よく分かる!中国語の多義語「就」と「才」の使い方
目次
同じ意味に使う言葉や全く違った意味に使われる言葉
日本語と中国語で、同じ意味に使う言葉もあれば全く違った意味に使われる言葉もあります。
動詞や名詞なら新しいボキャブラリーとして覚えていけば良いのでしょうが、副詞など用法によって文章の意味を変える語には戸惑うこともありますね。
副詞の「就」と「才」の表現
副詞の「就」と「才」は、そういった言葉の一つかもしれません。
「就」も「才」も共に副詞として動詞の前に置いて同じように使いますが、たった一語の違いで文章の意味はかなり変わります。
他很遵守时间,今天8点就来了。
tā hěn zūn shǒu shí jiān jīn tiān diǎn jiù lái le
彼は時間に厳しく、今日は8時にもう来ました
他没有遵守时间,今天9点才来。
tā méi yǒu zūn shǒu shí jiān jīn tiān diǎn cái lái
彼は時間にルーズで、今日も9時にやっと来ました。
「ようやく」という感じの表現
「就」は予定より早く「もう」というニュアンスで、「才」だと遅くて「ようやく」という感じですね。
状況の変化を強調する文末の「了」は「就」の時には使えますが、「才」には使いません。
他初次来,就知道怎么走。他初次来,就知道怎么走。
tā chū cì lái jiù zhī dào zěn me zǒu
彼は初めて来て、もう道を覚えました
我来了三次,才记得怎么走。
wǒ lái le sān cì cái jìde zěnme zǒu
私は3回目で、ようやく道を覚えました
それをしないとダメという「才」の表現
また、何かの条件について話す時「就」だとそれさえすればOKといった前向きのニュアンスなのに対し、「才」ではそれをしないとダメといったネガティブな感じになります。
你道歉,我就原谅你。
nǐ dàoqiàn wǒ jiù yuánliàng nǐ
謝ったら、許してあげる
你道歉,我才原谅你。
nǐ dàoqiàn wǒ cái yuánliàng nǐ
謝るまで、許してあげない
不需要降低价格,就能谈成这笔生意。
bù xū yào jiàng dī jià gé jiù néng tán chéng zhè bǐ shēng yì
値引きはしなくても、商談はまとまるでしょう
需要降低价格,才能谈成这笔生意。
xū yào jiàng dī jià gé cái néng tán chéng zhè bǐ shēng yì
値引きをして、やっと商談はまとまるでしょう
相手の言ったこととは違うというネガティブな言い方の表現
また、「就」を「正に」という意味合いに使う文章で「就」を「才」に変えた場合、相手の言ったこととは違うという感じのネガティブな言い方に使います。
他就是你说的那种人。
tā jiù shì nǐ shuō de nàzhǒng rén
彼はあなたの言う通りの人です
他才不是你说的那种人。
tā cái bú shì nǐ shuō de nàzhǒng rén
彼はあなたの言う様な人ではありません
数の少ないことを表すニュアンスの表現
「就」、「才」をそれぞれ数量を伴った名詞に添えることで「だけ」や「たった」といった数の少ないことを表すニュアンスもあるのですが、両者の意味合いはやはり違います。
今天晚上就我们两个去吃饭。
jīn tiān wǎn shàng jiù wǒ men liǎng ge qù chī fàn
今晩は我々二人だけで食事に行きます
今天的会议才四个人参加。
jīn tiān de huì yì cái sìge rén cān jiā
今日の会議には4人しか参加していません
才两个面包够吗?
cái liǎng ge miàn bāo gòu ma
たったパン2個で足りますか?
两个面包就够了。
liǎng ge miàn bāo jiù gòu le
パン2個あれば十分です
実践編
このように、「就」と「才」とを入れ替えると文章が反対のニュアンスになる場合が多々あります。
どちらの字も日本語からは想像できない意味合いなので、慣れないと使うのには苦労しますね。
とはいえ、決まったパターンのようなものですから、理屈は判りやすいと思います。
いろいろな文例を練習してみましょう。
新しい文法を勉強しても、しばらくすると忘れてしまうというのが人間です。では、どうすれば新たに学んだ文法を自分のものにできるのでしょうか?
