恋愛は人を成長させます。幸せならば他人にやさしくなれますし、傷つけば他人を思いやる気持ちを育むことができます。また中国の恋愛と結婚事情を通して、中国のことをより深く理解することができます。
中国の恋愛事情を徹底解説!『谈恋爱』の真意から現代のカップルトレンドまで
目次
中国の恋愛について
中国語で恋愛は何という?
「恋愛する」は中国語では「谈恋爱」(tán liàn ài)で、中国語の「谈」は「語る、話をする」という意味です。
中国語での「恋愛する」の意味とその背景
直訳すると「恋愛を語る」ですが、日本人私たちの感覚とちょっと違う感じがします。具体的にどういうことなのでしょうか。
「谈恋爱」は一般的に、見ず知らずの男女が知り合い、お互いを理解するまでの過程を指します。この過程は、お互いの心が触れ合い、将来結婚して子をもうけ慈しんでいくための大切な準備段階です。
それで、基本的に中国では男女がお付き合いすることは、結婚が前提となっているわけです。ただ、時代の移り変わりもあり、現在ではその観点も変わりつつあります。中国の結婚事情については後述します。
中国のカップルの公然たる愛情表現
中国に来た日本人の方たちの多くがまず驚くことは、若いカップルは人目もはばからず公共の場で超ラブラブなことです。
たとえば、大学の図書館で、公園のベンチで、そして地下鉄や路線バスで、顔を近づけヒソヒソ話していたかと思えば、キスをし始めたり……。
gōng jiāo chē shàng yī duì qíng lǚ lǒu lou bào bào
公交车上一对情侣搂搂抱抱
路線バスでカップルがいちゃいちゃしています
中国語での「いちゃいちゃ」の表現方法
【搂抱】
「搂抱」(lǒu bào )は「抱きかかえる」「抱き合う」という意味です。「搂」と「抱」はいずれも「抱く」という意味の動詞で、しっかり抱くという感じが伝わってきます。
【搂搂抱抱】
さらに「搂搂抱抱」(lǒu lǒu bào bào )と重ね型にすると「いちゃいちゃする」というニュアンスになります。
中国語では動詞を重ねる表現があり、「搂抱」のように二音節動詞でAABBと重ねると、なんども同じ行為を繰り返す、あるいは行為が長い時間に及ぶという意味合いを含みます。
動詞の「重ね型」にはこのほか、単音節動詞は「AA」とする動詞、二音節動詞でABABとする動詞があります。この場合はAABB型と異なり、「ちょっと~してみる」というニュアンスになりますので、しっかり区別して覚えてくださいね。
【亲】
例えば上述の「キスをする」を表す中国語の「亲」(qīn)。短音節動詞の「亲」は2つ重ねて「亲亲」(qīn qīn)とすると「軽くキスする」というニュアンスになります。
「亲」という字は親しみを表しており「身近な」や「自ら」という意味合いがあります。キスは、本当に親しい相手にするものなのですね。
qīn qīn wǒ
亲亲我
私にキスをして
恋愛感の移り変わりとその背景
しかし、そもそも儒教の影響でとくに女性に対する貞操観念が強いはずの中国の方たちが、いったいどうしてしまったのでしょうか?その理由は、近代中国の歴史と関係があります。
中華民国成立後の女性の開放と自由恋愛
中華民国が成立し封建社会が終焉を迎えると、女性の開放や自由恋愛が叫ばれ始めました。それと同時に国内に流入した欧州映画から大きな影響を受けるようになります。
文革期に比較的開放的だった上海では、時代が変わっても脈々と引き継がれる道徳観念への抵抗として、外灘でいちゃつくカップルが多く出現するようになります。
1978年の開放路線と海外文化の影響
1978年の開放路線が始まると、外国の文化が大量に移入され、カップルのいちゃいちゃぶりにますます拍車がかかるようになります。
伝統を大切にする中国でも、少しずつ異国の文化、習慣が吸収されている様子が伺えます。
中国の結婚事情
中国でも最近では自由恋愛が増えてきているとはいえ、見合い結婚する人もたくさんいます。中国語で、見合いのことは「相亲」(xiāng qīn)といいます。
親からのプレッシャー
子供に結婚させたいがあまり、親が必死で結婚相手を探すというケースも少なくありません。現在の中国の親世代の人たちの間では、子供が一定の年齢になったら結婚し、家庭を持ち、子供を設けるべきだという伝統的な概念を持っている人が多く存在します。
