中国語が難しいと言われる要因に「発音」があります。ピンインと呼ばれる読み方と声調と呼ばれるアクセントで構成されており、挫折する学習者も少なくありません。
今回は、声調の特徴や練習のコツを紹介します。練習を重ねて正しい声調を身に着けましょう。
中国語の声調~基本を押さえて発音練習
目次
中国語の声調とは
中国語発音の特徴のひとつである「声調」は4つのアクセントから成り立っています。
各声調は「第一声」「第二声」「第三声」「第四声」と呼ばれ、中国語のリズム感や抑揚を決める重要なポイントです。
抑揚を意識しなくても伝わる日本語と違い、各声調の区別を意識する必要があるので難しく感じる学習者も少なくありません。
今回ご紹介する声調の基本を理解し練習を繰り返すことで、苦手意識を減らしていきましょう。
四つの声調(四声)
中国語の声調とは、音の上がり下がりを表したものです。この音程の高低さを表す声調は4つのパターンで構成されており「四声」と呼ばれています。
日本語で例えると「秋」と「空き」、「釜」と「鎌」などのようにアクセントを置く場所が異なることを指します。ここでは、4つの声調の特徴をご紹介します。
第一声「ā」
頭の上で発声するイメージです。高い音で一定の音程を保って発音します。第一声の特徴は音の高低差がないことです。爸爸(bāba)や妈妈(māma)で練習してみましょう。
第二声「á」
音程が下から上に行くイメージです。第二声は音の高低さを意識することが大切です。相手の話をあまり聞いていなくて聞き返すときに「あぁ?」と言ってしまうときの音を想像してみてください。
中国語日常会話でもよく使う麻烦(máfan)で練習しみましょう。
第三声「ǎ」
日本人学習者の多くが難しいと感じる第三声です。第三声は音を下げて上げるのが特徴です。
ここで重要なのが、最後音を上げるときに踏みとどまるように止めることです。山の渓間をイメージしてみてください。Vの字のようになっていますよね。
この谷間を登るときに、登り切るのではなく登ってすぐ踏みとどまって止めることを意識してみてください。
第四声「à」
第四声の特徴は、高い場所から下に勢い良く音程を下げます。
何かにぶつかった衝撃で「あぁ!」と声が出てしまうことがありますよね。この声をイメージしてください。上から下に大きく「あぁ!」と練習してみましょう。
軽声
中国語の軽声とは、その漢字が本来もつ声調を発音せず軽く添える音を指します。
特徴として軽声は声調符号がつかないので、符号の有無で判断することができます。文頭や単体で使うことはないので安心してください。
名詞の場合
jiějie | dìdi |
姐姐 | 弟弟 |
姉 | 弟 |
動詞の場合
xiǎngxiang | shìshi |
想想 | 试试 |
ちょっと考える | ちょっと試す |
同じピンインで声調ありなしの場合
yǎnjing | yǎnjìng |
眼睛 | 眼镜 |
目 | メガネ |
量詞の場合
liǎng ge | nàge |
两个 | 那个 |
ふたつ | それ |
四声が変わると意味も変わる
中国語は正しい声調で発音すること欠かせない言語です。なぜなら、同じピンインでも声調が変わることで意味が大きく変化するからです。
注意(zhùyì:注意する)と主义(zhǔyì:主義・考え方)の2つをみてみましょう。両方同じピンインですが、注は第四声で主は第三声になっています。
中国語と違って日本語は、同じ音で意味が異なる単語がいくつも存在しますよね。「花」と「鼻」や「森」と「盛り」が挙げられます。
音の違いではなく漢字の違いで意味を区別することも多いので、会話の流れで意味を汲み取っていく文化がありますよね。
特に中国語は正しい声調で発音しないと、本来伝えたかったこととは異なる意味で伝わってしまう可能性があります。間違った声調で誤解を生んでしまわないように、正しい声調を身に着けましょう。
中国語の声調を正しく習得するコツ
ここでは、正しい声調を身につけるコツをご紹介します。コツを意識した練習を重ねることで正しい声調習得に近づくことができます。
声調の高低差を意識する
中国語の声調は音程の上がり下がりとお伝えしてきました。それぞれの声調では音の高さや長さ、強さに特徴があります。これら3つを意識して練習していきましょう。
第一声 | 高く強く |
第二声 | 下から上に長く |
第三声 | 低く抑えながら短く弾くように |
第四声 | 上から下に強く突き落とすように |
息の使い方を覚える
中国語はリズムよく抑揚がはっきりした発音の印象がありますよね。ネイティブのような自然に流れる中国語を身につけるためには、息の使い方も意識しましょう。
発音動画や中国語講師をよく観察して、どこで息継ぎがされているのかを見つけてみましょう。ポイントは、ひとつの単語で練習するのではなく、ワンフレーズや短い会話文で練習することです。
聴覚・視覚で覚える
正しい声調を覚えるために、目と耳で覚えることで定着度を上げていきましょう。
正しい声調習得をするために、テキストで声調符号を見ているだけでは少し物足りないかもしれません。
日本人にとって特に難しいと感じる第二声と第三声の違いを理解するためには、耳で聞くだけでは足りないことも多いでしょう。
視覚と聴覚両方を活用することで、スピード感をもって声調練習をするようにしてくださいね。
中国語の声調変化に注意
中国語の声調が難しいといわれる理由は音程の高低差だけではありません。なぜなら、前後の漢字の声調によって元々の声調符号と実際の発音が異なる場合があるからです。