それは、一番良い方法は実際に使ってみること。ネイティブを相手に「就」や「才」をつかって実際に会話してみましょう。間違っていたら訂正してもらうことも必要です。
しかし、相手がいない場合どうやって実践していけばいいのでしょうか?そんな場合はぜひこの記事をお役立てください。
以下のテストで中国人が普段話している会話の「就」や「才」が今日学んだ文法のどれに当たるのか、果たして自分の頭がすぐ判断できるか確認してみましょう。
「就」の用法の整理
では、ここで少し整理してみましょう。「就」を動詞の前につく副詞として使う場合
- 「もう」という意味で使う
- 「それだけすれば」という意味で使う
- 「まさに」という意味で使う
- 「だけで」という意味で使う
という4つのケースがあるということをお伝えしました。では、下記の中国語の文章4つはこのうちのどれに該当するでしょうか?
「就」の用法のテスト
日本語訳は記載しませんので、ご自身で意味を想像し、上記4つの用例のどれに当たるか考えてみてくださいね。
問題1
wǒ jiù yào zhè gè , búyào bié de
我就要这个,不要别的。
問題2
tā sì suì jiù huì xiě máobǐ zì
他四岁就会写毛笔字。
問題3
zhè ér jiù shì wǒmén de jiàoxuélóu
这儿就是我们的教学楼。
問題4
nǐ yī tīng jiù míngbai
你一听就明白。
「就」のテスト答え合わせ
問題1:我就要这个(wǒ jiù yào zhè gè)という言葉の意味ですが、後半の不要别的(búyào bié de)が「ほかのは要らない」というつながりから考えると、「ぼくが欲しいのはこれだけだから」という意味になります。数が少なくても満足している4番目の「だけで」という意味で使うケースになるというわけです。
問題2:他四岁就会写毛笔字(tā sì suì jiù huì xiě máobǐ zì)
「4歳というまだわずかな年齢であるにもかかわらず、もう毛筆でかけるようになっている」ことをさしているので、意味合いとしては1番目の「もう」という意味で使うケースにります。
問題3:这儿就是我们的教学楼(zhè ér jiù shì wǒmén de jiàoxuélóu)
直訳すると「ここが私たちの教室棟です」という意味になります。这是我们的(zhè shì wǒmén de)ではなく、这儿就是我们的(zhè ér jiù shì wǒmén de)とわざわざ就是(jiù shì)と入れることによって、「まさにこここそが…」という誇らしい気持ちをのせる表現となっています。つまりこの場合の就( jiù )3番目の「まさに」という意味で使うケースとなるわけです。
問題4:你一听就明白(nǐ yī tīng jiù míngbai)
これが一番難しいかもしれません。日本語的には「聞けばもうわかっちゃう」とも訳せるので1番の「もう」で使うケースという意味と思うかもしれませんが、後半が就明白(jiù míngbai)「すぐわかる」という文章とつながるため答えは「聞きさえすれば、すぐわかる」という意味になります。つまり2番目の「それだけすれば」という意味で使うケースになります。
この二つのケースの違いは「時間が関係しているか」という点です。問題2の「まだ4歳なのにもう・・・」には「わずかな時間しか経ってないのに」という意味あいがあるのに対し、就明白(jiù míngbai)は時間とは関係なく「聞くという行為なのに」となるので「それだけすれば」という意味なのだと理解するとよいでしょう。
「才」の用法整理
つづいて「才」の用法整理をしていきましょう。
- 「ようやく」という意味で使う
- 「しないとダメ」という意味で使う
- 「そうじゃない」というネガティブな意味で使う
- 「しか」という意味で使う
という4つのケースがありましたね。では「就」と同じように「才」もテストしてみましょう。下記の文章4つのうちどれに該当するでしょうか?