そのため、よその家の子供たちが次々と結婚していき、自分の家の子供がいつまでも結婚しないでいると、安心できないという理由から、ますます熱心に子供に見合いを進めるようになります。
親からしたら面子がないというわけです。中国語で面子は「面子」(miàn zi )といいます。そして面子が立たないことを「没面子」(méi miàn zi )といいます。
特に中国の旧正月などの帰省の時期に子供が実家に帰ってくると、この時とばかりに事前に探し当てていた見合い相手を紹介するという現象が生じています。しかし若者本人に結婚する意思はない場合、こうしたお世話は大きなストレスの元となってしまいます。
レンタル彼女
中国ではこうした旧正月等の帰省の時期に、彼女をレンタルする商売まで出てくるようになりました。帰省の時期にレンタルした彼女を連れて帰り、親のまえで自分にはお付き合いしている人がいるという体裁を取り繕うわけです。
このように特定の期間に彼女をレンタルすることを「租赁女友」(zū lìn nǚ yǒu)といいます。安いコースで1日1000元(約2万円)、高いコースだと3000元~1万元(約6万円~20万円)にもなるそうです。
春節期間中なのでアルバイト料金は高くなります。帰省のための交通費なども、当然、雇う側がすべて負担しなければなりません。移動距離や日程、容姿などの条件によって金額は変動しますが、若者が利用するサービスとしては、かなり高額だといえるでしょう。
ついにはこうした現象を題材にした「租个女友回家过年」(zū gè nǚ yǒu huí jiā guò nián)というドラマまで放送されるようになりました。こうした社会現象は、中国において、家族からの結婚の圧力がいかに強いものであるかということを明白に物語るものとなっています。
お見合いコーナー
その他にも、公園などで毎週のようにお見合いコーナーと呼ばれる催しが開かれている場所もあります。お見合いコーナーは、中国語で「相亲角」(xiāng qīn jiǎo)といいます。
土日や休日に、結婚適齢期の父母やお見合い業者などが一堂に会し、男女のプロフィールを出して、お見合い相手を探します。そこには、年齢、性別、出身地、戸籍情報、年収などが詳しく述べられています。
お見合いプロフィールの例
jiǔ líng hòu shuài gē
90后帅哥
1990年代生まれのイケメン
yī mǐ bā sān
1米83
183cm(身長)
běn kē jiǔ bā wǔ shuò shì
本科985硕士
国内一流大学の修士
【985とは?】
中国国内の一流大学のことを985大学と言います。985として認められている大学は39カ所あります。
【211とは?】
21世紀に向けて政府が重点的にサポートをしていく大学のことを指します。100余りの大学が211として認められています。そして985と211では、985のほうがレベルが高いといわれています。
中国では学歴が非常に重視されているため、こうした学校の卒業生は前途有望です。必然的に結婚に有利と考えられています。
hūn fáng yī bǎi liù shí píng
婚房160平
160平方メートルの新しい家
「婚房」とは購入した後結婚するまで、誰も入居させずに新しいまま取っておかれた家のことです。結婚生活を新しい家でスタートしたいと言う願いをかなえたものです。
yī liáo fú wù yú tóu zī nián xīn liù shí wàn
医疗服务于投资年薪60万
医療関係者で年収は60万元
fù yī xué bó shì mǔ jīng shāng
父医学博士 母经商
父の職業は、医学博士 母は実業家
こうしたプロフィールに掲載された中国語を見るだけでも、たくさんの中国の勉強になりますね。
こうしたお見合いコーナーですが、代表的なのは上海の「人民公園」です。多くの人がプロフィール情報を載せたA4の紙を持参して、ふさわしい見合い相手を探しています。
しかしここで紹介されている人の男女比率は、男性1に対して女性9と、圧倒的に女性が多くなっています。中国の人口統計では男性の方が女性より多いのですが、見合いコーナーに関しては男性の数が圧倒的に少なくなっているのはなぜでしょうか?
