中国語の学習において、最も大切なことは発音です。今回は、発音の基盤となるピンインについて紹介します。特に、日本人の学習者がぶつかりやすい壁の克服方法についてお伝えします。
本気で中国語をマスターしたい方は、じっくり読むようにしてください。
中国語学習の第一歩:ピンインの読み方と覚え方
目次
中国語学習におけるピンインの重要性
ピンインとは、アルファベットで表示された中国語の発音記号のことです。このピンインのおかげで、漢字の発音を確認することができます。
建築に例えるなら、建物の土台ともいうべきもので、中国語の基礎になります。中国語の学習を始める方は、まず初めにこのピンインをマスターするようにしましょう。
中国人の小学生も、学校でこのピンインを徹底的に練習します。どの地域の方であったとしても、ピンインを徹底的に練習したことがある人は、中国語の標準語を問題なく話すことができます。
中国人でさえピンインを徹底的に学習しているわけですから、外国人学習者である私たちは、なおさら力を入れて学習する必要があります。
また、中国語のタイピングやテキスト入力を行うときに、ピンイン入力ができると入力スピードがとても速くなります。
ピンイン学習にかけるべきおおよその時間
絶対的な基準はありませんが、毎日1日勉強したとして最低1ヵ月は必要です。ピンインの勉強をしっかりとすればするほど、中国語能力の土台が広く、強固なものとなります。
ここで手を抜いてしまうと、後で大変面倒なことになってしまい、より多くの時間と労力を費やすことになります。
最初は、単語を覚えたり、文法を覚えたりすることよりも、ピンインをマスターすることに注意を集中してください。
ピンインをおろそかしてはいけない理由
とても残念な話ですが、中国語学習の初期段階でピンインの学習をおろそかにしてしまったばかりに、非常に大変な思いをしている人を私は何人も見てきました。
中国の大学で中国語のリーディングやライティングのテストで好成績を収め、学校から表彰される方もいましたが、実際に現地の中国人と会話をしたときに、全く聞き取ってもらえないというケースがあります。
一生懸命に勉強した中国語が全く現地の人に伝わらない時のショックは想像を絶するものです。これから中国語に取り組む方達にはそんな思いをして欲しくありません。
中国語にはこんなことわざがあります。日本語でもなじみの深い言葉です。
yù sù zé bù dá
欲速则不达
急がば回れ;せいては事をし損じる
発音とピンインの練習をおろそかにすると、100%失敗しますので気をつけましょう。
日本人が陥りやすい失敗
日本人の中国語学習者の陥りやすいケースとして、ピンインを覚えずに、ひらがなで発音を覚えようとすることです。
中国語には、日本語に存在しない音がたくさんあります。また、音の出し方が日本語と非常に異なるために、ひらがなで中国語の発音を表現することはできません。それは絶対に不可能です。
ですから、中国語の発音の勉強の際には、ひらがなを捨ててください。中国語のすべての音をピンインで理解できるようになってください。これがピンインをマスターするために必要な心構えです。
ピンインの基本:中国語の音節について
音節とは、ひとまとまりの音の事です。発音するときの最小単位のことを指します。最小単位全てを正確に発音できれば、後はそれを組み合わせるだけです。
逆にいうと、発音ができていない人の原因のほとんどは、音節の発音ができていないことにあります。まずは、一つ一つの音節をしっかり発音できるようになりましょう。
中国語の音節数について
中国語の場合、1音節=1漢字で成り立っています。中国語の音節は406個存在しているといわれています。子音が21個、母音が34個で、これらを組み合わせる事で音節が作られます。
さらに、中国語には声調が4つあるので、406×4で、1600余りの音節が存在することになります。日本語の場合、音節の数は、100余りといわれています。日本語と比較して、中国語には非常に多くの音節があることがわかります。
ピンインのアルファベットとその発音
中国語の発音練習のポイントは、一つ一つの音節を正確に発音できるようにすることです。
正確な発音をマスターするためには、正確な音を聞き、正確な音を覚え、正確に発音できるようにならなければなりません。そのために、音節表を参考にして、一つ一つの音節を確認してみましょう。