「才」の用法テスト
こちらも上記4つの用例のどれに当たるか考えてみてみましょう。
問題1
zhè gè fānyì fēi yào tā lái dāng cái xíng
这个翻译非要他来当才行
問題2
dōu shí èr diǎn tā cái shuì jué
都十二点他才睡觉
問題3
zhè háizǐ cái bànnián , jiù kāi shǐ rèn rén ér le
这孩子才半年,就开始认人儿了
問題4
yīgòng cái shí gè bú gòu fēn
一共才十个,不够分
上記の4つのですが「才」ですがそれぞれどの意味を指すのでしょうか。
「才」のテスト答え合わせ
問題1:这个翻译非要他来当才行(zhè gè fānyì fēi yào tā lái dāng cái xíng)
意味としては「この翻訳は彼にやってもらわなければだめだな」となります。彼の能力でしか…できないということを伝えるフレーズなので、2番目の「しないとダメ」という意味で使うケースとなります。
問題2:都十二点他才睡觉(dōu shí èr diǎn tā cái shuì jué)
これはなかなか寝ようとしない家族に対して、「12時になって、彼はようやく寝たか」という表現になります。つまり1番目の「ようやく」という意味で使うケースとなります。
問題3:这孩子才半年,就开始认人儿了(zhè háizǐ cái bànnián , jiù kāi shǐ rèn rén ér le)
この文章を理解するうえで重要なのは「数の感覚」です。会議に4人しか参加してない、パンが2個しかないと同じ使い方で、「子供が生まれて半年しかたってないのに、もう人の顔を見分けるようになった」という意味になります。よって4番目の「しか」という意味で使うケースですね。
問題4:一共才十个,不够分(yīgòng cái shí gè bú gòu fēn)
これ中国語初心者ではちょっと意味がつかみにくいかもしれません。直訳すると「全部でたった十個だから、分けるほどではないな」という意味になります。
「これをみんなで分けよう」という意見に対する反論の言葉として「もっといっぱいあれば分けることができるけど10個しかないから…」というネガティブな意味合いを表現しています。つまり、3番目の「そうじゃない」というネガティブな意味で使うケースとなるわけです。
日本語にも影響している「就」や「才」
ここまでいろんな意味合いがある中国語の「就」や「才」について勉強して来ましたが、実は上記で上げたのは、「副詞として用いるときのみ」に限られています。ほかにも名詞として使うとき動詞として使うときなどでも「就」や「才」を用います。
ほんの一例ですが少し紹介しましょう。
例えば日本語には就職や就寝という言葉がありますが、これは中国語の「就」の動詞としての用い方の就业(jiùyè)「職に就く」や就寝(jiùqǐn)「床に就く」などが日本語になったものです。
日本語の天才や才能という言葉は、中国語の天才(tiāncái)や才能(cáinéng)という中国語の名詞の使い方「才」が日本語になったものです。
ほかにも成就、才女などなど、中国語の「就」や「才」から発生した日本語は数多くあります。
まとめ
今回は少し難しい「就」や「才」の文法を勉強しました。しかし興味深いのは中国人が「就」や「才」を上記4つのケースのどの使い方をしているのかなど全く考えることなく話しているものだということです。
日本人が就職という言葉を使うとき、「就は本来動詞だから…」とか考えて話していないのと同じですね。上記で学んだ事柄はあくまでもテスト対策であることを覚えておくといいでしょう。
普段使う生活口語というのは、「あ~、中国人はいつもこういう言い回しをするもんなんだ」と聞いて覚えるものであり、理屈で文法のどの用例か考えながら学ぶものではありません。
今回の内容が十分わからないとしても、落ち込むことなく、「たくさん中国語を聞いていればそのうちわかるものさ」という軽い気持ちでいるといいと思います。