台湾華語と中国普通話:楽しみながら違いを学ぶ

    1. 中国語講座

    「中国と台湾で使われる中国語はどこが違うのだろう?発音や字体など具体的な特徴が不明…」と感じている学習者も多いのではないでしょうか。

    中国語には多くの方言があり、それぞれに大きな違いがあります。今回は台湾語と中国語の特徴や違いを紹介します。

    台湾華語と中国普通話の違いを学ぶ

    中国語と台湾語、その魅力と違い

    台湾で使われる中国語は「台湾華語」や「台湾語」と呼ばれ、中国本土で話されている「普通語(マンダリン)」とは異なります。どちらも同じ「中国語」としてカテゴリー分けされますが、この二つの言語にはとても大きな違いがあります。

    たとえこれらの言語を話すことができないとしても、その違いや由来を知ることで、近くにある中国や台湾についての理解を深めることができますし、旅行などで訪れるときにはその違いを楽しむことができます。

    台湾で話される中国語とは?

    ここでは、台湾で使われる言葉にどのような特徴があるのかをご紹介します。中国語を学習している人であれば、特徴を把握することで、かなり早く修得することができます。

    「今のところ台湾の中国語を勉強する予定はない」という方でも、普通語との違いを知ることで普通語に対する理解がより深いものとなり、「普通語」の学習の助けになります。

    台湾華語の特徴

    台湾華語は台湾の公用語として用いられ「國語guó yǔ)」とも呼ばれています。1949年に中華人民共和国が建国され、当時の公用語であった「國語」から「普通话pǔ tōng huà )」に言語が変更されました。

    それと同時期に、大陸から多くの人民が台湾に渡ったことで「國語」が広まり、それが現代の台湾でも広く使われています。

    元々同じ言語であった台湾華語と普通語ですが、建国を期に分かれて数十年の時を経て現在に至ります。現在、台湾の義務教育においては「國語」が用いられており、「國語」は台湾の標準語として広く話されています。

    留学生が台湾に留学する際は、一部の例外を除けば繁体字を使って中国語を学びます。台湾華語のベースは中国本土の普通話ですが、発音や語彙などは特有の特徴が強く反映されているので普通话を学習されている方は難しいと感じることがあるかもしれません。

    しかし普通語をある程度話せる方であれば、言語の特徴を知ることで応用することが可能です。また、歴史を知り、興味や関心を高めることで学習意欲向上にもつながります。

    台湾語の特徴

    台湾語は台湾南部を主として話されている言葉です。よく混合される台湾華語とは異なります。福建省南部を中心に話されている「閩(ビン)南語」が由来とされていますが、台湾では、台湾語は公用語として使われていません。

    特に台湾語は、台湾南部や年配の方が使う言葉として広く知られています。台北などの都心部では台湾語が話せない方も多くいるそうです。

    中国本土でも、上海語や四川語など地域によって方言が存在します。中国には方言が数多く存在し、違いが大きい方言になると、聞き取ることすら困難になります。

    また、日本でも津軽弁と琉球語では大きな違いがあり、お互いに標準語が理解できてない場合、コミュニケーションを取るのが難しいといわれています。

    同じように台湾にも方言が存在します。普通語を理解している方であれば、是非表現の仕方やアクセントに注目しながら比較してみてください。

    中国と書かれた折り紙のリンゴ。

    繁体字と簡体字の違い

    中国語には繁体字と簡体字の2種類の漢字表記が存在します。台湾では繁体字を使用し、中国大陸では簡体字を用いて読み書きが行われています。

    台湾で使われる繁体字

    正体字や伝統字とも呼ばれ、台湾、マカオ、香港で主に使用されている字体です。英語では「Traditional Chinese Characters」と表記されています。台湾華語、台湾語ともにこの繁体字を用います。

    簡体字と比べると画数が多く、簡体字を先に学習している日本人には少し複雑で読みにくいと感じるかもしれません。

    しかし、中国本土の人でも繁体字を好んで使用している方も多く、伝統的な漢字として人気があるそうです。SNSやWeChatでのやり取りでも繁体字を使う中国人をよく見かけます。

    加えて、中国国内であえて繁体字を使った看板や広告もよく見かけます。画数が多く複雑に感じますが、伝統や趣を感じながら親しみを持って楽しく学習していきましょう。

    中国本土で使われる簡体字

    簡化字や規範字とも呼ばれ、中国本土やシンガポール、マレーシアで使われている字体です。簡体字は、複雑であった従来の漢字を簡略化したもので、1950年代に制定されました。英語での表記は「Simplified Chinese Characters」となります。