音節表に関しては、ページの最後に貼り付けていますので、後ほど参考にしてみてください。
日本人学習者にとって難しい中国語の発音
中国語の音節の発音では、日本人の学習者にとって、発音しやすいものと、発音しにくいものがあります。
発音しやすいものに関しては、それほど労力をかけずにマスターすることができますので、ここでは発音しにくいものを紹介します。
重点的につまずきやすいものに取り組むことで、効率よく発音をマスターしていくことができます。
そり舌音「r、zh、ch、sh」
このそり舌音は倦舌音(けんぜつおん)とも呼ばれています。日本語にはない音で、日本人の中国語学習者が難しく感じる発音の1つです。
そり舌の発音は、舌を若干そり上げるようにし、舌と口蓋(口内の天井部分)の間の狭い隙間から、勢いよく息を吐き出して音を出します。
苦手意識を感じる人が多くいますが、そり舌は決して日本人が発音できない音ではありません。日本人が陥りがちな失敗例を二つ挙げます。
一つ目は、舌を巻きすぎることです。舌をそることに気を取られるあまり、舌を巻きすぎてしまうと正確に発音できません。
実は、十数年前そり舌は巻き舌と呼ばれていました。しかし、舌を巻き過ぎると音が正確に出ないということもあり、そり舌と呼ばれるようになりました。舌を巻きすぎないように注意しましょう。
もう一つの失敗例は、息が十分に出ていないことです。舌の形を作ることに注意が向きすぎて、息が十分に出ていないと、正確に発音することができません。
そり舌は、舌と口蓋の間の隙間から息を出すときに出る音です。息が弱いと、音が聞き取りづらくなります。舌の形だけでなく、息の強さにも注意しましょう。
有気音と無気音
中国語の子音には,2つのタイプがあり「息を抑えてひかえめに出す無気音」と「息をパッと激しく出す有気音」に分かれています。
子音の「p、t、k、q、ch、c」が有気音です。発声した瞬間に破裂音が伴います。
中国語の無気音は「b、d、g、j、zh、z」です。
これは、日本の清音と濁音の区別とも異なります。中国語には清音と濁音の区別がなく、あくまでも息の出し方と強弱によって区別されます。
この有気音も、日本語に存在しないので、日本人の学習者にとっては出しにくい音といわれています。
まずは、破裂音について理解しましょう。まず息を溜めます。そして、溜めた息を一気に出します。息が出る瞬間に破裂音が出るのを確認してください。コツは、息をしっかり溜めることと、息を一気に強く出すことです。
鼻母音のnとng
鼻母音は、日本人の学習者には区別しにくい音といわれています。鼻母音は16個ありますが「n」でおわるタイプと「ng」でおわるタイプに分けられます。
「n」でおわる鼻母音は、舌が上の歯の裏につきます。日本語で「案内」の「アン」の音を言う際の舌の位置に注目してみてください。舌が上顎についているはずです。それがピンイン「n」の音です。
「ng」でおわる鼻母音は、舌の奥を喉の奥(舌)につけて終わる音です。日本語で「あんこ」や「案外」というときの「アン」がこれに相当します。
発音のコツですが、下顎をしゃくらせて音を出すようにしてみてください。このようにすると、舌が上顎につかなくなります。
こうして2つの発音を比較してみると、舌の位置が明らかに違います。練習するときは、この2つのパターンの舌の位置と、音の違いに注目してみましょう。
実は、中国の方であっても、この両者の発音の違いを聞き取ることができないと述べる人がたくさんいます。
ですから、この2つのパターンの違いがよく理解できなかったとしても、自分が中国語に向いていないとは思わないでくださいね。
単母音のe
この「e」も日本語に存在しない発音です。この発音の正解がわからないという中国語学習者はたくさんいらっしゃいます。
まず気をつけたいのが、この音は日本語に存在しないので、あいうえおのどれにも当てはまりません。ひらがなで理解しようとするのはやめましょう。
イメージとしては、お腹をパンチされたときに出るような音です。お腹に衝撃が加わったときに出る音は喉の奥から出ているはずです。
この音のコツは、音を喉の奥から出すことと、お腹に力を入れることです。口は少し開けるようにしておきましょう。
なんとも表現しがたい音です。この「e」は、子音との組み合わせなどによりいろんな音に聞こえます。
それで中国語界隈ではこの「e」の音は、あいまい母音と呼ばれています。とにかく、口を少し開いた状態で、喉の奥から音が出せればオッケーです。