ここでは、どのような場合に声調符号が変化するのかご紹介します。声調符号のルールを理解することで、よりなめらかな中国語を身に着けていきましょう。
「不」の声調変化
不(bù)+第四声の場合に不の声調がbùからbúに変化します。
búshì | búcuò | búhuì | búguò |
不是 | 不错 | 不会 | 不过 |
対して、不+第一声、不+第二声、不+第三声の場合には、声調はbùのままで使います。
第一声
bùchī | bùchōuyān | bùzhīdào | bùshuō |
不吃 | 不抽烟 | 不知道 | 不说 |
第二声
bùmáng | bùrán | bùróng | bùlái |
不忙 | 不然 | 不容 | 不来 |
第三声
bùxiǎng | bùlěng | bùkě | bùbǐ |
不想 | 不冷 | 不可 | 不比 |
連続する三声の声調変化
第三声+第三声の場合も声調が変化します。
2連続の場合
第三声+第三声から第二声+第三声に変化します。
変更前 | 変更後 |
nǐhǎo | níhǎo |
你好 | 你好 |
変更前 | 変更後 |
dǎsǎo | dásǎo |
打扫 | 打扫 |
3連続の場合
前の2つが第二声に変化します。
変更前 | 変更後 |
wǒyěyǒu | wóyéyǒu |
我也有 | 我也有 |
4連続の場合
第二声+第二声+第二声+第三声となり、最後の発音だけ三声を使います。
変更前 | 変更後 |
wǒyěhěnlěng | wóyéhénlěng |
我也很冷 | 我也很冷 |
第三声+第三声の声調変化では、テキストに変化なしの声調符号が記載されている場合と変化後の声調を記載している場合があります。
どちらも間違いではないのですが、声調変化のルールを知らずに学習を進めていくと間違った声調で発音してしまう可能性があります。ルールを理解した上で声調練習を重ねていきましょう。
声調練習でおすすめの方法
声調の基本や特徴を理解したあとは、練習を重ねていきましょう。練習方法はひとつとは限りません。様々な方法を試してみることで、自分に適した継続できる練習方法に出会えるはずです。
音節以上の単語やフレーズで練習
一単語の声調を正しく理解できたあとは、二音節以上の単語や短いフレーズで声調に慣れていきましょう。
二音節以上の単語は、漢字二文字以上で構成される単語を指します。例えば、汉语(hàn yǔ)や中文(zhōng wén)などの単語です。
文章はいくつもの単語が組み合わさって成り立っていますよね。よく使われるフレーズごとに声調を練習すると、息継ぎや文章の途切れ感を減らす事ができます。
2つ以上続く声調をなめらかに発音することを意識して練習しましょう。
ながら練習
普段学校や仕事をして、十分な練習時間を確保できないという方におすすめの練習方法です。何かをしながら口を動かしてみることで、刺激を与えながら定着を図ることができます。
歯みがきをしている時間や、髪の毛を乾かしている時間、食器洗いをしているちょっとした時間を有効活用していきましょう。
スキマ時間を使うことは、練習時間を確保できないことへのモヤモヤ対策にもなるのでおすすめです。日常生活のちょっとした時間を使って、練習時間を確保していきましょう。
独り言練習
「中国語に自信がなくてなかなか会話練習する相手を探せない」という学習者には、独り言練習がおすすめです。
中国語の声調に苦手意識を持っていると、人の目を気にして間違うことが怖くなってしまうこともありますよね。
声調は音の高低さを意識して練習することが重要です。周りを気にせず、家の中で思いっきり練習してみてください。
加えて、考え事に没頭できる散歩時間や声が響くお風呂時間もおすすめです。中国語で会話している自分をイメージして取り組んでみましょう。
録音やzoom録画で練習
自分の発音を客観視することは、学習において重要です。現状どこが出来ていて出来ていないのかを把握し改善を重ねることで、よりスピード感をもって成長できるからです。
ぜひ自分の声を録音して聞いてみましょう。新たな発見があるかもしれません。
録音に加えてzoom録画もおすすめの方法です。中国語を話している自分は普段どんな表情をしているのか見ることができます。
得意な声調や苦手な声調を発音しているときの表情の違いも客観視することで、改善のヒントが見つかります。
YouTubeで発音動画をみる
発音は動画を見てたくさん練習しましょう。中国語学習をしている日本人や、中国語について発信している中国人の発音動画は正しい声調習得に役立ちます。
学習者のレベルに合わせた声調練習動画もたくさんアップロードされています。お気に入りの動画を探したりすることで、色々な人の発音練習を参考にして正しい声調を学んでいきましょう。
まとめ
今回は、挫折者が多い発音の中でも「声調」に焦点をあててご紹介しました。
日本語と中国語は漢字という大きな枠組みでの共通点がありますが、学習を進めていくと異なる部分が多いことに気づきます。
特に抑揚やアクセントを意識する習慣がない日本人にとって、音程の高低差は特に難しく感じるかもしれません。
しかし、意識するポイントをつかむことで正しい声調を身に着けることが可能です。少し大げさなくらいで音の高低に区別をつけていきましょう。
4つある声調それぞれの特徴を理解し練習を繰り返すことで、ネイティブ中国語に近づくことができます。発音に自信がつくことで中国語での会話も楽しむことができるので、今回ご紹介したコツや練習法をぜひ取り入れてみてください。