666=「すごい!」
6 (liù) は 「手慣れている、すごい」と言う意味の「溜」(liù)と同音であることから、オンラインゲームの世界などファインプレーが出た時の褒め言葉「ナイス!」「神!」というニュアンスで使われているそうです。
「溜 」の本来の意味は「滑る」や「逃げる」ですが、その意味が転じて現在の口語では「すごい」「手慣れている」というような意味としてよく使われます。
「666」は世界的に人気のある「LOL」(英雄联盟)から流行りだした表現とのこと。今ではネット社会を飛び出して広く中国で使用されています。
ピンインの頭文字を用いたネット用語
ピンインの頭文字をとって略語にしたネット用語もたくさんあります。
dbq = 「对不起」(duì bù qǐ)
“对不起“は「ごめんなさい」「すみません」という意味です。”dbq“と書いた場合は、もっと軽いニュアンスになります。「ごめんごめん」とか「悪い悪い」といった感じですね。
nsdd =「你说得对」(nǐ shuō dé duì)
漢字で書くとすぐわかりますね。「(あなたの)言うとおり」という意味です。
szd = 「是真的」 (shì zhēn de)
「そのとおり」とか「本当に!」という意味です。
cdx = 「处对象」 (chù duì xiàng)
「恋愛対象」の意味で、恋人関係を表します。中国語の「处对象」は「谈恋爱」と同じ意味で使われ、遠回しな恋愛表現になります。ちなみに中国語で「対象」という場合は、恋人や配偶者を指します。
sqgg = 「帅气哥哥」 (shuài qì gē gē)
「かっこいいお兄さん」の意味です。
兄弟関係を表す略語
dd = 「弟弟」 (dì dì)
「弟」や「年下の男性」を指して用いられます。
gg = 「哥哥」 (gē gē)
「兄」や「年上の男性」を指して用いられます。
mm = 「妹妹」 (mèi mei)
「妹」や「年下の女性」を指して用いられます。
jj = 「姐姐」 (jiě jiě)
「姉」や「年上の女性」を指して用いられます。
xdjm =「兄弟姐妹」 (xiōng dì jiě mèi)
「兄弟姉妹」という意味・呼びかけです。実の兄弟姉妹でなくても、親近感を表したいときに「皆さん」という意味で用いられます。
褒め言葉や応援する表現のネット用語
「赞」(zàn)=いいね!
SNSで良く用いられる「いいね」の中国語版です。「点赞」で「いいねを押す」という意味になります。「いいね押すよ!」といいたい場合は「给你点个赞」(gěi nǐ diǎn ge zàn)です。
nb = 「牛逼」 (niú bī)
方言由来の言葉で「すばらしい」の意味になります。「牛」とだけ略される場合もあり、この場合は「好厉害」 (hǎo lì hài)と似たような意味になります。
この派生として「rnb」という表現もあります。この場合は英語と混ざって「really 牛逼」となって「本当にすばらしい」という感じになります。
bxcm = 「冰雪聪明」 (bīng xuě cōng míng)
「類まれな才能をもった賢い人」を意味する四字熟語「成语」(chéng yǔ)です。
「给力」 (gěi lì)=イケてる
元々は中国の方言で「すごい、すばらしい」を意味する言葉でしたが、そのご中国全土に広まるようになりました。否定形にして「不给力」( bù gěi lì )というと逆の意味になり「イケてない」という意味になります。
「狠 」(hěn)=えぐい
徹底していて隙がない、派手にやりこめる、とても高い能力を発揮しているなどの意味があります。日本語の「えぐい」とほぼ同じ意味になります。
例)你真是个狠人!(shì ge hěn rén)君はまじでえぐいな!