単母音の「ü」
この「ü」の音も日本語に存在しないため、注意が必要です。日本語の「ユ」をベースにして、そこから口をすぼめるようにして音を出していきます。
この音は、口の形が非常に重要です。梅干しを食べて、酸っぱいと感じたときの口の形を想像してください。
自然と口がすぼんでいると思います。その口の形で「ユ」と言うと、この音を出すことができます。
ピンインの発音:声調の理解と練習
中国語は、音声言語です。声調の変化によって、言葉の意味を伝えていきます。
声調とは一つの音の中で生じる音の高低差のことです。それぞれのピンインの発音が正確であっても、声調が間違っていると、相手に全く通じないので要注意です。
中国語の声調とは
中国語の場合、この高低差をつけるパターンは4つあるため、四声(しせい)と呼ばれます。そして、この四声の他に、軽声があります。一つずつ確認していきましょう。
声調の発音
【第一声】
一声(いっせい)と呼ばれる音で、高い音のまままっすぐ発音します。橋の上の線路を走る新幹線をイメージしてください。高さを変えずまっすぐ進みます。
【第二声】
二声(にせい)と呼ばれる音で、下から上に突き上げるような音です。すごく驚いたときの「えぇ?」という時の音です。音が下から上に上がっていっているはずです。
二声の場合、高低差が重要なので、低い所から高い所へ一気に上げましょう。高い所へ飛び上がるイメージを持ってください。
【第三声】
三声(さんせい)と呼ばれる音で、低い音を出す音です。ただただ音を低く抑えたままにします。
後ろに他の音が続かない時は、最後に若干音が上がります。狭いトンネルに入るために身をかがめるようなイメージを持ってください。
【第四声】
四声(よんせい)と呼ばれる音で、高いところから低いところへ叩き落とします。二声と同じで高低差が重要です。ハエ叩きを上から下に叩きつけるようなイメージを持ってください。
【軽音】
中国語には、四声(しせい)に加えて、軽く短く発音する軽声(けいせい)という発音もあります。これは単体で使ったり、文頭にくることはなく、文末などで用いられます。
実は「軽声」には決まった音程はなく、軽声の前にある声調によって、軽声の音の高さが決まります。前の音の音程に、軽く添えるだけです。物を台の上にそっと置くイメージを持ちましょう。
声調の発音の練習方法
声調の発音の練習方法は、まず正しい声調を聞きましょう。それから、自分でも発音するようにします。スマホなどで自分の発音録画し、正しい声調と比較してみると良いでしょう。
また、声調の変化を身振りで表現しながら、発音するという方法を用いている人もいます。「エアー声調」などとも呼ばれていますが、自分の体を動かすことで、声調の変化をより容易にイメージすることができます。
効果は人によって差がありますので、まずはやってみて、自分に合っているかどうかを確かめてみてください。また、練習するときは、音の高低差を大げさにつけるようにしましょう。
声調符号の付け方
声調符号は、母音の上につけます。「ta」であれば「a」につけ、「zi」であれば「i」につけます。
注意点として「i」に声調符号をつけるときは「i」の上の点は外します。
母音が2つ以上ある場合は、主母音の上につけます。何が主母音であるのかを判断するのに、ルールが存在しています。
「a」→「o」→「e」→「iかu」→「ü」の順番になります。「iとu」が同時に存在する場合は、後ろにあるものにつけます。
そしてこの順番は、発音するときに、口を一番大きく開く母音に声調符号をつけるという規則に基づいています。「i とu」では、口の開ける大きさが同じという判断基準のようです。
ピンインの応用:実際の単語とフレーズ
ここまでは、発音記号について紹介しました。ピンインの基本を理解できたところで、実際によく用いられる単語とフレーズに合わせてピンインの練習をしてみましょう。
常用単語とフレーズのピンイン表記
上の「日本人学習者にとって難しい発音」のところで取り上げたピンインを発音してみましょう。
【そり舌】
wǒ shì rì běn rén
我是日本人
私は日本人です
これは自己紹介で非常によく使うフレーズです。「日」の部分の発音が、日本語の「リ」になってしまわないように注意しましょう。舌にしっかり力を入れて、強く息をぶつけてください。
【有気音】
shuǐ guǎn pò liè le
水管破裂了
