日本の将棋は最年少プロ棋士が誕生するなど話題を集めていますが、中国では日本の将棋はあまりニュースになりません。なぜなら中国には中国古来の将棋があるからです。
今回は中国文化を知るために、日中将棋の共通点と違いについて見ていきましょう。
日本と中国、二つの将棋文化
目次
日中の将棋人気
将棋は日本に古くから根付いた伝統的なゲーム。ご存じの方も多いですよね。
特に日本にはプロ棋士が存在し、プロ棋士たちの対局を通じて将棋自体の普及活動が行われています。対局におけるプロ棋士たちの戦術は日本の将棋ファンから高く人気を集めており、将棋自体の人気に欠かせない存在といえるのではないでしょうか。
将棋はテレビ番組やインターネットでも広く取り上げられており、メディアの影響力も人気に寄与しています。特に人気のプロ棋士たちに関しては、対局だけでなくドキュメンタリーとしてテレビ放送されることも少なくなく、将棋とプロ棋士の人気の高さが伺えます。
戦略性の高い将棋は、論理的思考力や問題解決能力を養うのに適したゲームです。部活動やクラブ活動に取り入れる学校も多く、ゲーム感覚で必要な能力を養えるため、教育面でも注目を集めています。
中国の将棋人気
一方中国の将棋は、約2000年以上の歴史を持つ伝統的なゲームであり、中国の文化と密接に結び付いています。
中国にも日本と同じく将棋のプロ棋士が存在し、プロの棋士たちの対局や将棋の普及活動が盛んに行われていることをご存知でしょうか。中国のプロ棋士たちの活躍は、日本と同じように将棋人気の広がりを強めている要因となっています。
中国将棋と日本将棋の共通点
起源と基本ルール
起源
中国の将棋の起源は古代中国にまで遡り、インドのチャトランガゲームがモデルになっているとされています。
7世紀頃にはすでに中国で将棋の原型が存在していたとされ、宋代には現在の将棋に近い形態が確立しました。中国の将棋は、宮廷や文人たちの間で愛され、その後も広く人々に親しまれています。
実は日本の将棋の起源も中国語と同じく「チャトランガ」だといわれています。チャトランガは6世紀頃にインドから中国へ伝わり、そこから日本にもたらされたのち、藤原宮が成立した当時にチャトランガが将棋として定着しました。
当初は宮廷や貴族の娯楽として楽しまれていましたが、次第に一般庶民にも広がっていきます。そして、平安時代に現在の将棋のルールが形成されました。
中国と日本の将棋は、起源はインドのチャトランガという共通点を持ちながら、双方の文化や歴史により独自の発展を遂げたのですね。
基本ルール
日本の将棋と中国将棋は、ともに8×8の格子状ボードを使用します。各プレイヤーはそれぞれ自分の駒を持ち、駒をボード上の特定の位置に配置することでゲームが成立します。
相手の駒が自分の駒の移動可能な位置に進入することで、その駒を取ることができます。 日本の将棋では、相手の駒が移動可能な位置に自分の駒が進入する「利き」が重要な要素ですよね。 中国将棋でも同様に、相手の駒の利き手を避けつつ進入することで駒を取るという共通点があります。
日本と中国の将棋はともに「王将を詰ませた方が勝ち」というルールがあります。これは相手の「王将の行き場をなくした方が勝利する」という意味合いで使われている言葉です。
「王将を詰ませる」という表現は、将棋をやったことがない方には聞き馴染みのない言葉かもしれません。語源としては、戦国時代における戦の場で軍事用語として使われていたことが挙げられます。
お城で大将が陣取る場所は詰めの城と呼ばれ、要衝や重要な配置を守り緊急事態に即応するために関係者が集まる場所が詰めの場所と呼ばれていました 。つまり、詰めの場所は重要な場所であり、そこを取られたら勝負が決まることを意味しています。
2人での対戦スタイル
日本と中国の将棋は基本的に2人で対戦するボードゲームです。両国の対戦スタイルは、相手と対戦しながら駒を動かし、戦術を駆使して勝利を目指すことを知っている方も多いのではないでしょうか。
一人で対戦をする「一人将棋」などのバリエーションもありますが、将棋の基本は相手がいて対局することにあります。
勝利のコツ
駒の特性を理解する
各駒がどのように動くかを理解することが重要です。駒の特性を把握し、相手の駒の動きを予測することで、有利な局面を作ることができます。特に王将や重要な駒の動きには注意を払いましょう。
中盤の戦術を磨く