+U = 「加油」(jiā yóu)
中国語の「加油」という文字は「ガソリンを入れる」という意味ですが、ガソリンを入れると燃料補給になることから「がんばって」の意味でとてもよく使われます。「がんばってね!」という感じで「加油啊!」という表現もよくします。
足し算記号の「+」は(jiā)と発音し、「油」の発音がアルファベットの「U」に近いことから、+U が「加油 」を表すようになりました。
「卧槽」( wò cào)=まじかよ
「マジか!」「すごすぎる!」「やべえ!」などの意味で使われます。
pfpf = 佩服佩服(pèi fú pèi fú)
「佩服」は「感服する」という意味です。「佩服佩服」と繰り返すと意味が強調され「心から感心する」「感服する」といった意味になります。
「网红」について
中国では「网红」(wǎng hóng)という語が非常に良く用いられています。意味は「インターネットセレブリティ」の事で「人気ユーチューバー、人気インスタグラマー、人気ブロガー」等に用いられます。
最近では「网红」の意味がさらに広まり「ネット上で人気のある物事」全てに用いられるようになりました。
「中国人のような凛とした強めの女性をイメージさせるメイク」を指す「ワンホンメイク」という言葉を聞いたことがある方もいると思います。日本でもよく「映(ば)える」という言い方をしますが、「网红」もほぼ同じ感覚も用いられます。
wǎng hóng nǎi chá diàn
网红奶茶店
映えるミルクティーの店
wǎnghóng cài
网红菜
映える料理
アプリ名称の略語
vx = 「微信」 (wēi xìn)
中国版LINEとも呼ばれているアプリです。 海外ではWeChat(ウィーチャット)という名前で知られており、世界で約10億人以上のユーザーが利用しています。
ところで「wx」ではなく「vx」と表記されていることが気になった方もいるかもしれません。
普通であれば「微信」(wēi xìn)も「微博」(wēi bó;ウェイボー)のピンインも「w」で始まっていますので「微博」は「wb」、「微信」は「wx」となるはずです。しかし一般的には「vb」と「vx」が使われています。
その理由は、中国北部の方言の特徴では「v」と「w」の明確な違いはなく、多くの人の「v」の発音が「wei」に近い発音となるから。それで、この呼び方で広まるようになったといわれています。
中国で普及しているインスタントメッセンジャーアプリの名前で、QQは略称ではなく正式名称です。
また、このアプリ関連以外で中国語ではQQという語をよく目にします。この場合のQQは、食感の表現になります。中国語には、グミのように弾力性のある もちもち感を表す漢字がないため、こうした食感を表す場合は「QQ的~」と表現します。
例を挙げると、中国のグミ商品には「QQ糖」(QQ táng)という名前のものがあります。
「抖音」(dǒu yīn)
ちなみに中国発の有名なアプリ TikTok(ティックトック)は、中国語で「抖音」(dǒu yīn)です。このアプリについては特に短縮表記ないようですが、アプリのアイコンはピンイン表記の頭文字”d”から成り立っています。
これ以外にも、中国の検索エンジン「百度」(バイドゥ)には「度娘」、動画サイトの「Bilibili」(ビリビリ)には「B站」といった呼び方があります。
「死」を用いたネット用語
awsl = 「啊,我死了」 (a, wǒ sǐ le)
「あ、私終わった」のようなニュアンスです。中国語では「完了」(wán le;終わった)という言い方もよく用いられますが、それとよく似ています。
xswl = 「笑死我了 」(xiào sǐ wǒ le)
「死ぬほど笑った」の意味です。
【「死」を用いた他の表現】
この2つには「死」という感じが入っていますが、中国語では「死」を用いた表現がとてもよく用いられます。
xià sǐ wǒ le
吓死我了
死ぬほどびっくりした
gāo xìng sǐ le
高兴死了
嬉しくて死にそうだ
まとめ
今回は中国のネット用語について紹介しました。こうして取り上げてみると本当にたくさんありますね。ここで紹介したネット用語は教科書等にはほとんど出てきませんが、ネット社会では非常に良く用いられていますので、知っておくととても便利です。
それぞれのネット用語ができた由来を知っておくと、中国社会に関する理解がとても深まります。自分では使わないとしても、意味だけでも理解しておくと中国語の学習に役立つはず!知識として頭の中に入れておきましょう。