    1949年に中国人民共和国が建国されてから、国家全体の識字率向上に加え、増えすぎた漢字を整理する目的として作られたともいわれています。例を上げると、繁体字では「」と表記する文字が、簡体字では「」と画数が簡素化されています。

    そして、その時に台湾では漢字の簡略化が実施されませんでした。そのため、台湾では繁体字が使用されています。

    繁体字と簡体字ともに日本語の漢字と共通して使われているものもあるので、漢字を使い慣れている日本人にとっては親しみを持って習得していける字体でもあります。

    漢字簡体字繁体字

    台湾華語の発音の特徴

    台湾国内における公用語、そして多くの留学生が学ぶ言語である台湾華語は発音にも特徴があります。ここでは台湾華語の発音や声調の特徴をご紹介します。

    特徴を学び台湾華語への理解を深めた上で、台湾ドラマと中国ドラマを見比べてみるとリスニング練習だけでなく普通話との比較練習にもつながります。

    そり舌音が少ない

    中国本土で使われる普通話は、そり舌音と呼ばれる舌を巻いて発音する子音「ch・sh・zh・r」が特徴です。対して、台湾華語は舌をそらずに発音する特徴があります。

    良く使われる中国語「好吃」を例にすると、以下のようになります。

     台湾発音中国本土の発音
    好吃hào cī ハオツーhào chī ハオチー

    基本的に中国語の発音をカタカナ表記にするのはオススメしませんが、違いを伝えるためにカタカナも使用しました。音声で聞くと違いが理解できるかと思います。ドラマやバラエティ番組を見て耳で違いを確認してみましょう。

    中国語を学ぶ多くの日本人が苦戦するそり舌音がないため、台湾華語のほうが発音に関しては習得しやすいという声もあるようです。

    そり舌で発音する機会が少ない台湾ですが、普通話は台湾人も聞き取ることができるので、普通話に慣れている学習者の方もぜひ交流の機会を探してみましょう。

    同じ単語で声調が違う

    台湾で使われる発音と中国本土で使われる声調には違いがあります。同じ表記でも声調が異なるため、間違っていると感じる方もいらっしゃるかもしれません。

    中国本土では間違いとされる声調が、台湾では日常的に使われていることも多くあります。それぞれの特徴を理解して状況に合わせて活用できるようにしていきましょう。

    【声調(音の高低)が異なる単語】

    日本語中国語台湾発音普通话
    フランス法国fà guófǎ guó
    曜日星期xīng qíxīng qī
    楽しみ期待qí dàiqī dài
    関係关系guān xìguān xi

    【ピンインと声調(音の高低)が異なる単語】

    日本語中国語台湾発音中国普通话
    ゴミ垃圾lè sèlāj ī
    乳液乳液rǔ yìrǔ yè
    こんにちは你好lí hónǐ hǎo
    とても高い很高fěn gāohěn gāo

    外国語を学ぶとき、初期段階で学ぶのが発音です。この発音を学習する際の指標として、中国語においてはローマ字表記のピンインや声調記号があります。

    しかし台湾では、この発音記号はほとんど使われません。代わりに「ボポモフォ」と呼ばれる注音符号(ちゅういんふごう)を用います。

    台湾独自の発音記号「ボポモフォ」

    「ボポモフォ」とは子音21、母音16字の合計37字で構成される発音記号です。注音符号のはじめの4文字から「ボポモフォ」と呼ばれているそうです。組み合わせは400近くあり、中国語の音をすべて表せる台湾独自の符号です。

    「ボポモフォ」の成り立ちは漢字の一部を引用してできたと言われており、「ㄅㄆㄇㄈ(bopomofo)」の「」は漢字「」の音の一部から出来上がりました。

    台湾人が文字入力するときは、ピンインではなく「ボポモフォ」で行います。子どもから年配の方までが使うため、外国人が使うと距離をぐっと縮めることができます。

    中国の地図上の台湾。

    台湾華語と中国語の表現の違い

    台湾で話される言葉と中国本土で話される言葉は、日本語に訳では同じ訳になっていても、それぞれの表現方法が異なる場合があります。ここでは、単語の違いやよく使う挨拶表現の違いをご紹介します。

    単語の違い

    台湾と中国本土では、同じ意味でも言い方が異なる単語が数多く存在します。台湾独自の言い方を知っていると、台湾旅行に行った際に飲食店やデパートでのやり取りでも焦らず対応できるはずです。