水道管が破裂した
「破」の部分の発音が有気音になります。まず息をしっかり溜めてから、一気に強く吐き出しましょう。
【鼻母音のnとng】
zhè ge dì fāng ān quán
这个地方安全
この場所は安全だ。
「安」は「an」です。舌が上顎にしっかりとくっついていることを確認しましょう。
ang guì de yī fú
昂贵的衣服
高価な服
「昂」は「ang」なので、下顎をしっかりとしゃくらせるようにして発音し、舌が上顎についていないことを確認してください。
【単母音のe】
wǒ è le
我饿了
お腹がすいた
「e」の部分の発音は、口を少し開けた状態で、喉の奥からしっかりと音を出すようにしましょう。お腹にグッと力を入れると発音しやすいです。
【単母音のü】
jīn tiān huì xià yǔ
今天会下雨
今日は雨が降るだろう
「雨」の発音のときは、酸っぱいものを食べたときの口の形にした状態で発音することを心がけましょう。
ピンイン学習のコツ
ピンインの学習は、とても多くの時間と労力が必要ですが、効率的に学んでいけばマスターする時間を短縮することができます。
効率的なピンイン学習法
一番大切なのは、中国語学習の初期の段階で、集中的にピンインの学習を行うことです。間違った癖を身に付けてしまうと、修正するのにとても多くの労力と時間を費やすことになります。そのため、中国語の学習を始めると同時にピンインの練習をするようにしてください。
そして、必ず反復練習をするようにしてください。頭で理解したとしても、正確に発音できるかどうかは別問題です。
自分の発音を聞く
できれば自分の発音を録音して聞いてみましょう。正確な発音を聞いて、自分でも発声する。録画した自分の声をチェックして、正確な発音と比較する。この単純作業を何度も行うようにしてください。
そして、決して発音の練習をやめないようにしましょう。発音は筋肉を使って音を出します。筋肉が衰えてしまうと、音も出なくなってしまいます。
スポーツをしている人でも、長期間練習しないと筋肉が衰えてしまいます。それで中国語の発音に必要な筋肉を鍛え、維持するようにしましょう。
ピンイン入力しながら練習する
パソコンやスマホなどで、中国語のピンイン入力を行うのも練習になります。入力しようとした中国語のピンインが間違っていると、正しく入力できないため、強制的に正しいピンインを覚えることができるようになります。
パソコンやスマホのキーボード入力設定を変えれば、中国語のピンイン入力ができますので、この方法もぜひ試してみてください。中国語のピンイン入力機能を用いて、中国語で簡単な日記を付けるのも良い方法です。
ピンイン学習に役立つツール
ピンイン学習に役立つツールはたくさんあります。ツールを上手に使いこなせば、効率的にピンインをマスターできます。ピンイン学習に役立つオンライン上のツールとアプリを紹介します。
アプリ:超・中国語耳ゲー
ゲーム形式でピンインの練習ができます。繰り返し練習すると、自分の苦手な発音を理解することができます。このアプリの発音音声はとてもきれいなので参考になります。
オンラインツール:ピンイン表
中国語のすべての音節が表記されていて、ネイティブの発音を聞くことができます。また、すべての声調を確認することもできます。ピンインの反復練習の時に、このツールはとても役に立ちます。
音声付きピンイン表:http://www.sora-as.jp/pinyin/pinyin.html
ピンインの勉強に嫌気がさした時には
ピンインの勉強だけずっとしていると、疲れてしまうかもしれません。そんな時は、文法や、センテンスなど別の勉強を織り交ぜたり、中国語の音楽や動画を見たりして、上手に気分転換をしましょう。
中国語の学習は、成長のスピードよりも継続性の方が大切です。なるべく楽しく勉強を続けられるように工夫しましょう。そして、ピンインの勉強をやめてしまう事がないように注意しましょう。やめない=成功です。
まとめ
今回は、中国語のピンインについて紹介しました。ピンインは中国語の基礎で、極めて大切です。
中国語の音節はとても数多くあり、難しいものもあるので、やめたくなる時があるかもしれません。そんな時は、ピンインの学習は不可能ではないということをよく覚えておきましょう。
発音できない音があるとしても、粘り強く学習を続けていけば、いつか必ず習得することができます。焦らずにじっくり学習を続けてください。