将棋は序盤、中盤、終盤に分かれています。中盤は駒の取り合いや攻防が激しくなる局面になることも少なくありません。相手の弱点を突く戦術を練習し、有利な局面を作り出すことが重要です。
そのためには、できるだけ多くの方との対局機会を作っていきましょう。それぞれが持つ戦術を知ることで、自身の戦い方を練るヒントになるはずです。
守りも大切にする
勝つためには攻めの姿勢ももちろん大切ですが、自身がダメージを負わない守りも欠かせません。自分の駒を守ることで相手の攻撃を防ぎ、有利な展開を維持することに繋がります。
全体の局面を見渡し、攻めと守りのバランスを考えることで勝利に繋げていきましょう。時には、一部の駒を犠牲にしてでも、全体のバランスを取ることで有利な展開を築くことができます。
中国将棋と日本将棋の違い
駒の使用法
中国と日本の将棋では、相手の駒を取ったあとに違いがあります。
中国の将棋では、相手の駒を取った後に自分の駒として保持することはありません。駒を取ることが主な目的となり、取った駒はそのまま盤上から取り除かれます。したがって、一度取った相手の駒は再度使うことはできず、その手の進行には関係しません。
一方日本の将棋では、相手の駒を取った後に自分の駒として保持できるルールがあります。このような駒を「持ち駒」と呼びます。相手の駒を取った場合、その駒は盤上から取り除かれ、取ったプレイヤーの手元に持ち駒として残ります。
持ち駒は指したい手番で自由に使えるため、戦略の幅を広げる重要な要素として欠かせません。中国将棋と異なる持ち駒の活用は、プレイヤーの戦術的な判断力や将棋の知識を試される部分といえるのではないでしょうか。
終盤の戦略
日本の場合
日本の将棋では、終盤になると相手の駒を取るための駒の配置や連携が、非常に複雑になることがあります。将棋は初心者から上級者まで幅広いレベルのプレイヤーが楽しめるゲームですが、上級者ほど複雑な戦略が欠かせません。
終盤では、攻めの局面から守りの局面へと切り替えることが頻繁にあります。攻めの局面では相手の王将を詰ませるために大胆な手を指し、守りの局面では自分の王将を守るために堅実な手を指さなければなりません。
更に終盤では持ち駒の活用が重要です。持ち駒を戦略的に使うことで、攻めのチャンスを掴めたり、危機を回避することに繋がるからです。
日本の将棋ではプレイヤーが持つ持ち時間が限られているため、終盤になると時間管理が重要となることも覚えておきましょう。適切な手を指すための時間管理も戦略の一つとして欠かせません。
中国の場合
中国の将棋は比較的シンプルなルールを持つため、終盤の手順が複雑になることは少ない傾向があります。初心者から上級者まで、比較的簡単に戦略を展開できることも少なくありません。
王将を捕獲することで勝利が決定するため、終盤では特に相手の王将を詰ますチャンスを探すことが重要となってきます。
そのため終盤では、駒の力を集中して相手の王将を狙うことが一般的です。複数の駒を組み合わせた攻めで、相手の防御を突破しやすくなることを覚えておきましょう。
実は中国の将棋における駒は、日本の将棋ほど複雑には活用されません。駒の利用よりも局面の駒の配置や動きに重点が置かれています。
将棋の中国語表現
将棋を中国語でなんというか知っていますか?中国の将棋、日本の将棋、そして国際将棋チェスの中国語を見ていきましょう。
中国と日本の将棋の名称
象棋(xiàng qí)
将棋の総称。単独で使う場合は中国将棋のこと。
中国象棋(zhōngguó xiàngqí)
中国将棋。他の将棋と区別するときに使われる。
日本象棋(rìběn xiàngqí)
日本将棋。日本独自の将棋があることは知ってるがやる人は少ない。
国际象棋(guójì xiàngqí)
チェス。中国でも愛好者は多く、国も力を入れて応援している。
将棋に関する動詞の選び方
中国語を勉強する上で、適切な動詞の選択は難しい点の一つです。日本語でも将棋をすることを「将棋を指す」といいますよね。外国人からするとレベルが高く、なぜ「指す」という動詞をつかうの?と思う部分かもしれません。
ここで問題です。「将棋を指す」とは中国語でどう表現するか、次の3つからお選びください。
- 指象棋(zhǐ xiàngqí)
- 打象棋(dǎ xiàngqí)
- 下象棋(xià xiàngqí)
では「将棋を指す」の正解は?