この現象には、先ほど言及した結婚に対する資産要求が高くなっていることが関係しています。充分に資産を有していない男性は、お見合いコーナーに自分の情報を載せることすらできないのです。
そのせいで、中国では結婚したくてもすることができない人が、非常に多くなっているのが現状です。
中国では結婚しない人が増えている
中国における結婚件数のピークは、2013年の1346.9万件でした。しかし、その後、結婚する人はますます少なくなっており、年々減少傾向となっています。
2022年の結婚件数は683.3万件で、ピーク時と比べて49.3%減少しています。10年の間に結婚件数が約半分減少しています。
中国ではこのような言葉がよく聞かれるようになりました。
bù hūn bù yù bǎo píng ‘ān
不婚不育保平安
結婚せず、子育てもしない方が平安を保てる
これは中国のネット社会で非常によく用いられている言葉です。
もともと、中国には「結婚して子供を産むことは、老後の自分たちを支えてもらう最大の保障」という伝統的な家族観が存在していました。こうした価値観が崩壊し始め「結婚しない」あるいは「結婚しない方がいい」という考え方をする人が多くなってきています。
これに応じるかのように、親の考え方にも変化が見られています。中国のネットでは我が子に結婚や孫の出産、自らの介護を求めず、自由に生きるよう語った親の動画がヒットし、10万件以上の「いいね」を獲得しています。
中国人が結婚しない理由
結婚件数が大幅に減少していることの理由の一つとされるのが、結婚にまつわる習慣です。
見合いの一二三
中国ではある時期「相亲的一二三」(xiāng qīn de yī ‘èr sān)という言葉がよく聞かれていました。これは結婚するために、男性が満たしていなければならない経済的要求のことです。
1,一套房子(yī tào fáng zi )
持ち家一軒
2,二两车(èr liǎng chē )
二台の車
3,三百万存款(sān bǎi wàn cún kuǎn )
300万元の銀行預金
中国の会社員の平均年収は8.5万元(約170万円)といわれています。こうした男性に対する高すぎる要求が、結婚を考える中国人男性に大きなストレスを与える原因となっています。
「躺平」について
中国社会では「躺平」(tǎng píng)という言葉が注目されるようになりました。「躺平」とは「寝転ぶ」という意味です。
「躺平」の考え方は、家を買わない、車を買わない、恋愛しない、結婚しない、子供を作らない、消費は低水準にするというものです。必要最低限の生活をすることで、資本主義の競争に参加することを拒否する生き方を選択しているのです。
誤解されやすいのですが、この「躺平」の生き方は、社会的に孤立したり仕事をしないで家に引きこもるという意味ではありません。過剰に重視されている物質主義的な考え方に影響されず、経済的な目標を低くして生活をシンプルにし、心の健康を最優先させる生き方です。
中国でこうした「躺平」が増えてきていることの背景として、国内の激しい競争社会が人々に過剰なストレスを与えているという理由があります。
受験地獄、出世戦争に象徴される中国社会の競争関係は過酷で、こうした競争原理から逃れるべく「躺平」という生き方が出てくるようになりました。
就職難
中国では大学生の就職難が社会的問題となっています。
中国は国内の経済を成長させるべく、高学歴の人を増やそうと試みてきました。「人口大国から人材大国へ」というスローガンを掲げ、精力的に大学を増やしてきました。
その結果、2000年時点で約1100校あった大学が、2023年には2800校以上と3倍近くになっています。しかし大学が多くなりすぎてしまったがために、卒業生が望み通りの仕事を見つけることが難しくなってきています。
一生懸命に勉強して大学に入り卒業したとしても、結婚はおろか仕事すら満足に見つけることができないという現実が若者たち重くのしかかります。その結果として、上に挙げたように「躺平」の生き方を選択するようになるわけです。
まとめ
今回は中国における恋愛と結婚事情について紹介しました。その中で、中国の伝統的観点とその変化、国内の経済事情が、現在の中国の恋愛と結婚事情に多大な影響を与えていることが分かりました。
結婚事情はその国の実態を表す鏡のようなものです。中国の結婚事情を理解すると、中国という国についてより深く理解することができるでしょう。