     台湾普通话
    タクシー計程車jì chéng chē出租车chū zū chē
    自転車腳踏車jiǎo tà chē自行车zì xíng chē
    地下鉄捷運jié yùn地铁dì tiě
    ヨーグルト優格yōu gé酸奶suàn nǎi
    マヨネーズ美乃滋měi nǎi zī蛋黄酱dàn huáng jiàng
    インスタントラーメン泡麵pào miàn方便面fāng biàn miàn
    じゃがいも馬鈴薯mǎ líng shǔ土豆tǔ dòu
    ピーナッツ土豆tǔ dòu花生huā shēng
    マッサージ馬殺雞mǎ shā jī按摩àn mó

    あいさつや表現の違い

    あいさつや会話で使う基本表現においても、台湾と中国本土では違いがあります。

    中国本土の普通話は台湾でも通じますが、台湾人との距離を縮めたいという方にとって、あいさつの表現習得は欠かせないポイントです。ぜひ台湾独自の表現で親しみを込めた交流ができるように台湾特有の表現も習得していきましょう。

     台湾中国普通话
    おはよう早安zǎo ān早上好zǎo shang hǎo
    こんばんは晚安wǎn ān晚上好wǎnshang hǎo
    ありがとう多謝duō xiè谢谢xiè xiè
    すみません歹勢dǎi shì不好意思bù hǎoyìsi
    どういたしまして不會bú huì不客气bú kè qi

    中国本土では、不会は「〜できない」という意味で使われるイメージがあるかと思います。台湾では「どういたしまして」と全く異なる意味で使われているのも面白い違いです。

    また、晚安は台湾だと「こんばんは」の意味なのに、中国本土では「おやすみなさい」の意味になり、全く異なる意味になります。

    表現の違いの例

    台湾華語と普通語の表現の違いを紹介します。

    【レストランなどで店員さんを呼ぶとき】

    • 中国:服務員!fú wù yuán
    • 台湾:不好意思!bù hǎo yì si

    台湾の表現方法は日本の「すみません!」という言い方と同じです。

    【~はどこですか?と聞くとき】

    • 中国:~在哪儿? zài nǎ er
    • 台湾:~在哪裡? zài nǎ lǐ

    台湾では語尾に「」を付ける言い方(アル化)はほとんどしないといわれています。

    【ダメ!という禁止表現】

    • 中国:不行! bù xíng
    • 台湾:不可以!bù kě yǐ

    このように、ちょっとした表現でも違いがあります。ただ、理解できない程の大きな違いではありません。

    中国の地図上に国旗がピンで留められています。

    台湾華語と広東語の違い

    台湾と中国本土では、発音や字体、単語や表現に多くの違いが存在しますが、片方しか知らないことで会話が成り立たないということはありません。普通话は台湾でのビジネスやインターネット上の交流においても通じます。

    それに対して香港や広東省などで用いられている広東語は、中国語の普通語との違いがさらに大きくなります。普通語しか学習していない人には、広東語を聞き取ることは困難といわれています。

    中国語は声調言語と呼ばれ、声調がとても大事ですが、台湾華語の声調の数は普通話同じ4であるのに対し、広東語は声調が9つあり(6つという説もあり)、大きく異なります。

    以下に普通語、台湾華語、広東語の違いをまとめてみました。

     普通語台湾華語広東語
    中国語での呼び名普通话国语广东话 guǎng dōng huà
    文字簡体字繁体字繁体字
    声調4つ4つ9つ
    ネイティブスピーカーの人口(およそ)9億0000万人2000万人8000万人

    こうしてみると、広東語を話す人も非常に多くいることが分かります。

    日本語由来の台湾華語

    台湾華語には「榻榻米(たたみ)」「哇沙米(わさび)」「歐吉桑歐巴桑(おじさん、おばさん)」など、日本語からの外来語が色濃く残っており、日常的に用いられていることも特徴の一つです。

    こうした日本由来の台湾華語を探していくと、一層楽しく学習できますので是非探してみてください。

    まとめ

    今回は中国本土で話される普通語と、台湾で話される中国語の違いを紹介しました。これらの言語の違いを知ることで、より深く中華圏の文化や歴史について理解することができます。

    相手に合わせて最も適した表現を用いることができるようになると、中国語学習の楽しさが倍増します。是非違いを楽しみながら学習してみてください。

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