指(zhǐ)
指(zhǐ)を動詞で使うときは「~が指し示しているのは~」という表現で使います。例えば…
tā shuō de zhǐ nǐ
他说的指你.
彼が言っているのは、あなたのことだよ。
というふうに使います。よって正解ではありません。
打(dǎ)
打(dǎ)という動詞は、「たたく」「殴る」というときにも使いますが、ゲームをするときなどにも使います。例えば…
dǎ pái
打牌
トランプをする。
dǎ májiàng
打麻将
マージャンをする。
というふうにも使います。よって打象棋(dǎ xiàng qí)が正解のようですが、正解ではありません。
下(xià)
一番関係なさそうな下(xià)という動詞が正解です。
「雨が降る」を下雨(xià yǔ)と言ったり、「車を降りる」を下车(xià chē)と言ったりしますが、「将棋を指す」ときは中国語で下象棋(xià xiàngqí)と言います。一つの動詞で様々な動作を表現できる幅の広さが面白いですよね。
たとえば中国人に「日本の将棋やったことある?」と質問すると、
wǒ méi xià guò rìběn xiàngqí
我没下过日本象棋.
日本の将棋は指したことがないよ。
という返答が返ってきます。適切な中国語の動詞選択は難しく感じるかもしれませんが、たくさん触れることで自然と選べるようになります。
賭け将棋の文化
中国での賭け将棋の普及
中国では、赌棋(dǔ qí)と呼ばれる将棋の賭けゲームが盛んに行われています。そして中国将棋の世界競技人口は、5億人以上居るといわれていることをご存知でしょうか。
中国将棋が行われる場として、公園や路地など比較的人が集まりやすい場所が挙げられます。ただ、中国で行われる賭け将棋は、都市景観整備などの面から北京では規制されています。
主な対局開催場所であった公園や街の大通りは北京五輪開催を機に徐々に減少し、人目の付きにくい路地裏に移動していきました。
規制が強まる賭け将棋ですが、中国文化においては古くからの娯楽の一つであり、社会的繋がりを強める手段として利用されてきました。その現れとして、人が集まりやすい公園や街の大通りが場所として選ばれています。
中国において賭け将棋は、友人や仲間同士が集まって楽しむことも目的としてあり、対局を通じて親睦を深める場として機能しています。
中国における賭け将棋の普及は、将棋の人気や社会的な要素や経済的な要因などが複合的に作用し、広く庶民の間で楽しまれてきました。一方、非合法的な側面もあるため、賭け将棋を行う際にはその国の法律や社会の規範に従うことを忘れてはいけません。
本来、将棋は知的なゲームとしての側面が強く、思考力や戦略を磨く方法であることを覚えておきましょう。
まとめ
今回は将棋という日本と中国に存在するひとつの文化に注目しました。言葉は通じなくても将棋であれば盤面で会話ができ、楽しい時間が過ごせます。
日本将棋が分かる人なら、中国将棋を覚えるのは難しくありません。中国人と仲良くなるために中国将棋のやり方を調べてみてはいかがでしょうか。